皆様、明けましておめでとうございます。
昨年は改正規則から一年が明け、続々と新基準機が登場するも入替は小規模でしか進まず、旧基準機撤去は今年に残された課題となった。2020年を迎え、今年は東京オリンピックも開催される記念イヤーとなる。今回も毎年恒例ではあるが、昨年の主な出来事の中から「遊技機関連」を中心に、10大ニュースとしてそれらの経過や現状を踏まえた上で総括してみたい。
【行政関連ニュース】
■消費税が8%から10%に増税
昨年10月1日から消費税が増税されたことを受け、遊技場の貸玉料金の上限額が変更された。それまで消費税8%だった時は遊技球4.32円、遊技メダル21.6円が上限値だったため、最大でぱちんこは100円24玉、パチスロ1000円47枚が貸し玉料金の上限値だったが、消費税が10%になった事により最大でぱちんこは100円23玉、パチスロ1000円46枚貸しが可能に。もちろんこれは最大値で、これより安く設定する分には法的に全く問題はない。
ただし現状のホールを見る限り、パチンコは4.00円のままが多く、パチスロも47枚から46枚に変更した店は数件見かけたものの、今も47枚や50枚が主流といえそうだ。
■ギャンブル等依存症対策推進基本計画が閣議決定
第2回ギャンブル等依存症対策推進本部会合が昨年4月19日に開かれ、ギャンブル等依存症対策推進基本計画が閣議決定した。
計画案からの変更点は、普及啓発の推進においてSNS等を効果的に活用することが追加されたほか、「ぱちんこ営業所のATM等の撤去等」「各ぱちんこ営業所において改正規則の経過措置が終了する平成33年春までに出玉規制が強化され射幸性が抑制された改正後の規則に適合する遊技機に全て入れ替えることに万全を尽くす」などに微修正された。これはパブリックコメントを経て閣議決定したもの。
■参院選、尾立氏が出馬するも惜しくも落選
「おだち遊技産業後援会」は昨年5月17日、都内港区の第一ホテル東京で、おだち(尾立)源幸前参議院議員を支援する旨の記者会見を行った。おだち源幸氏は昨年7月の参議院選挙で自民党比例代表(全国区)公認として出馬。遊技業界も「おだち源幸遊技産業後援会」「全日本遊技産業政治連盟」を中心に応援していたが、得票数9万2,800余票で惜しくも落選した。
【組合関連ニュース】
■ベースや賞球、日工組内規が一部改定
昨年3月20日、ぱちんこ遊技機における内規の内容が変更となった。変更されたのは日工組内規の仕様におけるベースと賞球の部分。2019年5月1日申請分より廃止となった。
具体的には「通常時のベース30以上」「始動口賞球4個以上」「他入賞口3個以上」が撤廃された。規則改正後の新基準機は短時間出玉で「一時間の下限出玉率が33.3%以上」「四時間の出玉率40%以上」が規定されており、厳密にはベースではないものの事実上は一定値のベースが担保されているといってよい。この改正により「のめり込み対策」に一定の考慮をしたうえで多種多様な遊技機の開発が部分的にできるようになった。「ヘソ3個賞球」の遊技機が多数発売された他、「P義風堂々2」のヘソ1個ヴァージョンなどヒット機も登場した。
■「パチスロサミット」が2年ぶりに開催
日電協と回胴遊商主催による「パチスロサミット2019in秋葉原」が昨年9月28日、都内千代田区のベルサール秋葉原で開かれ、当日は一般ファンと業界関係者10,398人が来場した。こちらは一昨年は6号機の適合状況が振るわないため開催を中断していたもの。
地下フロアでは「ウルトラ試打会」と銘打ち、18メーカー・22機種の未導入機種を含む全85台を設置した6号機試打会を実施。特にこの試打会で初披露となった機種が高い注目を集め、各人限られた時間の中、動画や写真を撮影する姿があちらこちらで見られた。
■高射幸性回胴式遊技機、来年1月末で15%以下を決議
全日遊連は昨年11月13日、都内港区の第一ホテル東京で全国理事会を開催し「高射幸性回胴式遊技機の設置比率に関する自主規制期限の再設定について」を協議した結果、「各ホールにおける高射幸性回胴式遊技機の設置比率を2020年1月31日時点で15%以下とする」という執行部案を賛成多数で決議した。
同決議には付帯事項として、設置比率を5%以下とする期限は6号機の供給状況を見ながらあらためて検討するが、各ホールは5%以下の早期達成に向けて高射幸性回胴式遊技機が一貫して減少傾向になるよう努め、当該台を増台しないこと、顧客が遊技することを想定しないような遊技機を設置してパチスロの総台数を増台することによって、高射幸性回胴式遊技機の設置比率を下げるような行為を行わないことが盛り込まれている。高射幸性回胴式遊技機の設置比率に関する自主規制は、当初、2019年1月末までに15%以下とし、2020年1月末までに5%以下とすることとなっていた。
■昨年度のパチンコ・パチスロ証紙発給枚数、ともに大幅減
日工組の事業報告によると、2018年4月1日~2019年3月31日のパチンコ機の証紙発行枚数は前期比約8万枚減の約125万枚(遊技盤約50万枚を含む)となった。一方パチスロ機の証紙発行枚数は約15万枚で、前期比約2万枚減となっている。
また日電協によると、2018年4月~2019年3月に日電協が発給した証紙の枚数は33万6,305枚で、前年度の40万9,988枚に比べると約18%(73,683枚)減少する結果となった。
今年は旧基準機の総入れ替えという状況からぱちんこ、パチスロともに大幅増が予想されるものの、供給が順調に進むかという課題も残されている。
【メーカー関連ニュース】
■「ミラクル」「オレンジ」「カルミナ」など新ブランドがデビュー
藤商事は昨年7月30日付のプレスリリースで、同日開かれた取締役会において子会社2社の設立を決議したと発表した。リリースによると、設立された子会社は㈱ミラクル(米田勝己代表取締役)と㈱オレンジ(松下智人代表取締役)の2社。いずれも事業内容は、パチスロ遊技機の開発・製造・販売とし、設立日は2019年10月1日。
またネットは昨年8月30日、新ブランドとして新たなメーカー「カルミナ」が始動したことを発表。お披露目会では参考出品として「ハイドラ-30」「ミルキィホームズ」「ウェイクアップガールズ!」の3機種が公開された。いずれも非液晶筐体で、ミルキィホームズは既に発表され、今年1月に納品が予定されている。
■ユニバーサルとカプコン、パチスロ開発で業務提携
ユニバーサルエンターテインメントは昨年1月31日、遊技機事業においてカプコンと業務提携に関する基本合意書を締結したことを発表した。ユニバーサルエンターテインメントはパチスロ筐体に関して業界トップクラスの技術力と販売力を有する。一方のカプコンは世界有数のコンテンツホルダーであり、強力なコンテンツ開発力を持っている。業務提携の主な形は、ユニバーサルエンターテインメントがパチスロ機のコンテンツ開発をカプコンに委託し、その開発支援(コンテンツ開発機材の貸与等)をユニバーサルエンターテインメントが行うというもの。
【その他関連ニュース】
■カジノ事業への参入が活発に
カジノ機器の企画・製造・販売を展開するセガサミークリエイション(以下、SSC)は昨年7月、米国ネバダ州ゲーミング・コントロール・ボード及びネバダ州ゲーミング・コミッションによる審査・公聴会を経て、同社の開発した筐体「Genesis Star™(ジェネシス・スター)」及び「House of the Dead Scarlet Dawn Battle Genesis™」、「Spring Fortune™ Blooming Lotus™」を含む複数のスロットゲームソフトの販売認可を取得した。
さらに同社は昨年9月18日には、同社のビデオスロットゲーム『Fortune Tiles of Dragon™』及び『Moonlight Treasure™』をマカオの大型カジノ施設に設置したことを発表している。セガサミーグループとしては韓国のカジノ運営大手のパラダイスグループと合弁で進めている事業として韓国・仁川に「パラダイスシティ」を開業もしており、カジノ事業への本格的な動きがうかがえる。
またダイナムジャパンホールディングスも2019年11月30日より、事業パートナーであるWEIKE GAMING TECHNOLOGY (S) PTE. LTD.と共同で開発したビデオスロット機「ダイナミックWシリーズ」3機種が、Legend Palace Casino(マカオ)において設置、稼働を開始したことを発表した。
以上、昨年の出来事を「10大ニュース」という形で総括してみた。今年は「旧基準機をできるだけ長く使いたい」という一方で「大半を新基準機に一斉入替する必要性」に悩まされるホールが多いと予想される。また適合率も含め、ポテンシャルの高い遊技機が順調に供給されるのかもキモとなるだろう。
規則改正による新基準機で一定の射幸性抑制が為され「のめり込み防止」対策は進んだ。今後は「ファン増加」が最重要項目となるだろう。近い将来「娯楽の殿堂」と呼ばれたかつての熱気がこの業界に戻ってくる事を願ってやまない。今年もよろしくお願いします。
■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。