【特別寄稿】2020年「遊技業関連10大ニュース」の総括/鈴木政博

皆様、明けましておめでとうございます。昨年は新型コロナウイルス感染拡大により、日本中、世界中が大混乱した一年となり、遊技業界も多分に漏れず様々な影響を受けた。開催予定だった東京オリンピックも今年開催に延期され、旧基準機の経過措置も一年間延長された。今回も毎年恒例ではあるが、昨年の主な出来事の中から、10大ニュースとしてそれらの経過や現状を踏まえた上で総括してみたい。

【行政関連ニュース】

■新型コロナウイル感染拡大で緊急事態宣言発出

昨年4月7日に安倍晋三首相(当時)が新型コロナウイルス感染拡大による「緊急事態宣言」を発出。対象は7都府県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・大阪府・兵庫県・福岡県)とされたが、4月16日になって対象を全国に広げると宣言。緊急事態宣言の期間も、当初5月6日までだったものが後に5月31日まで延長された。

パチンコ店へも全国で特措法に基づく休業要請がなされた他、メーカーの新台納品にも大きく影響した。海外から部材が入らず各メーカーは遊技機の発売延期が続き、納品先のホールも休業中でありキャンセルも相次いだ。

■パチンコ店への休業要請が相次ぐ

昨年2月末に北海道で感染拡大が始まった新型コロナウイルス。まずは北海道で大手ホールが自主休業や時短営業を行った。全日遊連も「新型コロナウイルス感染症対策に伴うホールの宣伝広告への配慮について」を各都府県方面遊協に発出、これを受けてダイナムは3月16日から当面の間、最新台導入を自粛すると発表した。

3月に入ると東京都でも感染拡大がはじまり、3月25日には小池百合子知事が「感染爆発 重大局面」として、不要不急の外出の自粛を要請。ダイナム、マルハンをはじめガイア、やすだ、エスパス、メッセなど多数大手ホールが4月4日と5日の自主休業を決めた。

4月7日に安倍晋三首相(当時)が「緊急事態宣言」を発出すると、4月11日以降、東京都、神奈川県を皮切りに特措法24条「休業協力要請」に基づくパチンコ店への休業要請が始まり、全国44都道府県で休業要請がなされた。パチンコ店に休業要請がなされなかったのは、休業要請自体をしなかった徳島県、休業要請はしたものの対象にパチンコ店を含めなかった高知県のみ。また岡山県は、特措法に基づかない県独自の「営業自粛要請」をパチンコ店に行った。

■特措法に基づく休業指示、店名公表

昨年4月24日、大阪府が全国で初めて休業要請に応じないパチンコ店6店に対し、特措法24条から45条2項「施設の使用の停止を要請」に切り替え、同時に6店名を公表した。4月27日には、兵庫県が全国で初めて6つのパチンコ店に対し特措法45条3項に基づく「休業指示」を行い、店名を公表した。

これは特措法24条「休業協力要請」から、同45条2項「施設の使用の停止を要請」や45条3項「指示」に切り替えたもの。特措法では45条に基づいた「施設の使用の停止要請」や「指示」を行った場合「遅滞なく、その旨を公表しなければならない」とされており、同時に店名も公表された。

以降、28日には神奈川県が6店、群馬県が9店、茨城県が1店と続々と店名の公表が始まった。また「公表されたら一旦休業」して「非公表になったら再度営業開始」といったいたちごっこも各所で発生。同一店舗が数回にわたり公表される事態も招き、最終的には、のべで北海道52店、茨城県3店、千葉県4店、埼玉県123店、東京都70店、神奈川県42店、愛知県6店、石川県2店、京都府1店、大阪府10店、兵庫県7店、福岡県6店、宮城県2店、新潟県9店、栃木県6店、群馬県41店、長野県2店、鳥取県13店、広島県1店、山口県2店が公表。全国で公表された店名は、のべ402店にものぼった。

一方で「公表することが逆に宣伝となり集客につながっている」といった批判や、また「クラスターが1件も発生していないパチンコ店のみが店名公表されスケープゴートにされている」という意見など、公表や報道のされ方についても問題が表面化した。

■パチンコ・パチスロ旧基準機の経過措置が1年延長

経過措置延長に関する規則の附則が昨年5月20日に施行された。これは、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、新基準機への入替が困難な状況や、入替等に伴う感染拡大の防止を図る観点から、旧基準機撤去の経過措置につき期限の1年延長を行ったもの。規則の附則につき「認定を受けた日または検定の公示日から三年」の部分などについて「認定を受けた日または検定の公示日から四年」に改正され、事実上1年延長となった。

これについては松本光弘警察庁長官が「警察としては、遊技機の入替を含め、業界の健全化に向けた取組が一層推進されるよう、引き続き指導してまいります」と述べており、これを受けて「パチンコ・パチスロ産業21世紀会」も同日、検定切れ、認定切れ遊技機の取り扱いについて計画的な撤去に向けた方針を決議した。

 

【組合関連ニュース】

■21世紀会、旧基準機の経過措置延長につき遊技機撤去期限を決議

業界14団体(当時)でつくる「パチンコ・パチスロ産業21世紀会」は昨年5月20日、同日に規則の改正附則が施行され旧基準機の経過措置が1年延長したことを受けて、旧基準機の計画的な撤去を推進するために、検定切れ、認定切れ遊技機の取り扱いについて決議した。

高射幸性回胴式遊技機については当初の検定・認定切れまでに撤去する他、2020年内に当初の検定・認定切れとなるものは一部(羽根モノ・甘デジやAタイプ)を除き昨年末までに、2021年以降のものは2021年11月までに撤去することとし、さらに旧基準機の設置台数をもとに、その15%にあたる台数を毎月撤去することや、「新旧遊技機設置比率明細書」を担当所轄警察署へ提出するよう求めた。

■遊タイム搭載機が続々と導入開始

日工組は昨年3月17日、2019年12月20日に改正された「技術上の規格解釈基準」に伴う「遊タイム」等の技術仕様についての説明会を開催した。日工組では「技術上の規格解釈基準」の改正を受け2019年12月26日に「日工組内規」を制定。内規の改正ポイントは、「時短の作動回数の上限値(100回)の撤廃」「従来の時短に加え、2種類の新たな作動契機による時短の追加」「確率変動リミッター上限値の数が条件付きで2個設定可能」の3点で、緩和により「3つの時短発動」が可能となった。また適用機は昨年4月1日からホールでの設置が可能と発表していた。

遊タイム搭載機としては昨年4月20日のSANKYO製「Pフィーバー真花月2 夜桜バージョン」がトップ導入として開始したものの、不運にも新型コロナウイルス感染拡大による「緊急事態宣言」発令直後のタイミングであり、休業要請に従うホールが圧倒的多数で、ファンに浸透したとはいいづらい状況だったものの、ゴールデンウイークが明け地域ごとに休業要請が解除され始めた5月にはJFJ製「Pリング 呪いの7日間2」の導入が始まり、全国的に休業要請が解除された7月には西陣製「PモモキュンソードMC」が導入。以降各社から続々と遊タイム搭載機が投入され、コロナ禍でのパチンコ稼働低下の食い止めに一定の貢献をしている。

 

【メーカー関連ニュース】

■遊技機メーカーがECサイト開設。ネット販売を開始

サミーネットワークスは昨年8月3日、ホール関係者専用のEC(電子商取引)サイト「777EC」を開設すると発表。パチスロ新台「回胴黙示録カイジ~沼~」(製造元:銀座)をEC販売第一弾として販売したのに続き「パチスロ頭文字D」(製造元:タイヨーエレック)、「パチスロ北斗の拳 宿命」を販売。また豊丸産業も12月9日より、ECサイト「とよマーケット」にて遊技機の販売を開始。「Pすしざんまい極上4200」と「PちょいパチSUPER電役ナナシーDXⅡG39」のパチンコ機2機種を販売した。遊技機販売についても、ECサイトによるネット販売が今後も進みそうだ。

■6.1号機の適合が伸び悩むも、ついに適合

2019年12月17日の型式申請より可能となっていた6.1号機。「ペナルティ規制の緩和」「スタートレバー・ボタン等を使用した疑似遊技」「ビデオリール演出が可能」などが緩和されたものの、2020年はパチスロの適合率が伸び悩み、注目されていた「低ベースAT機」は導入までには至らなかった。しかし昨年10月中旬より保通協での型式試験方法の変更があり、以降適合率が若干アップ。昨年末12月4日にはサミーが「パチスロ北斗の拳 宿命」を販売すると発表した。ベースは50枚あたり35.8Gの低ベースAT機で、純増は2.8枚。導入開始は今年3月を予定している。

 

【ホール関連ニュース】

■パチンコ運営企業の破綻が相次ぐ

パチンコ店の新型コロナウイルス関連での破産が相次いだ。昨年4月15日、東京都内でパチンコ店「アカダマ」3店舗を運営する株式会社赤玉が東京地裁へ自己破産を申請し、破産手続き開始の決定を受けたと複数の信用調査機関が伝えた。負債総額は約37億円。次に4月30日、群馬県内でパチンコ店「有楽DELZACC」「有楽JARAZACC」「有楽TAMAZACC」を経営していた有限会社有楽商事が、東京地裁から破産手続き開始決定を受けた。負債総額は約31億4,800万円。5月13日には徳島市内で「ゲットプラザ」などパチンコ店3店を経営する「愛染観光株式会社」が自己破産申請の準備に入ったと複数の信用調査機関が公表。負債額は推定6~7億円。さらに9月11日には、東京都墨田区でパチンコ店を経営する「雅夢コーポレーション」(東京都墨田区)が東京地裁から破産開始決定を受けたことを複数の信用調査機関が伝えた。新型コロナウイルス関連のパチンコ店経営企業の破綻はこれで4社目となる。

 

【その他関連ニュース】

■いわゆる第二保通協が始動

一般社団法人のGLI Japanが昨年6月下旬、近日中にぱちんこ遊技機1型式の試験を行う予定だと本誌取材に応じ、8月に2型式を受理して型式試験を開始した。GLI Japan は、2018年8月に風営法第20条第5項の規定に基づき国家公安委員会から指定を受けた指定試験機関。保通協(一般財団法人 保安通信協会)以外で初の遊技機の試験業務となり、9月には1件、10月にも1件、11月には3件が適合したと発表している。

 

昨年は新型コロナウイルス感染拡大の一色に染まった一年だった。業界自体も苦しい中、一年延長されたとはいえ今年は旧基準機の完全撤去も待ったなしだ。コロナ禍が続き稼働が厳しい一方で、パチンコは遊タイム機、パチスロは低ベースAT機の登場など、遊技機性能については緩和による明るい知らせもある。この未曾有の激変期を乗り越え、業界に「娯楽の殿堂」と呼ばれたかつての熱気がまたこの業界に戻ってくる事を願ってやまない。今年もよろしくお願いします。

■ プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。

-コラム
-