4. 型式試験の出玉率の壁
とはいえ最終的には、型式試験での出玉率試験をクリアしなければ適合はしない。ATの純増枚数が緩和されても、最終的に高純増機が難しいのはこの点だった。
型式試験では「400Gで出玉率220%」となっているが、リプレイ確率が1/7.3だとすると、型式試験で約464G間がリプレイを除くと400Gとなる。この464G間のIN枚数は1,200枚、上限の220%をクリアするには払い出し枚数は2,640枚までに抑える必要がある。純増枚数は1,440枚なので、1Gあたりの純増枚数に換算すると約3.1枚。したがって純増8枚や9枚のAT機をつくること自体は可能だが、それら高純増機は400G以上継続させると出玉率上限をオーバーしてしまう。その点から、高純増機はATが1,000枚程度で終わってしまうものが多数となっている。
逆に言えば400G試験自体は、純増3枚以下にすれば適合させやすい。ATに突入しても純増3.0枚であれば、ATが400G以上継続しても理論的には出玉率220%を超えないこととなる。
しかし、400Gの壁を越えても次に「1,600Gの壁」が待ち構えている。型式試験では「1,600Gで150%」となっている。同じくリプレイ確率が1/7.3だとすると、型式試験で約1,854G間がリプレイを除くと1,600Gとなる。この1,600G間のIN枚数は4,800枚、上限の150%をクリアするには払い出し枚数を7,200枚までに抑える必要がある。純増枚数は2,400枚なので、1Gあたりの純増枚数に換算すると約1.3枚だ。
つまりATの1Gあたり純増枚数を1.3枚まで落とせば、たとえATが1,800G以上継続しても理論上は1,600G試験で適合することになる。逆に1G純増を3枚とした場合は、最近主流の低ベースAT機で50枚35G程度のべースとした場合、1,854GのうちAT中が1,100G、通常時が750Gであれば出玉率は150%を切ることとなる。
こうして考えてみると、純増枚数を3枚程度に抑えた場合、一つの固まりとして3,000枚~4,000枚の固まりが時折あるという程度の仕様までは、型式試験上は適合する可能性も十分にありそうだ。
ただし型式試験では一日遊技を想定した出玉率試験が6,000Gで、こちらは上限126%だ。約7,000Gを回すと、リプレイを除けば約6,000Gとなるので、おおむね遊技者が一日中打った状態に近い。この126%を換算すると、遊技者が一日かけて7,000Gを回して、4,600枚の獲得が上限となる。あくまで理論上だが、6号機においては一日に5,000枚以上獲得できる仕様を開発する事は非常に困難であることは確かだ。
有利区間が緩和されたことはもちろん歓迎したい。現状では2,400枚規定は残るものの、3,000枚程度は固まる可能性もある。しかし将来的に、もし2,400枚規制も撤廃されたとしても、型式試験上は一日に5,000枚獲得するのは非常に難しい。これが現状のパチスロだという点を受け入れた上で、5号機完全撤去後には射幸性ではなく「パチスロを楽しむ」観点で遊技してくれるファンが増えることを、強く望みたい。
(以上)
■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。