3月22日より導入が開始された藤商事製「P緋弾のアリア~緋弾覚醒編~」の稼働が好調で、評価が極めて高い。この機種では、演出面や枠も含めたギミックの完成度の高さはもちろん、右打ち時の見せ方で少し変わったスペックを採用している。同じく藤商事(JFJ)では、「P FAIRY TAIL2」でも変わったスペックを採用して一定の高評価を得た。今回は、これら機種について考察してみたい。
1. 藤商事製「P緋弾のアリア~緋弾覚醒編~」について
今回導入され極めて評価が高い「P緋弾のアリア~緋弾覚醒編~」は、右打ち時の打ち心地だけでいえば、先に導入されたSANKYO製「Pフィーバー アイドルマスター ミリオンライブ!」に似ているものの、この機種の仕組みは全く違う。
「アイドルマスター」の仕組みは、古くは2015年に導入されたニューギン製「CR義風堂々!!~兼続と慶次」で初めて採用されたもので、2019年にはその仕組みを採用し「ルンピカチャッカー」として精度をアップした「Pフィーバーマクロス△(デルタ)」がSANKYOから発売されている。
右打ち中の時短中や確変中に「特図1を回す状態」と「特図2を回す状態」の両方の状態を行き来するような仕様が出来れば、ゲーム性は飛躍的にアップさせることができる。しかし、いわゆる「大当たり」が搭載されている機種では、規則上電チューは1個しか搭載できない。
「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」より抜粋
別表第4 ぱちんこ遊技機に係る技術上の規格(第6条関係) ホ 普通電動役物及び普通図柄表示装置の性能に関する規格は、次のとおりとする。 (イ) 普通電動役物の数は、特別電動役物が設けられているぱちんこ遊技機にあつては1個を、特別電動役物が設けられていないぱちんこ遊技機にあつては4個を超えるものでないこと。 |
そこで、電動ではない「非電動チューリップ」を2つ搭載することで、まずはニューギンが「CR義風堂々!!~兼続と慶次」においてこの仕様を実現した。通常の機種であれば電チューが玉を拾うと「特図2が回る」仕組みだが、この機種では電チューが玉を拾っても特図は回らない。電チュー以外に「非電動チューリップ」が2つ搭載されており、電チュー内のどの穴に入賞するかによって、どちらかの非電動チューリップが開放する仕組みだ。そして非電動チューリップに玉が入賞するとチューリップは物理的に閉じるが、拾うと片方は「特図1」が、もう片方は「特図2」が回転する。基本的には、アイドルマスターもこの仕組みが採用されている。
しかし「P緋弾のアリア~緋弾覚醒編~」には電チューが1つ搭載されているだけで、非電動チューリップは搭載されていない。それでは、どのような仕組みで実現したのか。
2. 藤商事製「P緋弾のアリア~緋弾覚醒編~」の仕組み
まずはスペックをご覧いただきたい。
スペックを見る限り、至って単純な一種二種タイプだ。特図2は100%大当たりor小当たりとなっており、特図2が回ると事実上大当たりが確定する。
この機種の最大の特徴は、電チュー確率が1/73に設定されている点だ。通常の機種であれば、電チュー確率は1/1に設定されている。そして右打ち中は電チューが頻繁に開放し拾うが、特図2がなかなか大当たりしない流れを踏む。しかしこの機種では、特図2は回ると事実上大当たり確定となる。そこで、時短中にスルーを通っても1/73でしか電チューが開放しない、という仕組みとした。つまり、右打ち中はスルーを通しているだけで、特図1も特図2も全く回っていない状態となる。この機種のスルーは右上通過部分と、右打ちした玉が最終的にほぼ全て流れ込む1個賞球チャッカー部分の2か所で、この間、液晶上では普通図柄が回るたびに図柄が変動する見せ方をしているので、右打ち時の遊技感にも違和感はない。
そして、アイドルマスターでは「特図1を100回または150回転」までの時短だが、アリアの場合は「スルーが50回または100回転」までの時短となっている。アイドルマスターの場合、右打ち中にリーチがかかったりすると、その間に「1個でも多くスルーを通して、特図2のチューリップが開放するチャンスを得たい」ためにリーチ中は止め打ちしたくないが、アリアの場合はスルーを回転させる回数での時短なので、トイレに行くのも自由だ。
また、電チューが玉を拾った場合は、多くは即時「Vを狙え!」となり、V入賞で大当たり開始となるが、まれに「LIGHTNING BULLET CHANCE」に入ることがある。これは、特図2に「長い変動」が用意されているためだ。特図2の変動秒数が短い当たりは即「Vを狙え!」となり大当たりが開始してしまうが、特図2の変動が長い大当たりだと、「Vを狙え!」となるまでに長めの変動区間がある。この間は、大当たり前の時短中なので、スルーをガンガン回すことができる。さらに「LIGHTNING BULLET CHANCE」中に電チューに玉を拾わすことができれば「STOCK TIME」に突入する仕組みだ。特図2の保留1個目~4個目は、全てロング変動になるように設定されている。
この、これまでも思いつきそうで、そして誰も思いつかなかった新しいスペックは、このような仕様で実現されている。しかし、この仕様を実現するためには、いくつかの工夫が必要だ。
3. 藤商事製「P緋弾のアリア~緋弾覚醒編~」の工夫点
余談だが、少し前までのぱちんこ機は、通常時に電チューが開放することはほとんどなかったが、最近の機種の多くは、通常時も一瞬だけ、電チューが開放するのを見かけることが多い。これは「遊タイム」が搭載できるようになったのが大きな理由だ。電チューの開放確率は、それ自体も確率変動させることができる。例えば通常時はスルーを通っても1/300で、確変中はスルーを通ったら1/1で確実に電チューが開く、といったものだ。しかし「普通図柄の確率変動」は、大当たりを経ないと規則上できない。そこで現行の多くの機種では、通常時からスルーを通ったら1/1で電チューが開くようにしておいて、遊タイムや突時を引いた場合は「スルーを通った時の普通図柄の変動時間が急激に短くなる」のに加え「電チューの開放時間が非常に長くなる」ことで、大当たりを経ずに時短に突入するよう工夫されている。
さてアリアだが、遊タイムが搭載されているため、通常時もスルー確率は1/73と推察される。しかし、通常時にいきなり右打ちしてもスルーを通すことはもちろん可能だ。つまり「通常時はいきなり右打ちして1/73を引いても絶対に拾わない電チュー」の動作が必要となる。合わせて、100回時短中に1/73を引いた場合は逆に「1個は確実に拾う」必要があるのはもちろん、加えて「2個は拾わない」という電チューの動作とゲージ設計が必要となる。このあたりは、非常にうまく完成されている。ちなみに電サポ開放パターンは2つあり、通常時はまず拾うことが無いほど一瞬の開放パターンのみで、100回時短中は打ってさえいれば確実に1個は拾うであろう開放パターンのみ、50回時短中に関しては、一瞬開放と1個拾う開放の2パターンが混在している仕組みだ。
また右打ち中は、スルーを通しているだけなので、本来であればデータランプの回転数は全く進まない。しかし右打ち中にデータランプが進まないのは、遊技感としてかなり違和感がある。現在、多くのホールでは、右打ち中のスルー(普通図柄回転数)がデータランプに出力されているようだ。遊技に違和感はないが、注意点としては「遊タイム到達回転数」だろう。右打ち終了後にデータランプで「100回転」と出ていたとしても、実際には遊タイムには1回転も近づいていない。一種二種でありながら、データランプで499回転を超えても遊タイムに入らない、といったトラブルの可能性に対しては若干の危惧が考えられる。
もう一つは右打ち中、打つのをやめてトイレに行くなども自由だと書いた。しかし「LIGHTNING BULLET CHANCE」や「STOCK TIME」に入った場合は、トイレ厳禁で右打ちし続けないと損をする可能性が高い。しかし一般ファンからすると「アタッカーも電チューも開いていない」状態は通常の時短中と同じなので、この「LIGHTNING BULLET CHANCE」や「STOCK TIME」中だけは打ち続ける必要がある、という周知は必要かもしれない。
さらにいえば、時短の残回数が少ない時に「LIGHTNING BULLET CHANCE」に突入した場合、どうなるのか若干の疑問が残る。例えば時短90回転目で「LIGHTNING BULLET CHANCE」に突入した場合、残回数は10回しかない。状態としては時短の途中で突入するので、普通に考えれば時短の続きを消化しながら進行するだろう。トータル100回を超えた場合にどんな演出を見せているのかは、現時点ではこの点は未確認だ。