【特別寄稿】パチンコ産業の歴史⑥「インベーダーブームとフィーバーの誕生」(WEB版)/鈴木政博

2. 救世主「フィーバー」の誕生
あまりにも有名な名機であり、現在においても主流のジャンルである元祖「フィーバー」には、実は前身がある。1977年に発売された三共「ブレンド赤坂」だ。この機種は中央にドラムを搭載し、スタートチャッカーに入るとドラムが回転、ストップボタンで停止させ、止まった組み合せによりチューリップが開放するゲーム性だった。ただし、この台は「目押しで狙い撃ちする」という攻略に合い、その結果ホールから姿を消す。これが「フィーバー誕生」前夜の話だ。

フィーバー

フィーバー(三共)

大量のドラム部材の在庫を抱え、メーカーは頭を悩ませていた。そこに営業マンが、ホールから面白い話を聞いてくる。「昔のパチンコ台はよく故障して、チューリップや入賞口が閉まらなくなった。それが刺激的で客も面白がり、ホールも故障分の出玉を見越して調整していた」という話だ。それがヒントになり、なら「故障した時のように玉が出っぱなしになる台」を作れないか?というアイデアが生まれた。「フィーバー」の企画が誕生した瞬間である。在庫のドラムに工夫をこらし、目押しでの狙い撃ちを対策した。ゲーム性は、ドラムで「太陽・太陽・太陽」が揃い、さらに上部デジタルに「7」が止まると大当たり。大当たりするとアタッカーが30秒開放し、アタッカー内のVゾーンに玉が入ると再度30秒開放という動作を永久に繰り返すものだった。つまり、ホール側が設定した「打ち止め玉数」に達するまで出っぱなしになるという、まさに当初のコンセプト通りの機械が誕生した。

しかし、誤算は続いた。この大量に玉が出るという過激なゲーム性が、発売当初はホールに全く受け入れられず、売れなかったのだ。そんな中、1980年12月21日、新潟県長岡市のエース電研直営店であった「パチンコ白鳥」が、一気にこの三共「フィーバー」を123台も設置した。総台数313台のうち123台もの設置は大勝負であったが、何と、直後から立ち見が出るほど客が殺到し、以後もファンから熱狂的な支持を受ける。 ホールとしても、台売りが5,000円から一気に4倍増の20,000円を超えるまでになったとの噂が業界内に広まり、注目を集める。ここから全国的に「フィーバー」へ注文が殺到、大量導入するホールが続出し、大ヒット機種に大化けした。苦境に悩んでいたパチンコ業界を救う、まさに救世主となったのだ。

しかし、熱狂も長くは続かなかった。その過激さから、全国で様々な事件が起こり、 社会問題化していく。茨城県龍ヶ崎市で「フィーバー」で大当たりした男性が興奮し、心臓発作で亡くなったのをはじめ、各地でフィーバーを打つ金欲しさに、借金問題や強盗事件が続発した。

社会問題となると、行政も黙ってはいられない。1981年、超特電機(フィーバー機のこと)について、警察庁は全国的に以下の規制を通達した。

① 大入賞口の開放時間は最大30秒までとすること
② 大入賞口の開放の連続作動回数は最大10回までとすること
③ 始動入賞口の保留玉数は最大4個までとすること
④ 始動入賞口の数は全入賞口の3分の1以下で、通過式は不可とする

なお、設置されている遊技機については昭和57年(1982年)9月30日までに基板等の部品交換を行い改修を済ますこと。また昭和57年7月15日以降に設置される超特電機については上記の要件を満たしていること。

この通達に基づき、1982年には全遊協が警察庁の指示に従い「著しく射幸性の高い超特電機問題についての新要件機への切り替え対応」を実施。さらに「フィーバー機」の設置台数を、店舗総台数の30%までとする自主規制も合わせて行った。しかし、これでも問題は収まらなかった。よく考えれば当然だ。10ラウンドまでとはなっているもののカウントは定められていないため、30秒間は玉を拾いっぱなしであるのだから、現在から考えてもまだ十分、射幸性は高い。同年に保安電子通信技術協会 (保通協) が発足したのも、この問題と全く別問題ではないだろう。

それでもフィーバー機人気は衰えを見せず、ホール軒数1万1,946軒、設置総台数が256万台にまで達した1984年、ついに第2次規制が設けられる。警察庁は超特電機に関し「大入賞口の開放時間は最大15秒までとすること」「大入賞口への最大入賞数は10個までとすること(10カウント)」などが通達されることとなる。そして再び、パチンコ業界は厳しい時代を迎えることとなるのだ。

(以下、次号)

■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。

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