【特別寄稿】パチスロ6.1号機の性能(WEB版)/鈴木政博

日電協は1月27日、台東区の事務局にて記者懇談会を開き、その場にて岩堀和男副理事長、吉国純生理事、高橋純一技術ワーキング長から「6.1号機基準」の説明がなされた。今回は、この自主規制緩和でパチスロ6.1号機はどのようなものがでてくるのかについて考察してみたい。

1.緩和された3つのポイント
この6.1号機については、昨年12月17日の型式申請より可能となっており、すでに複数社が持ち込みしている状況だ。では、まずは自主規制緩和より今後開発が可能となった「3項目」についてまとめてみたい。3項目は以下の通り。

パチスロ6.1号機の緩和

1.ペナルティ規制の緩和
2.スタートレバー・ボタン等を使用した疑似遊技
3.ビデオリール演出

1.は禁止されていたペナルティの部分緩和。例えば「1枚or9枚」のフラグが成立している時に、1枚を取った場合はAT抽選をするが、9枚を取った場合はAT抽選をしない、といった「当該ゲームのペナルティ」がOKとなる。ただし、どちらをとっても遊技者としては損得はなく同じ、というのが条件となる。また以前にあったような「5G間はペナルティ」など、次ゲーム以降に影響するペナルティは不可で、その当該ゲームのみとなる。

2.は、疑似遊技の緩和。現在も「レバーを叩いたら勝手に逆回転して777が揃う」といった疑似遊技はあるが、例えば疑似遊技中に「ストップボタンを押したらリールが停止」したり、さらに「レバーを叩け!」と言われてレバーを叩くと再度リールが回転する、といった「ストップボタンやレバーなどのデバイスにリンクした疑似遊技」が可能となる。

3.も、以前あったパチスロカイジのような「ミニリール搭載機」で、演出は基本的に全面液晶のビデオリールでやる、といったものが可能となる。

2.ペナルティ規制緩和でベースは?
さて今回の自主規制緩和で最も注目されるのは「AT機のベースが下がるか」である点は異論がないだろう。以前の「パチスロ6.0号機の現状と今後の展望」でも詳しく述べた通り、今までの型式試験では、AT機の場合「順押しなら通常時もAT中もずっと順押し」で下限出玉率を見て、逆に「通常時もAT中もナビに従う打ち方」で上限出玉率を見ていたと推測される。したがって「ずっと順押し」の試験ではAT中に出玉が取れないため、通常時の小役ベースのみで下限出玉率60%をクリアしなければならず、そうなると「ベースは50枚で50G」付近にせざるを得なかったという事情がある。

では今回の緩和で、どのような可能性が出てくるのだろうか。まずは「目押しでの低ベース化」を考えてみたい。

例えば「左リールにBARを狙うと1枚役しか出ない」という小役構成にした場合。左リールに常にBARを狙って遊技者がプレイすると、1枚役しか出ないかわりにその度ごとにAT抽選が受けられる。逆に左リールのBAR付近をハズして打てば、高い頻度でベルが取れるけれども、ベルを取ったゲームはAT抽選は受けられない、といったものが考えられる。この場合、どちらの打ち方をしても遊技者としては損得なく期待出玉率は同じ、というのが条件だ。ただし現市場では「毎ゲーム目押しが必要」という機械のウケが良いとはいえず、そこがネックかもしれない。

次に「押し順ナビでの低ベース化」を考えてみたい。前提として、通常時にナビを出しすぎると通常時からAT状態と変わらなくなりコインが増えてしまうため、そう頻繁にナビを出すわけにはいかない。かといってナビを出した時に枚数の多いベルを取らない打ち方を遊技者にしてもらわないとベースは落ちないため、一定頻度でナビは出したい。さて、どんなやり方が考えられるか。

分かりやすい例として、5号機時代のような「順押し推奨機」を考えてみる。ただし5号機時代と違い、型式試験でどの押し順で試験されても大丈夫なようにする必要があるため、6択ベルの発生頻度は6パターン均等にしなければならない。その上で、通常時に順押し「1・2・3」でベルを引いた時に、どんなナビを出すのかがキーだ。例えば「1・2・3でベル/逆押しでAT抽選」というナビを出した場合、遊技者がそのどちらかを選択して打つ、という打ち方になる。そしてどちらを選んでも出玉率は同一だ。しかし遊技者の大半はATに入らない高ベース状態を求めるとは思わず「当該の小役よりAT当選」を目指すと考えられる。そのため、多くは逆押しをするだろう。そうすることにより、低ベース化を図ることができる。

では、この場合の型式試験はどうなるか。「順押しなら通常時もAT中もずっと順押し」という打ち方であれば、一定の順押しベルを獲得することになり、通常時のベルで下限出玉率をクリアできる。また逆に「通常時もAT中もナビに従う打ち方」であれば、この時に「1・2・3」を選択した分は通常時のベースが獲得できるし、仮に「逆押し」ナビを選択され続けた場合においても、通常時のベースは下がるものの、ATに当選しやすくなるためAT中の獲得枚数でベースを確保できる。つまりどのように打っても下限値出玉率は確保できる計算になる。

この緩和により「遊技者がAT抽選を選択し続けて打った場合」においては「50枚で40ゲーム」程度までベースが落ちると言われているが、やり方によってはさらに下げることも可能かもしれない。現在の6.0号機市場の動向を見るにおいて、この点は非常に期待できる部分だ。

今回のこの緩和、個人的には「非常にバランスの取れた落としどころ」だと考えている。一つ目は遊技者が「当該の小役か、AT抽選か」を選択でき、どちらを選択しても損はない、という点。二つ目は「当該ゲームのみであり、以降のゲームには影響がない」という点だ。いわゆる「空き台に座ったらペナルティ状態」という危険性がないのは安心感があり、稼働面でも問題が起こりにくいだろう。懸念点があるとすれば「天井機能搭載機」の場合だ。仮に1枚役をカウントし、ベルを取るとカウントせず天井に近づかない、という性能にした場合、天井近くならベルを取ると損だったり、またいざATに突入しても残り有利区間が短くなるデメリットも考えられる。天井ゲーム数とデータランプの数字が合わない、といった事象も出てくるかもしれない。このあたりを含め、どうなるのかについては今後登場する6.1号機パチスロに注視してみたい。

3.演出面での緩和部分
演出面でも緩和に期待できる部分はある。一つ目は「疑似遊技の緩和」だ。5号機時代には可能だった、疑似遊技中に「レバーを叩いたらリールが回転したり、ストップボタンを押したらリールが停止したり」という動作が可能になった。これにより、疑似遊技で「7・7・7」を狙わせることができるため、もしかしたら「350枚出るジャグラー」をAT機で違和感なく再現できるかもしれない。またAT機でも上乗せ特化ゾーンは「1Gを疑似遊技で10Gに見せる」ことや、AT中の「7・7・7を狙え!」などの演出も疑似遊技でやることにより、リール配列がしやすくなる可能性もある。

最後にビデオリールについて。まずは関連する規則部分を見てみたい。

別表第5 回胴式遊技機に係る技術上の規格(第6条関係)より抜粋

(1) 性能に関する規格
イ 回胴の回転に係る遊技機の性能に関する規格は、次のとおりとする。
(チ) 回胴の数は、3個以上とすること。
(リ) 図柄は、回胴回転装置の作動中においても、おおむね識別することができるものであること。

(中略)

(2) 構造に関する規格
ロ 回胴の構造に関する規格は、次のとおりとする。
(ニ) 図柄は、鮮明であり、かつ、遊技者に識別しやすいものであること。
(ホ) 図柄の大きさは、縦25mm以上、横35mm以上であること。また、図柄の大きさは、図柄の種類に応じて、すべての回胴につき同一であること。

 

もちろん「ビデオスロット」を開発する場合でも回胴リール自体は必要だが、その大きさに規定がある。「回胴の数は3個以上」で「図柄は縦25mm×横35mm以上」なので、最小でもそのサイズのリールはどこかに搭載されることになる。

ただし最近主流の「押し順AT」の場合、実際にリールを見て目押しする機会はほとんどないため、市場性としては「ビデオリール化」は演出面強化としてはマッチングが良いだろう。

新型コロナウイルスでの営業自主規制や、中国からの遊技機部品納品の遅れなど業界内でも様々な問題が出ていきている。6.1号機についても現時点では適合情報は得られていないが、近い将来には登場するだろう。新しい6.1号機に期待したい。

■ プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。

※本稿は過去に本誌に掲載した記事を、一部、WEBサイト用に編集した上で掲載しております。

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