【コラム】スペック性能についての注意点とは~前編~

ぱちんこ開発者の独り言82
平成31年4月中に実施された型式試験等の実施状況を確認してわかる通り、ぱちんこの適合率が以前に比べ改善しているため、ここのところ、新規則機におけるぱちんこの話題機種が続々とリリースされている(参考リンク)

また、ここ最近に発表になったスペック性能に関する意見として、「新規則機も意外と悪くない」「旧規則機と比べてもそん色ない」という明るい声を聞くことが多い。その理由に関しては以前のコラムでも記載した通り、スペック設計における部分が非常に大きい(参考リンク)

多くの方が勘違いしているのは、初代「北斗無双」がリリースされた時代から日工組内規における総獲得遊技球数の期待値、いわゆる総量規制はそれほど大きく変わらないのである。そのため、総量出玉の限界値ギリギリまでのスペック設計をすれば、当然のことながら見た目におけるスペック設計値に関してスペックダウンを感じないのはむしろ当然である。

一方で、当コラムにおいて1年以上前から指摘している通り、新規則機に関しては短時間出玉対策は必須である(参考リンク)

1.総量出玉を限界値付近までの数値設計(主に6,000個以上)
2.短時間出玉対策を行う(1時間当たりのセーフ出玉を可能な限り抑える)

この2つの条件をクリアしやすいスペックは「V確ロングST機」と呼ばれるスペックなのである。

その理由は、

①高確率の数値を低くし、ST回数を長くすることで大当り間を長くすることが可能となる。
②ST中はユーザーからすると「大当りを期待する期間」(ハラハラドキドキできる期間)と言えるため、多少長くても間持ちがしやすい。
③確変突入率と継続率に差を設けやすいV確変機にすることで、総量出玉の限界値付近までスペック設計した上で分岐スタートのバランスをとることが可能となる。

以上の理由により、総獲得遊技球数の期待値を最大限高めようとした場合に最も相性が良いものが「V確ロングST機」なのである。

一方で、ロングST機では「出玉スピード」が著しく遅くなるというデメリットが存在する。

以前のコラムでも記載した通り、1時間(短時間)当たりのセーフ出玉上限が

旧規則機:18,000個
新規則機:13,200個

となっており、この数値は電チューから払い出される玉も全て含んだ上での数値なのである。例えばBA90と仮定した場合、5,400個は既に払い出されることが確定しているため、1時間当たりの大当りにて出玉を出せる上限は

旧規則機:12,600個未満
新規則機:7,800個未満

となるわけである。

また、これを大当り回数として置き換えると、下記のようなイメージになる。

平均T1Y1,000の場合・・・
旧規則機:(1時間当たり)12.6回未満
新規則機:(1時間当たり)7.8回未満

平均T1Y1,500の場合・・・
旧規則機:(1時間当たり)8.4回未満
新規則機:(1時間当たり)5.2回未満

新規則機において平均T1Y1,500の場合、基本的には1時間当たりの最大大当り回数が5.2回未満に設定しなければならない。この場合、大当りの間は約11分30秒が限界値であり、大当り1回の消化時間を1分30秒と仮定した場合、大当り終了後から次回大当りまでに平均約10分の演出をしなければならないわけである。

以上の数値を改めて確認した場合、次回大当りが確定しているループタイプの確変機と、次回大当りが確定していないST機の方がユーザーにおける「間もたせ」としてどちらが適しているか、と考えた場合に一目瞭然であろう。

次回コラムでは、より掘り下げたスペック性能における考察と、それに纏わる注意点について言及していきたいと思う。

■プロフィール
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。

-コラム
-