マカオのカジノ監理当局にあたるDICJが7月1日に発表した最新データによれば、マカオの今年(2026年)6月のカジノ売上(粗収益、Gross Gaming Revenue=GGR)は前年同月から12.1%減、前月比でも18.1%減の185.22億パタカ(約3696億円)にとどまった。月次カジノ売上が前年同月割れとなるのは昨年1月以来のことで、金額ベースでは昨年9月以降の最低だった。
アフターコロナでマカオのカジノ売上は緩やかな右肩上がりの回復傾向が続いてきたが、いったい何があったのか、気になる方も多いだろう。
マカオのカジノ売上の増減を左右する要素はさまざまなものが存在するが、この6月の落ち込みについては、ある程度事前に予想されていた。実は、「マカオのカジノ売上はサッカーW杯開催期間中に下落する」というジンクスが存在する。過去のW杯開催期間における変化をみても、コロナ禍にあった2022年を除き、2018年と2014年はいずれも対前月2桁減だった。
マカオのカジノにおける主要顧客は言わずもがな中国本土からの旅客だ。中国は今大会を含めて近年のW杯に出場していないが、国民の間におけるサッカー熱は高い。今大会のW杯はフォーマットが変更され、出場国が48ヶ国まで増えた関係で、試合数が前回までの64試合から104試合に大幅増となり、マカオのカジノ顧客層と重複する一部ギャンブラーのベッティング予算をより大きく喰い、開催期間が長くなったことで影響も拡大する可能性が指摘されている。
今大会のW杯は現地時間の6月11日に開幕し、決勝戦は7月20日に行われる。本稿執筆時点では、今大会のW杯はベスト32の13試合を終えたところだ。つまり、7月に入って以降も、より注目度の高い対戦カードがたくさん残っている。6月だけにとどまらず、7月のマカオのカジノ売上に対する影響も気がかりだ。
マカオの今年6月のカジノ売上データ発表後、複数の投資銀行が7月のマカオのカジノ売上見通しについてレポートを発出。最新予測として、JPモルガンは前年同月比8%減の203億パタカ(約4051億円)、シティは7月にかけて(これまでの実績からカジノ売上の底上げ効果が期待される)香港アーティストを中心としたコンサートが数多く開催予定となっているとし、やや楽観的な5%減の210億パタカ(約4190億円)との数字を挙げた。対前年のマイナスは避けられないようだ。
なお、例年6月はマカオのツーリズム業界における閑散期となっており、例年7月から8月にかけては夏休みの繁忙期に入る。今年は、中東情勢に伴う航空券価格の高騰などもあり、距離的に近いマカオは中国本土旅客の夏休み需要の取り込みに有利との見方もある。7月のカジノ売上は対前年マイナスが予想されるが、W杯の影響がなく、夏休みの本番を迎える8月に再びプラスに転じるかが注目される。
マカオの今年1~6月累計のカジノ売上は前年同時期から6.8%増の1269.01億パタカ(約2兆5348億円)で、プラスを確保できている。マカオでは、2023年初頭にアフターコロナがスタートして以降、3年連続でカジノ売上の回復が進み、段階的に引き上げられた財政予算における年間GGR目標もそれぞれクリアしている。2026年の目標値は年間2360億パタカ(約4兆7140億円)、月平均にして196.67億パタカ(約3927億円)という保守的な設定となっており、単月としては年初来6ヶ月目にして初めてこれを下回ったが、累計では目標達成ペースを維持している状況だ。7月も前年割れ予測とはいえ、月平均目標値は上回るとみられる。
今回のW杯に関連し、スポーツベッティングについても触れておきたい。マカオにはマカオスロット社が運営するスポーツくじ(サッカーくじ及びバスケットボールくじ)があり、サッカーくじではW杯の試合もベット対象となっている。サッカーくじに関する統計はDICJから四半期毎に発表されるため、今大会の期間を含むデータはまだだが、2018年、2014年との開催期間を含む四半期の総ベット額はいずれも前の四半期からおよそ5割増だった。同じく、香港では競馬やマークシックスを運営する香港ジョッキークラブ、中国本土では政府運営のチャイナスポーツロッタリーによるサッカーくじが存在する。
余談だが、マカオでは政府系放送局「澳廣視(TDM)」が今大会のW杯の全試合を地上波で無料放送しており、中国本土でも同様の環境が整っている。将来、日本にIRが開業した際、マカオのカジノ売上に影響を与えるほどのサッカー熱を持つ中国本土のギャンブラーを呼び込むとすれば、日本における視聴環境のあり方も、一つの検討材料になるかもしれない。

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/
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