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【コラム】アフターコロナでマカオのカジノ売上が急回復(WEB版)/勝部悠人

投稿日:2024年1月29日 更新日:

マカオでは、新型コロナの世界的流行を受けて2020~2022年にかけて入境制限を含む厳格な防疫措置が講じられ、インバウンド旅客数とカジノ売上の低迷が続いた。2023年1月初頭にようやくウィズコロナへの転換が実現して以降はアフターコロナでインバウンド旅客数とカジノ売上の回復が順調に進み、その勢いを年末まで維持した。

今年(2024年)1月1日にマカオ当局が公表した統計によれば、昨年(2023年)通期のカジノ売上(粗収益、Gross Gaming Revenue=GGR)は1830.59億パタカ(約3.2兆円)に上った。コロナ前2019年からは37.4%減で、回復率は6割超ということになる。

昨年、カジノ売上の本格的な回復が見受けられたのは春以降のこと。4月終了時点で前年通期の実績を上回り、10月終了時点で政府が財政予算で設定した年間カジノ売上目標の1300億パタカ(約2.4兆円)を達成。月次データを参照すると、3月から本格的に回復が進み、特に夏場以降に加速した。政府は市場の回復が進む状況を受け、今年の財政予算でカジノ売上目標を引き上げ、2160億パタカ(約3.8兆円)とした。これにより、マカオの歳入の大半を占めるカジノ税収が通常レベルに復帰し、昨年を含む4年間にわたる赤字収支から脱却できる見通しだ。

なお、昨年のインバウンド旅客数は約2823万人で、2019年同時期の約7割まで回復。カジノ売上の回復率を大きく上回って推移した。インバウンド旅客数とカジノ売上の回復には相関関係があるとされるが、マカオ政府は今年もインバウンド旅客誘致に力を入れて取り組む考えを示しており、2019年実績に少しでも近づけば、カジノ売上の目標達成も視野に入るだろう。昨年のインバウンド旅客数とカジノ売上の回復ペースに差が生じた理由については、カジノを目的としない旅客の割合が増えているとの指摘もあり、旅客のダイバーシティ化が進んだことと関係しているとみられる。

昨年、マカオのカジノ業界における大きな動きとしては、1月1日から向こう10年間の新カジノ経営コンセッションがスタートしたことが挙げられる。コンセッション事業者の数(6社)と顔ぶれは変わらず新鮮味はないように見えたかもしれないが、政府が目標として掲げる経済多元化や地域社会への貢献がより多く求められるようになったほか、ゲーミングテーブル及びマシンの総量制限の導入、審査結果をベースにしたゲーミングテーブル配分の見直し、いわゆる衛星カジノやジャンケット事業者に絡む規制、カジノ税の減税対象(最大5%)となる外国人専用フロアの設置といった内容が盛り込まれ、注目を集めた。実際、審査で最高評価を受けたMGMがより多くのゲーミングテーブル数を獲得してシェアを伸ばす、衛星カジノのクローズが相次ぐ、VIPルームはコンセッション事業者の直営が主となるといった変化があった。外国人専用フロアについては、直営VIPルームに類する方式で運営されている様子がうかがえる。これに限った統計資料が存在しないため、あいにく売上に占める割合やオペレーターにとっての減税効果は未知数となっている。業界関係者に話を聞いたところ、東南アジアからの旅客が主となっているとのこと。このほか、新コンセッションには2027年以前に年間カジノ売上が1800億パタカを超過した場合、コンセッション事業者は翌年からノンゲーミング分野への投資を20%増やさなければならないという規定が存在する。昨年のカジノ売上が基準に達したため、早くも新コンセッション2年目にして発動されることになった。すでに各社がノンゲーミング分野に注力している状況の中だが、今年もまた各社から新たなプロジェクトが相次ぎ発表されることになりそうだ。その他、昨年は9月初旬に超大型の台風9号の接近に伴い史上4度目となる異例のカジノ施設の全閉鎖があった。カジノにとって書き入れ時となる金曜夜から土曜朝にかけて9時間にわたって閉鎖され、少なからずカジノ売上にマイナス影響が生じた模様。

今年のマカオのカジノ売上の展望について、インバウンド旅客数の動向が鍵となる。中でも、第一の旅客ソースとなる中国本土からの旅客だ。ここまでマカオが人気のデスティネーションの地位を維持してきたが、アフターコロナで世界各地による中国本土からの旅客の争奪戦が本格化し、旅先としてマカオが選ばれるには観光デスティネーションとしての魅力を維持する必要が生じる。中国本土の経済状況の変化も注目すべき要素といえる。今年上半期については、昨年の本格回復開始時期との兼ね合いもあり対前年プラスで推移するとみられるが、夏以降に勢いを維持できるかどうかに注目したい。

アフターコロナでインバウンド旅客の姿が戻ったマカオの中心地の様子=2023年8月筆者撮影

アフターコロナでインバウンド旅客の姿が戻ったマカオの中心地の様子=2023年8月筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/

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