マカオのカジノ売上(粗収益、Gross Gaming Revenue=GGR)はアフターコロナとなった2023年の年初以降、回復傾向を維持してきたが、ここに来てブレーキがかかっているようだ。
マカオのゲーミング規制当局(博彩監察協調局=DICJ)が発表した最新統計によれば、今年(2026年)9月の月次カジノ売上は前年同期比1.2%減の180.63億パタカ(約3535億円)で、2024年10月以来の最低を更新するとともに、4ヶ月連続前年割れとなった。
今年1~9月累計では、前年同期比3.2%増の1871.16億パタカ(3兆6620億円)で、依然として前年同時期を上回っているが、書き入れ時となる夏季シーズンを跨ぎ前年割れが長引き、やや重苦しい雰囲気が漂っている。
本稿でも取り上げた通り、6~7月については、注目度の高いサッカーイベント(北中米W杯)の開催期間にあたり、スポーツベッティングへの流出がマカオのカジノ売上にマイナス影響を与えたとする見方が一般的だ。8月は夏休みの旅行シーズンのピークにあたり、W杯期間中の需要の蓄積に伴う反動増が期待され、これまでカジノ売上の底上げ効果が顕著だった人気アーティストのコンサートも多く開催され、マイナス幅は縮小したものの、ダウントレンドから脱せなかった。9月は夏休みと国慶節の大型連休に挟まれた伝統的な閑散期にあたるが、主要投資銀行が発出した市況レポートを参照すると、同月中の主力のプレミアムマス客によるベット額が大幅減となったと指摘するものがあり、最近の中国本土における税務当局による取り締まり強化(海外資産を保有する富裕層への影響)、大型連休前の季節的要因の顕著化、中国本土のマクロ経済の減速といったさまざまな要因が挙げられている。
マカオのカジノ売上は、一部のハイローラーによるVIP依存型から脱却し、マス主流に変化を遂げている。よって、アフターコロナでは、インバウンド旅客数の急回復と歩調を合わせ、右肩上がりを維持してきた。
マカオの昨年のインバウンド旅客数は前年比14.7%増の4006万人(延べ、以下同)に達し、コロナ前2019年(約3492万人)以来、6年ぶりに過去最多を更新するとともに、初めて4千万人の大台に乗せた。今年も前年より22日も早い9月11日時点で3000万人を突破しており、カジノ売上の低迷が始まった6月以降も統計のある8月まで前年比プラスを維持しており、8月に至っては単月過去最多記録を更新している。
インバウンド旅客数とカジノ売上のコロナ前からの回復率を比較すると、2025年通期が101.7%と84.6%、2026年1~8月累計が107.7%と85.3%で、その勢いに差があることが一目瞭然だ。
直近のマカオの状況は、カジノにとって潜在顧客となるインバウンド旅客は増えているのにカジノ売上の伸びにつながっておらず、1人あたり平均カジノ消費が下がっている、もしくはカジノ目的の旅客が減っていると想像できる。
平均カジノ消費の低下については、中国本土でコロナ禍や昨今の経済状況を反映し、消費スタイルに変化が生じたとされることとの関連がありそうだ。中国本からのインバウンド旅客といえば、かつては世界各地で高級ブランド品から家電、日用雑貨に至るまで「爆買い」と呼ばれる旺盛な消費で大きな話題となったが、最近ではプチプラ、コスパ重視の傾向が強まっている。こういった世相の中、カネがかかるカジノ遊びへの心理的なマイナス影響は少なからず生じているだろう。
別の側面では、中国本土とマカオの間にはボーダーが存在する中、資金移動に対する規制がどんどん強化されている状況もある。
カジノ目的の旅客が減っている可能性については、近年、マカオ政府の政策により官民が一体となってマスシフトを進めた結果、カジノ以外の観光要素が充実し、より幅広い旅客の誘引に成功したことが挙げられる。インバウンド旅客統計において、年齢や性別のデータは発表されていないが、長年マカオにいて変化を見てきた筆者が感じているのは、特にアフターコロナでZ世代(小さい子供連れのファミリーや若者グループ)が市中に増えたことだ。ただし、一旦カジノ施設内に入ると、客の年齢層はグッと上がって見える。日本でも若者の遊技離れと主客層の高齢化が同時に進んでいるという話を聞くが、マカオでも似たような状況にあるのかもしれない。
今年も第4四半期の3ヶ月を残すのみ。中国本土で7連休となる国慶節ゴールデンウィークを含む10月のカジノ売上が果たして復調するか、大きな注目を集めている。

夏休み期間中に多くのインバウンド旅客で賑わうマカオの観光名所「セナド広場」=2026年8月筆者撮影






