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【コラム】マカオカジノ運営6社が歴史・文化エリア活性化プランに参画する理由(WEB版)/勝部悠人

投稿日:2023年11月27日 更新日:

マカオでは、政府とコンセッションを締結した6社がカジノを運営している。今年(2023年)1月から10年間の新コンセッションがスタートしたばかりで、6社の顔ぶれは以前と変わらない。

周知の通り、マカオのカジノ売上は世界最大規模を誇り、いわばドル箱。コンセッションはプラチナチケットとも言える存在だ。よって、マカオ政府は各事業者に対して各種「貢献」を強く求めることができる。

以前のコンセッションの頃から、約40%のカジノ税負担に加え、ローカル人材の雇用や地元企業からの調達などが求められてきたが、新コンセッションでは「歴史・文化エリア活性化プランへの参画」というユニークな地域貢献のかたちが盛り込まれ、注目を集めている。

実はマカオはアジア随一の観光都市のひとつで、コロナ前2019年には年間4千万人近いインバウンド旅客数を誇った。コロナ禍で丸3年間にわたり低迷を余儀なくされたが、今年はアフターコロナで急回復し、その勢いを維持。1~9月累計で2019年比66%、9月単月では83.2%と、日を追うごとに復調が進んでいる。

マカオの面積は約32㎢で、東京の山手線の内側の約半分にすぎない。インバウンド旅客が世界遺産の集積するマカオ半島歴史市街地区の一部(聖ポール天主堂跡及びセナド広場周辺)に一極集中し、混雑の恒常化が社会問題となっていた。これまで旅客の分散を図るさまざまな施策が講じられてきたものの、抜本的な解決には至らず、アフターコロナで問題が再浮上しつつある。そこで、マカオ政府が目をつけたのがカジノ運営6社との連携だ。

マカオ政府は今年8月から9月にかけて、カジノ運営企業との連携によるマカオ半島、タイパ島、コロアン島の旧市街にある6つの歴史・文化エリア活性化プランを相次いで発表。カジノ運営企業と連携する理由について、統合型リゾート運営経験を通じた集客力や企画力に期待を挙げた。

具体的なエリアと連携企業はウィンマカオと福隆新街一帯(マカオ半島)、MGMチャイナと媽閣エリア(マカオ半島)、メルコリゾーツと内港23号・25号埠頭及びモンテの砦(いずれもマカオ半島)、SJMリゾーツ社と新馬路・内港エリア(マカオ半島)、ギャラクシーエンターテインメントグループとコロアンビレッジ荔枝碗造船所跡一帯(コロアン島)、サンズチャイナと永福圍・草堆街周辺(マカオ半島)及び益隆爆竹工場跡周辺(タイパ島)となる。マカオ渡航歴がある方でも、見聞きしたことがないエリアが多いかもしれない。

このうち、すでに本格稼働しているのがウィンマカオと福隆新街一帯の活性化プラン。福隆新街はかつてマカオの主要な海の玄関口だった内港に近く、歓楽街として栄えたストリート。現在も19世紀に建てられた風情ある建築物が多く残り、レストランや土産店などが集まる観光スポットだ。ただし、セナド広場から南西方向に徒歩数分の好立地にあるものの、多くの旅客は逆方向の聖ポール天主堂跡との間を往来する「ゴールデンルート」に向かっていた。

マカオ政府は今年9月29日から福隆新街一帯を歩行者天国化するプランを打ち出し、ウィンマカオがパフォーマンス、イベント、料飲、装飾などを担当し、ムードの醸成と集客を図っている。開始から約1ヶ月が経過したが、筆者が定点観測している中、これまでのところ人流は増えているように見えた。現時点ではまだ物珍しさもあるため、今後継続的に人流を維持できるか、ウィンマカオにとって正念場となりそうだ。その他のプランについては、部分的にスタートしたもの、計画策定中など様々で、段階的に出揃う予定。地元では、政府単独ではなく、民間のノウハウを活用した活性化プランに本気度を感じ、期待する声も多く聞かれる。

他にも、マカオ政府はカジノ運営企業に対し、国際スポーツイベントの誘致などでも積極的な貢献を求めている。カジノ運営企業にとって、新コンセッション下ではカジノ税負担に加えての出費が嵩む要求が明らかに増えているようだが、観光都市としてのマカオの魅力を高め、インバウンド旅客数の増につながれば、結果的にカジノ運営企業も恩恵を受けることになるのも確かだ。おそらく、世界を見渡しても、これほどの地域貢献を事業者に求めているところはなく、マカオの強みといえるだろう。

日本にカジノを含む統合型リゾートがオープンするのはしばらく先になるが、筆者はカジノ運営事業者に対する地域貢献のコミットメントも重要なポイントの一つと考え、マカオの事例を研究する価値は十分にあるように感じる。

ウィンマカオが参画する福隆新街一帯の歩行者天国の様子=2023年9月筆者撮影

ウィンマカオが参画する福隆新街一帯の歩行者天国の様子=2023年9月筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/

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