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【コラム】真のスペック性能とは <後編>/ぱちんこ開発者の独り言

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ぱちんこ開発者の独り言53
私は、前回のコラムの末尾にて「初代無双(CR真・北斗無双)を始めとする確変継続率80%を保持した機械が、その他の確変継続率65%規制下でリリースされた機種に比べて出玉性能が高いわけではない」と指摘させて頂いた。

→【コラム】真のスペック性能とは<前編>

投資に対してのリターンの期待値がほぼ変わらない限り、初当たり確率が、仮に1/320であれば、トータルの出玉が大きく変わることはほぼあり得ない。初代無双は、ヘソ賞球3個のため通常ベースに違いはあるのであるが、実はそれは些末な話であり、実際のところ、出玉性能はそれこそ「CR真・北斗無双2FB」(以下、無双2)とそれほど大きく変わらないのである。

その証拠に双方の出玉性能について、下記にて計算してみる。

◆初代無双スペック
初当たり確率:1/319.7 (ST中)高確率:1/81.2 ST回数:130回
ST(+時短)中大当りラウンド
16R確変(出玉:2400個) 51%
8R確変(出玉:1200個) 7%
4R確変(出玉:600個) 42%

初代無双はSTタイプであり、ST130回転の間に1/81.2を引くことができれば、大当り+再度確変継続となるスペックである。この場合、期待平均大当り回数(TK)は下記の通りとなる。

1-((TSA-1)/TSA)^130 = 0.800297236…
よって、確変継続率は約80%
1/(1-0.800297236…) = 5.007441962…
すなわち、期待平均大当り回数は、約5.0074回となる。

ここでポイントは、初代無双はST機であるということである。この期待平均大当り回数は、ループタイプを前提とした大当り回数である。考えてもらえばわかる通り、ループタイプで確変80%とST機タイプで確変80%の場合、ST機の確変終了は大当りせずにSTを駆け抜けて終了であるため、この平均大当り回数もループタイプよりも1回少なく計算しなければならない

つまり、ST機タイプで80%継続(TK=5)というのは、ループタイプで75%継続(TK=4)と変わらないのである。

初代無双の場合、ST中の大当り1回の平均出玉は
2400×51%+1200×7%+600×42% = 1560個であるため、平均獲得出玉は
1560×(5.0074 – 1)= 約6,252個(払い出しベース)となる。

◆無双2スペック
初当たり確率:1/319.7 確変:65% 電サポ時 時短回数:100回
電チュー入賞時ラウンド
16R確変(出玉:2400個) 65%
2R時短(出玉:約60個) 35%

無双2はループタイプであり、確変65%で確変が継続し、2Rを引いた後は時短が100回付くというスペックである。この場合、確変65%と時短100回の引き戻し確率を合算した数値がトータルの継続率となる。

時短100回時の引き戻し率は、
1-((TS-1)/TS)^100 = 0.268957341…となる
確変65%を抜ける可能性は35%、その後、時短100回駆け抜ける可能性は、約73.1%(1-0.268957341…)であるため、
1 – 35%×73.1…% = 0.74415 よって、無双2の継続率は約74.41%となる。

<別解>
時短平均継続回数 1/(1-0.268957341…) = 1.367909229…
確変平均継続回数 1/(1-0.65) = 2.857142857…
確変TK×時短TK=平均TK = 3.908312084… (継続率:約74.41%)

計算の通り、無双2はループタイプで継続率が約74.41%であり、大当り回数期待度でいえば、実は初代無双(ST80%)と似たような数字になる。

無双2の場合、電サポ中の大当り1回の平均出玉は
2400×65%+60×35%= 1581個であるため、平均獲得出玉は

1581×3.9083… = 約6,179個(払い出しベース)となる。

以上の通り、出玉性能でいえば無双2は初代無双とそん色の無い数値なのである。それもそのはず、初代無双が発売された当時から総量出玉規制は内規として存在しており、最も有利な状態突入後の総量出玉に関しては、新基準機になった今現在も当時と同じ数値なのである。そのため、ギリギリまで攻めたスペックの場合、その手法は兎も角として、出玉性能という一点に置いての限界値は、それほど差が無いといえる。

ただし、スペック性能でいえばそん色が無いが、ホール及びユーザーの心理としては「大きな差がある」のはご承知の通りであろう。無双2は潜伏がある、出玉0(2R)で大当りし時短100回抜けていく、アタッカーの拾球率や電サポ中の消化スピードなど、スペック性能ではなく、ゲーム性を含めたある種の表現方法によって、(体感的に)出玉性能は大きく劣っていると認識されているのであろう。

また、設置台数や稼働状況により、ホール全体の初当たり回数に差が生まれ、客滞率や想定割数によって出玉感が全く違ってくる。ようは、稼働状況が良好で、割数を高めに運用すれば、出玉感が増すため、更に体感的な出玉性能が高くなりやすい。

前回のコラム含め、何をお伝えしたいかというと、新基準機は、スペックの出玉性能としては旧基準とそん色のないものを開発することは可能であるため、スペック単一で比べた場合、ある種、メーカー側の営業トークなどに惑わされる可能性が高い。当然、スペック性能はそん色の無い数字なのであろうが、実際のところはユーザーの「印象や体感」というのは、それ以上の影響力があることを肝に銘じるべきである。

また当たり前の話ではあるが、そのゲーム性も重要であるというのは、初代無双以外に旧基準機が稼働していない現状を見れば、お分かりになってもらえるかと思う。

■プロフィール
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。

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