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【コラム】韓国・仁川のIR施設 パラダイスシティ&インスパイア訪問記(WEB版)/勝部悠人

投稿日:2024年2月28日 更新日:

筆者は昨年(2023年)12月、韓国・仁川にある2つの統合型リゾート(IR)を訪問した。1つが日本資本(セガサミー)の入る「パラダイスシティ」、そしてもう1つがオープン間もない米トライブゲーミング(いわゆるインディアンカジノ)発祥のIR企業モヒガン系の「インスパイア」だ。アジア最大のIR集積地であるマカオ在住の筆者から見て、いずれも非常に興味深く、今回の訪問での気づきをまとめてみたい。

韓国のカジノは基本的に外国人専用となっており、シンガポールのように入場料を支払うことでローカルが入場できるといった制度もない。マカオはそのような制限はないが、人口規模が小さく(約68万人)、カジノ売上に占めるローカルの割合は3%程度とされている。インバウンド依存度が高いというところは似ているかもしれない。ただし、マカオは中国本土と地続きで、また香港とも約1時間で往来できるという地理的優位性がある。仁川のIRは国際ハブ空港に近接しているものの、飛行機に乗って訪れることが前提のため、マカオよりインバウンド旅客を呼び込む敷居は高いはずだ。よって、筆者は客の入り具合や客層に関心があった。

今回筆者が滞在したのは、パラダイスシティ。仁川国際空港第1ターミナルから無料シャトルバスを利用して5分ほどという、極めて便利な立地にあった。到着したのは日曜日だったが、館内がローカルのファミリー客で大賑わいだったことに驚いた。マカオの巨大IRを見慣れている筆者にとって、パラダイスシティの規模そのものは決して大きくないものの、「アートテイメント」と銘打ってスパ(プール・サウナ)、テーマパーク、ショッピングモール、アートギャラリー等のノンゲーミング要素がバランス良く揃い、ローカルのファミリーやカップルを吸引しているように感じた。仁川国際空港とのアクセスに注目されがちだが、実は人口規模の大きいソウル都市圏からも1時間以内にあり、ローカルにとって近場で非日常を体験できるレジャースポットになっているそうだ。香港人にとってのマカオと似た状況かもしれない。一方、カジノ施設については、マカオのような賑わいは感じられず、夕方から夜にかけてのピーク時間帯でも空きテーブルが目立った。マカオのように中国本土客が大半を占める状況とは異なり、日本人が比較的目立ち、中国語を話す客も台湾からが多いとのことだった。テーブルゲームの構成はマカオとそれほど変わりないが、ややポーカーが充実している印象。平場のバカラのミニマムベット設定はマカオの大型IR並みで、かなり強気だと感じた。比較的ミニマム設定の低いテーブルに人が集中していた。

ローカルのファミリー客で賑わうパラダイスシティ=2023年12月筆者撮影

ローカルのファミリー客で賑わうパラダイスシティ=2023年12月筆者撮影

インスパイアは、仁川国際空港の第2ターミナル寄りに位置しており、敷地面積は東京ドーム10個分の約46万平米。マカオの巨大IRにも引けを取らないサイズだ。昨年11月30日にソフトオープンしたばかりで事前情報が少なく、筆者が訪れた時点では一部の施設のみ稼働といった状況だった。とはいえ、タクシーで向かう途中、その外観を見るだけでも期待が膨らみ、エントランスをくぐった瞬間、米国のIRに来たかのような紛れもない本物の雰囲気に圧倒された。公式発表資料によれば、3つのホテルタワー(1235室)、1万5千席のアリーナ、コンベンション施設、超大型LEDディスプレイによるデジタルショー、多目的屋内ウォーターパーク、最大3万人収容の屋外エンターテインメントアトラクションなどを揃え、カジノ施設についても2月3日にオープンすることがアナウンス済み。カジノは韓国最大規模になるという。マカオにも米国系のIR施設は多数存在するが、コンセプトやコンテンツなど、中国本土からのゲストの好みに寄せてしまっているところは否めない。筆者はインスパイアがIRの本場である米国型の施設作りに全振りしているところに好感を持っており、今後どのような客層を獲得するのか注目していきたい。

近年マカオ政府はノンゲーミングの拡充による旅客ソース及び経済のダイバーシティ化を図る目標を掲げ、政府とカジノ経営コンセッションを締結する全6社に協力を求めている。仁川とマカオでは、その位置関係から直接的な競合にはなり得ないとみられるが、今回筆者が訪れた仁川の2つのIRを見ると、マカオも学ぶことが多いように感じた。

インスパイアが誇る巨大アリーナのエントランス=2023年12月筆者撮影

インスパイアが誇る巨大アリーナのエントランス=2023年12月筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/

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