【特別寄稿】パチンコ産業の歴史②「連発式パチンコの規制~復活!第2期黄金時代へ」(WEB版)/鈴木政博

3. パチンコを復活させる秀逸アイデア「役物」の登場
パチンコメーカーも、衰退の一途をたどっていく業界を指を咥えて見ていた訳ではない。例えば前述した「二式」においては、玉がアウトかセーフかが早く判別できるよう、盤面の下半分をカットし瞬時にアウト穴までたどりつく「半ゲージ」などを発売したが、人気回復には至らなかった。そんな冬の時代を救ったのが、当時「西陣」が発明・ 開発した「役物」だった。

パチンコ 役物搭載機種

当時のパチンコ台の盤面には、中央部分に「賞球ケース」なるものが搭載されているのが普通だった。これはチャッカーに入賞した時に、実際に払い出される玉を貯めておく装置であり、その払い出される玉を客に見せることにより期待感を高めていた代物だ。1957年、西陣が発売した「ジンミット」は、この盤面中央部分に「役物」を初めて搭載した。これは、この「役物」に入賞した玉が、役物内を通って他の入賞口上部に導かれ、結果として入賞を容易にするという仕組みであり、盤面中央という最も目立つ場所に位置するこの役物は「センター役物」と呼ばれ、大評判を巻き起こす。それまでは盤面にバラバラにある各入賞口に、それぞれの玉が入るのを期待するゲーム性であったパチンコを、この「センター役物」の搭載により、「とにかく役物に入れば…」というゲーム性に一変させたこの発明は、一大変化をもたらした。ちなみにこの「ジンミット」という機種名は、パチンコ業界の不況とは正反対に「神武景気」に沸いていた日本の好景気にあやかりたいとして「神武景気をミットで受け止めたい」という願いが機種名になったとも言われている。

役物という発明で一筋の光を見出したパチンコメーカーは同年、「平和」がこの「センター役物」にさらに改良を加え、役物に風車を搭載、役物に動く仕組みを追加した「コミックゲート」を発売。この後、各社から続々と「役物搭載機種」が発売され、再びパチンコ人気は高まっていく。

この「役物」の人気を背景に、ホール件数はこの年1957年に8,400店舗まで減少したのを最後に底を打ち、翌1958年からは増加に転ずることになる。そしてこの役物の発明こそが、この後「第2期黄金時代」を生み出す画期的な発明「チューリップ」へと進化を遂げることになるのだ。

(以下、次号)

■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。

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