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【コラム】遊技機メーカーにおける新機種開発一連の流れについて~前編~

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ぱちんこ開発者の独り言78
旧規則機の経過措置期間である2021年1月末までに、基本的には全て新規則機に入れ替えなければならない。そのため、2020年に大幅な入れ替えが必要と想定ができるため、メーカー各社は急ピッチで新機種開発を行っている。

今回のコラムでは、そんな新機種開発における一連の流れについて当コラムで解説を行いたいと思う。

1:年間目標販売台数の設定
遊技機メーカーの主な収入源は、遊技機を製造開発し販売をすることで利益を生み出している。そのため、各メーカーには販売費及び一般管理費等を勘案した上で、年間における採算分岐販売台数というものが存在し、それに沿って年間目標販売台数というものが設定される。よりわかりやすくするために、仮定ではあるが具体的な数値を記載してみる。

<具体例>
想定遊技機平均販売価格 本体40万円 盤面35万円
本体比率:4割 盤面比率:6割と想定することで具体的な売上を算出する

売上原価+販売費及び一般管理費の予測値を過去の実績値よりそれぞれ算出

採算分岐販売台数 約40,000台
年間目標販売台数 50,000台

このように、各メーカーはおおよそではあるが採算販売台数を計算し、その数値を元に年間目標販売台数を設定するのである。

年間目標販売台数が決定すると、年間の目標リリース台数がある程度想定可能となる。例えば、下記のように想定する。

・メイン機種 1機種 12,000台
・サブ機種 5機種 6,000台 (合計30,000台)
・リユース機種 4機種 2,000台 (合計8,000台)

このように、年間新機種を6タイトルリリースし、リユースにて4機種販売を行い、全ての目標台数をクリアすることができれば目標に達する、といった形で想定を行うわけである。

どのメーカーでも社長以下、役員会議にて上記のように年間目標台数が設定されることにより、開発部は年間開発機種数を設定し、営業部は競合他社の動きやホール動向を勘案し、目標台数を売り切るための営業戦略(納期設定や販売方法等)を練るわけである。

また製造部は、営業部が設定した納期や受注状況に合わせた形での生産調整を行うことで、パフォーマンスを出す必要がある。開発部や営業部が目標をクリアしたとしても、製造部が納期までに生産が不可能であったり、受注状況とはかけ離れた部材調達をし、多くの部品が在庫になると当然のことながら会社は赤字になるのである。

2:新機種開発起案
年間の目標リリース数が決定すると、自ずと年間における新機種開発数が決定する。年間6タイトル販売を行うためには、当然のことながら年間6機種以上、新機種タイトルの開発着手を行わなければならない。

開発部として、年間6タイトルの新機種開発が決定しているが、社長以下、役員会議にて承認をとる必要性があるため、役員会議にて新機種開発の起案が必要となる。ここで、各メーカーの開発部企画課が、新機種開発における企画書を作成し、役員にプレゼンをする必要性が出てくるわけである(メーカーによって企画課がプレゼンしない場合もある)。

起案に必要な企画書に記載される内容は、下記の通りである。

◆モチーフ
⇒版権の場合は版権の説明等、オリジナルの場合はそのイメージ等の資料
◆コンセプト
⇒機械のポイントや開発着手時からの狙いなど
◆ゲームフロー
⇒ゲーム性の概略等
◆スペック
⇒確率や継続率、現時点における想定シミュレーション等
◆開発コスト
⇒現時点における見積り、版権費用の説明

このような形で具体的な機種イメージが把握できる資料を作成し、役員会議にてプレゼンが行われる。

社長以下役員が企画書及びプレゼンにてヒアリングを行い、年間目標販売台数が達成できる企画であるかどうかを判断し決断を下す。ここで役員承認が下りると、最低でも数億円の予算が組まれ、新機種開発プロジェクトが発足することになるため、役員も厳しく判断を行うことが多い。

近年では、目標販売台数を大きく下回ることも多いため、着手承認プレゼンが特に厳しいが、数年前まではリリース数が重要という意識が高かったため、着手承認プレゼンはある程度内容を抑えていれば通過しており、その結果、方向性がブレる機械が多かったことも否めないであろう。

このように、基本的には紙ベースで新機種開発の判断を行い、ここから約1年半から2年ほどかけて新機種開発を行っていくこととなる。

次回のコラムでは具体的な開発の流れについて解説していく予定である。

■プロフィール
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。

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