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『遊技日本』

【寄稿】パチスロ6号機の性能分析/鈴木政博

投稿日:2019年3月21日 更新日:

パチスロ6号機は適合率が厳しい中、いくつかの機種が発表、導入されているが、5号機が多く残る現市場においては性能面で若干厳しい状況が続いている。純増や有利区間表示などで5.9号機から緩和された印象が大きい6.0号機だが、その性能はどのようなものか。今回は改めてその現状と、今後の遊技機性能について考察してみたい。

●発表されている6.0号機の状況
現時点(3月中旬)で、導入済・導入前を合わせて計21機種の6号機が発表されている。純増枚数などが緩和されたこと、各種緩和で新たに開発できるようになったことから、このうち16機種が「AT機」となっている。

では緩和の印象が強いこの「6号機AT」は、現状では具体的にはどのような性能なのか。

●型式試験の純増枚数の上限
6号機ATについては「6号機で純増枚数の上限撤廃」があったため、やはり各社とも「今までの規定である純増2枚よりも多い」仕様を採用したいという考え方が根強い。ただし、当然に新規則の試射試験には合格する必要がある。では、適合ラインはどのあたりになるのか。

まずは(別表1)をご覧いただきたい。短時間の400G試射試験から見てみると、仮にリプレイ確率を7.3分の1と仮定してシミュレーションした場合、400ゲームだとリプレイが55ゲーム、その他が345ゲームとなる。したがってIN枚数は1,035枚。短時間試射試験の上限は220%なので、ギリギリ適合する数値は2,277枚だ。増加分は1,242枚。400ゲームで1,240枚程度の増加が上限であり、純増にすると「1ゲーム3.11枚」となる。つまり「400ゲーム続くAT」があるならば、その機種は「純増3枚程度」が限界値といえる。

■別表1 型式試験上の出玉の上限


時間
中短
時間

時間

時間
G数 400
G
1600
G
6000
G
17500
G
上限 220
%
150
%
126
%
115
%
リプレイ 55
G
219
G
822
G
2397
G
推定IN 1035
4143
15534
45309
上限OUT 2277
6214
19572
52105
増加 1242
2071
4039
6796
純増 3.11
1.29
0.67
0.39

※リプレイ確率を1/7.3として算出

次にリミットである1,500Gとも関連深い、中短時間の1,600G試射試験。同じくリプレイ確率を7.3分の1と仮定してシミュレーションすると、1,600ゲームだとリプレイが219ゲーム、その他が1,381ゲーム。したがってIN枚数は4,143枚。中短時間試射試験の上限は150%なので、ギリギリ適合する数値は6,214枚だ。増加分は2,071枚で、純増では「1ゲーム1.3枚」に満たない。自主規制上はリミッターが1,500ゲームで2,400枚だが、型式試験上は1,600ゲームで2,000枚程度に抑えないと適合しない、ということになる。

そこで各社とも「純増を多くして出すぎた分、減る区間をつくって適合させる」という必要が出てくる。つまり純増を3枚以上にするなら、どの400Gをとっても「減る区間」が入るようにして、400ゲーム間で平均純増3枚に収めるというゲーム性にならざるを得ない。例えば純増5枚のATであれば、40ゲーム間で200枚増えたら、20ゲーム程度使って20枚ほど減らす、といった流れにして平均純増を3枚に落とす工夫をしている。

(別表2)は、その純増枚数ごとに「減る区間がどの程度必要になるか」をまとめたものだ。これを見ると「純増5枚」あたりになると、すでに「増えるAT区間」と「減る非ナビ区間」がほぼ半々くらいになり、これ以上純増が多いと「減る区間の方が長い」性能になることが分かる。このあたりをいかに演出やゲーム性で「面白く見せるか」が、6号機のキモともいえるだろう。

■別表2 AT純増枚数ごとの必要ハマリ区間

400Gごと 1,500G完走まで
AT
区間
減る
区間
AT
区間
減る
区間
純増
1枚
400
G
0
G
1500
G
0
G
純増
2枚
400
G
0
G
1147
G
353
G
純増
3枚
400
G
0
G
860
G
640
G
純増
4枚
280
G
120
G
688
G
812
G
純増
5枚
210
G
190
G
573
G
927
G
純増
6枚
168
G
232
G
491
G
1009
G
純増
7枚
140
G
260
G
430
G
1070
G
純増
8枚
120
G
280
G
382
G
1118
G
純増
9枚
105
G
295
G
344
G
1156
G
純増
10枚
93
G
307
G
312
G
1188
G

※千円ベースを50Gとして算出

●型式試験の低ベース機と高ベース機の試験方法について
またパチスロで難しいのも「ベース」の部分だ。現在発売されている6号機を見てみると千円で50G近く回る「高ベース機」がほとんどで、「パチスロ蒼天の拳 朋友」など低ベース機はほとんどない。では6号機のベース事情はどのようになっているのか。

まずは(別表3)をご覧いただきたい。これは、型式試験での下限をまとめたものだ。ここでまず説明しておくと本来は「下限=ベース」ではない。下限には「ボーナスでの払い出し」も含まれるためだ。しかし「AT機」は「減るボーナス」が搭載されているため、事情が異なる。

■別表3 型式試験上のベースの下限


時間
中短
時間

時間

時間
G数 400
G
1600
G
6000
G
17500
G
下限 33.3
%
40
%
50
%
60
%
リプレイ 55
G
219
G
822
G
2397
G
推定IN 1035
4143
15534
45309
下限OUT 345
1658
7767
27186
純減
1G
-1.7
-1.6
-1.3
-1.0
千円
B
28.97
G
32.18
G
38.62
G
48.28
G

※リプレイ確率がを1/7.3として算出

現在、型式試験で行われている試験は「実射試験」と「シミュレーション試験」だ。AT機については「通常時に成立している小役を全て取る」シミュレーションでは出玉率上限が必ずオーバーしてしまうため「減るボーナス」を搭載し出玉率を下げる必要があるが、このシミュレーション試験では「ボーナスは引いた時点で成立したと仮定する」試験なので、「減るボーナス」はフラグ成立ごとに入賞したとなり、ここで一定のコインが払い出されるためベース面でも問題は発生しにくい。

しかし「実射試験」はどうか。漏れ伝わる話を聞くと現状ではどうやら、実射試験では大きく二つの試験が行われているようだ。一つは「ナビどおり実射し、上限を見る試験」、もう一つは「常に同一の打ち方をし、下限を見る試験」だ。この下限を見る試験では、例えば順押しなら「AT中も目押しせずナビ無視して順押し」する試験と想像される。そうなると「AT中の出玉」は全くナシで、通常時だけで下限の60%を超える必要がでてくる。

一般的なAT機は「純ハズレをなくして減るボーナスが揃わなくする」か「2枚入れなどで成立したボーナスは2枚入れでしか揃わない」など、導入後に遊技者が「減るボーナス」が揃うことがないよう工夫している。しかし、この仕様だと型式試験の実射でも減るボーナスは揃わないので、必然的にベースは千円50G近くにするしかなくなってしまう。

ベースを下げるには、この「減るボーナス」を通常時にも揃ってしまう仕様にするしかない。こうすれば型式試験でも「減るボーナス」が揃い、一定のコインがボーナスで吐き出されるため通常時ベースは下がる。しかし「導入後も遊技者が減るボーナスを揃えてしまう」可能性があるため、遊技者は「毎回目押し」しながら「減るボーナスを回避する打ち方」を余儀なくされてしまう。

高ベース機は「ホールからしても売上が上がりにくい」「ファンからしてもAT突入確率が悪くなる」など良いとは言えないが、逆に低ベース機にすると「遊技者が通常時から目押しで減るボーナス入賞を避ける」必要がでてくる。今後、どのようなベース機が良いのかは、市場の動向を見守るしかなさそうだ。

適合に苦しみながらも、6号機は発売され始めている。ただ一方で、2021年1月末までの旧基準機の総撤去に向けて動き出さなければならないのも事実だ。今後の6号機の適合率アップ、性能アップを願ってやまない。

■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫
立命館大学産業社会学部卒業後、ホール経営企業の管理部・営業本部を経て㈱リム入社。業界向けセミナーの開催や新機種FAX情報編集を統括、新機種の導入アドバイザー、経営コンサルタントとして活動。
2002年、㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。Mail:msuzuki_u3ken@ybb.ne.jp

※本稿は過去に本誌に掲載した記事を、一部、WEBサイト用に編集した上で掲載しております。

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