3.「休業協力要請」と「施設の使用停止要請」、「休業指示」とは?
各自治体では、パチンコ店に対し最初は「特措法24条による休業協力要請」を行った。多くの大手法人は実際の要請前に、そして9割以上の店は要請後に応じて休業した。一部、それでも営業を続けた店に対し各自治体は「特措法45条2項による施設の使用停止要請」を行った。この45条は、行った場合は「公表する義務」がある。各地で公表がなされたのはこのためだ。これで、多くの自治体では全店休業した。しかし一部の自治体では、それでも営業を継続する店が出てきた。これらの店には「特措法45条3項の休業指示」がなされた。この「休業指示」は法的に従う義務がある。しかし、従わなくても罰則規定は、ない。
休業指示は無論だが、「休業協力要請」も「施設の使用停止要請」も、国民として本来は当然従うべきものだ。ほとんどの店が応じて休業している中で、従わなくてよい理由はない。マスコミの連日の報道で「パチンコ業界」自体も非常に大きなダメージを負っている。
もちろん「休業したら破綻する」という声もある。「従業員を雇い続けられない」という声も聞く。しかしそれは飲食店や他業種でも同じで、それでもほとんどのパチンコ店は休業している。また「休業していない接待飲食業は報じられないのに、なぜパチンコだけ・・・」という声も聞く。「パチンコだけがスケープゴートにされている」という声もある。クラスターが発生した接待飲食業よりも、全国でパチンコ店だけが「施設の使用停止要請」や「指示」が行われているのは、各自治体に対し「なぜ営業しているんだ」という市民からの電話が突出して多いからに他ならない。理由は「パチンコ店は開店前に並ぶから目立つ」からであろうと推測できる。地域住民からすると、外出自粛中なのに大勢が不要不急でないパチンコ店に並んでいる光景は、感染拡大の観点から恐怖に映るのは頷ける。実際にテレビで報じられるのも、多くは「開店前に並んでいるシーン」だ。
一方でパチンコ店も含め飲食店に対しても「自粛警察」と呼ばれる、営業妨害に近い行為をする現象も問題化しつつある。また、特措法があくまで「要請」であり「補償」も「罰則」もない以上、営業を続ける自由も束縛されない、という意見も、法的には正しい。特措法自体に大きな問題があるのは確かだ。
しかし緊急事態宣言は延長され、今も続いている。パチンコ業界全体の未来を考えるならば、9割以上のパチンコ店が休業要請に応じているにもかかわらず、営業を続ける一部ホールが連日連夜、マスコミで報じられている現状は放置すべきではないだろう。今パチンコは、ストレスを抱えた国民から「目の敵」にされつつある。
前号でも書いた通り、娯楽の殿堂と呼ばれたパチンコの灯を絶やさないために、日本独自の文化である「パチンコ」がこれからも消えてなくならないために、業界全体が結束して感染拡大防止に協力できるようになることを願いたい。
(以上)
■ プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。