【特別寄稿】パチスロ低ベースAT機について(WEB版)/鈴木政博

3.変更された型式試験方法の変更部分
昨年10月中旬より変更されたものは、大きく1つ。今回「ランダム打ち」での試験がなくなった。

これは元をただせば2014年9月にさかのぼるが、この時に型式試験において「最も出玉率が低くなる押し順で打ち続けても長時間出玉率が下限値の55%(現行規則は60%)を超えるか」を試す打ち方が開始された。当時は押し順ベルの振り分けが「左第1」のみ少なく、左を最初に押すと低ベースになる仕様がAT機の主流だった。そこで、順押しはもちろん「逆押し」や「中押し」など、どの押し順で打ち続けても、出玉率が当時の規則で55%を超える必要性に迫られた結果、ベルの6択は均等割りにするしかなくなった。

しかし、この「例えば逆押しと決めたら、通常時もAT中もずっと逆押しする」という打ち方は、導入後の市場においてこんな打ち方をするファンはいない。あまりにも実際の市場とはかけ離れた打ち方であり、業界からは「実際の市場に即した打ち方で試験をしてほしい」という要望がなされていた。

そこで今回、昨年10月より市場とかけ離れた打ち方である「ランダム打ち」が廃止されることとなった。

4.現状の型式試験内容と適合機種
まずは以下の表をご覧いただきたい。

適合して導入または発売が決定している低ベースAT機

これは現在、すでに適合している低ベースAT機をまとめたものだ。発売が決まっている機種のほとんどは、通常時に押し順ナビが出て「ナビに従ったら1枚役+AT抽選」で、ナビに逆らうと「枚数の多い小役を取れるがAT抽選なし」という仕様だ。

ただし、実は昨年秋ごろより警察庁の意向として漏れ伝わってくるのは「順押し推奨」が良いのではないかという話だ。つまり「順押しは1枚役メイン+AT抽選」で、「順押し以外は枚数の多い小役でAT抽選なし」という振り分け方だ。

これは「ランダム打ち」採用によりベル6択を均等に振り分けるしかなかったものが、ここにきて「ランダム打ち」での試験が廃止されたために、順押しのみ、または左第1のみは1枚役メインという仕様が可能になったことによる。では5.5号機以前に戻ったのかといえば、そうではない。あくまで「順押しで1枚役を取るがAT抽選する」のと「順押し以外で多い枚数の小役を取る」のは出玉率としては同一になるよう設計する必要がある。

この原稿執筆時点では、聞くところによると「ベル6択が均等で通常時にナビが出るタイプ」と「順押し・左第1のみ1枚役メインのタイプ」の両方が型式試験に持ち込まれている。しかし現時点で「ベル6択均等でないタイプ」の適合も聞こえており、警察庁の意向が「順押し推奨」であるならば、流れとしては今後「ベル6択に偏りがある」「順押し、または左第1は1枚役メイン+AT抽選」「通常時に押し順ナビは出ない」という仕様が中心となっていくだろう。

新型コロナウイルス感染拡大の影響に加え、凱旋や沖ドキ!撤去でパチスロの稼働低下が顕著だ。「低ベースAT機」にかかる期待は大きいが、一方で「最大の原因は2,400枚リミットだ」という声が圧倒的に多いのも確かだ。その点には賛成だが、現状としてまずは今後、この低ベースAT機が市場で評価され、パチスロ島に活気が戻る事を切に祈りたい。

(以上)

■ プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。

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