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【調査報道】パチンコ業界、対政界戦略で大きな決断/中台正明

投稿日:2019年4月8日 更新日:

●中台レポート①
今、世間は統一地方選の真っただ中だ。夏には参議院選挙も行われる予定で、今年は政治的には「選挙の年」といっていい。こうしたなか、パチンコ(パチスロ)業界では、先の3月に発足した政治的組織・団体に注目が集まっている。「おだち源幸遊技産業後援会」と「全日本遊技産業政治連盟」がそれだ。そこで、これらの組織・団体の動向を軸に、政界とのパイプづくりに向けて大きく舵を切った業界の動きをレポートする。

・参院選で自民&尾立氏支援へ 後援会と政治連盟を結成
「おだち源幸遊技産業後援会」は、次期参議院選挙で自民党公認候補予定者となっている尾立源幸元参議院議員を支援する業界有志の組織で、会長にはパチンコ・パチスロ産業21世紀会の代表で全日遊連理事長の阿部恭久氏が就いている。

かたや、「全日本遊技産業政治連盟」は業界の有志が広く政治的活動をしていくことを目的とした団体で、会長には全日遊連の筆頭副理事長である伊坂重憲氏が就任。「3月5日付で総務省に政治団体としての届出をしたとの説明を受けている」と某県遊協理事長は明かす。

これらの政治的組織・団体を結成することになった直接のきっかけは、自民党からの働きかけだ。同党は今年1月、尾立氏を参議院選で擁立する予定だとして、推薦を求める文書を二階俊博幹事長名で業界14団体に送っていた。

さらに、1月29日の21世紀会の会合には、自民党の平沢勝栄衆議院議員と秋元司衆議院議員が訪れ、参議院選に対する協力依頼をしている。

こうした動きを受けて、21世紀会を構成する14団体の関係者らが自民党の要請を受け入れることで合意したのが2月。「6号機の型式試験適合率は依然低いし、店舗数の減少傾向にも歯止めがかからない。この現状を打開するには、政界にも業界の支援者を増やす必要がある。そこへ政権与党の幹事長名での働きかけがあった。関係性を深める好機と考えた」と14団体の関係者は語る。

だが、全日遊連、日工組、日電協、全商協、回胴遊商などは中小企業等協同組合法、あるいは中小企業団体の組織に関する法律により、特定の政党のための活動ができない。そこで、政治活動をする組織・団体を別途立ち上げることになったのだ。

すでに後援会と政治連盟は阿部・伊坂両会長と尾立氏の3ショット写真が載った、両組織連名による協力依頼文書を作成するなど、活動を開始。また、日遊協、同友会など、一般社団法人格の業界団体は尾立氏の推薦状を自民党に提出済みだという。

一方、尾立氏は3月13日の全日遊連理事会後の会場を訪れ、阿部理事長の個人的呼びかけに応じて会場に残っていた府県方面遊協理事長らに支援を要請。翌14日には、日遊協理事会後の会場に足を運び、同様のあいさつを行っている。

「14団体の足並みに乱れはない」と複数の関係者。業界主要団体は1989年に全国遊技業協同組合連合会(全日遊連の前身)の政治献金問題がマスコミや国会で叩かれてから、総じて政界との太いパイプづくりを避けてきた。それが今回は業界14団体の総意による自民党支援だ。舵取りの大きな変化といえるだろう。

・約15年前も政治連盟を検討 警察庁の意向をくんで断念
もっとも、1989年以降、業界主要団体が政界に対して、まったく背を向けてきたかというと、そうではない。全日遊連内で永田町とのパイプを太くしようとする動きが活発化する兆しを見せたのは2003~2004年のこと。当時の業界は爆裂機問題を受けて、行政当局が規則改正に動いているときで、業界では先行きを懸念する声が高まっていた。

そこへ、警察庁OBの亀井静香衆議院議員(当時)が派閥の長になったことから、亀井議員を表敬訪問。同議員は翌2004年の全日遊連総会で来賓あいさつをしている。

「亀井議員と全日遊連の理事有志による昼食会をしたこともあったし、依頼を受けて、他の警察OBの選挙を側面から支援したこともあった」と元・全日遊連関係者。そんな流れの中で政治連盟を作ったらどうかとする意見が浮上したと振り返る。

しかし、要望は自分たちに直接してほしいとの意向を警察庁が示し、断念。実際、当時の同庁は業界側からのアポイントに対して、担当課長はもとより、ときには生活安全局長が応じるなど、「今より業界の声に耳を傾けてくれていた」と先の元・全日遊連関係者が話す。

それに、当時の業界の経営環境は、厳しくなってきたとはいえ、今よりはるかに余裕があった。ぜがひでも政治連盟をつくろうとする流れにはならず、亀井議員もさして業界の力になりえなかったことから、政界との関係性強化の動きは再び沈静化していくこととなる。

・業界の決断を受け、風営法議連の動きも活発化
こうした業界の対政界戦略に変化が見えてきたのが2017年春頃のことだ。まず、全日遊連が永田町へのロビー活動を開始する。のめり込み問題や2015~2016年の「検定機と性能が異なる可能性のあるぱちんこ遊技機」問題が国会やマスコミで取りざたされるなか、業界に対して誤った認識を持った国会議員が少なくない現状を懸念したものだ。

また、2017年夏には、日電協と回胴遊商が、遊技機の試験方法に関する陳情を警察庁にしたいとして、自民党の国会議員有志で組織する「時代に適した風営法を求める議員連盟」(以下、風営法議連)に支援を要請。同庁に聞き入れられないため、すがったのが自民党の二階幹事長だった。

同年12月、日電協の兼次民喜筆頭副理事長、回胴遊商の大饗裕記理事長が全日遊連の阿部理事長も伴って、二階幹事長に規模縮小を続ける業界に対する支援と遊技機の試験方法の緩和を陳情した。

このとき、試験方法の緩和は警察庁に受け入れられなかったが、二階幹事長の意向を受けた風営法議連が警察庁との仲介役になり実現したのが、パチスロ自主規制の大幅緩和だといわれている。

今回の政治的決断も「特に前向きなのが全日遊連と日電協、回胴遊商」と某団体幹部は言う。業界の好反応を受けてだろうか。自民党側も風営法議連が3月12日、28日にパチンコプロジェクトチームの会合を開催した。

業界団体の関係者も同席するなか、警察庁の生活安全局長(12日のみ出席)や保安課長を招集し、パチスロの型式試験の適合率が低いのは、同庁や保通協の対応(不適合の理由を十分に説明していないなど)にも問題があるのではないかとの指摘をしたほか、改正規則で出玉性能を従来の概ね3分の2にしたことについて、のめり込み防止との科学的因果関係の有無を問いただしたという。

政治資金規正法により、政党や選挙の立候補者は外国人、および外国人が所属する団体からの寄付を受け取れない。ただ、政党、政治家が何よりも欲するのは票。全日遊連の関係者は「尾立氏は過去2回落選するなど、選挙にあまり強くない。自民党は業界の値踏みの意味も含めて、同氏支援を要請してきたのではないか」と読む。

警察は業界に対して司法権と行政権の両方を握っているので、業界としては突っ込んだ陳情・要望をしづらい面があるのはやむをえない。しかし、与党との関係が深まれば、与党に潤滑油の役割を期待できる。先に挙げたパチスロの規制緩和の展開のような、AがダメならBという条件闘争も、よりしやすくなるかもしれない。今回の業界の決断の行方を注視したい。

■プロフィール
中台正明
1959年、茨城県生まれ。フリーライター。大学卒業後、PR誌制作の編集プロダクションなどを経て、1996年3月、某パチンコ業界誌制作会社に入社。2019年2月に退職し、フリーとなる。趣味は将棋。

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