【特別寄稿】パチスロ6.0号機の現状と今後の展望(WEB版 中篇)/鈴木政博

2.純増枚数の上限値
まずはじめに「理論上の純増枚数」を考えてみたい。もちろん「リプレイ7.3分の1で、他はすべて15枚役」が最大であると考えると「純増10.3枚」となるが、前述したようにシミュレーション対策で「増えも減りもしないボーナス」を搭載する必要がある。このボーナスについてはフラグ成立後は「純ハズレ」となるため、この分の純増がどうしても減ってしまう。そう考えると限界値では10枚も可能かもしれないが、現実的には純増9枚程度となるだろう。しかし問題点もある。15枚役だらけだと、例えば押し順6択であれば「6回に1回は揃ってしまう」ため、恐ろしくベースが高くなってしまう。したがってベースを落とすために「押し順+目押し2択」で12択にしている機種が多い。しかし「目押しが必須」というデメリットもある事を考えると、今後の高純増機は5号機であった山佐「鉄拳エンジェルVer.」のように4リールにして「押し順24択」という機種も出てくるかもしれない。

さて、型式試験をクリアするためには純増枚数を上げると減る区間を入れて調整する必要があることは述べたが、どの程度のゲーム数が可能となるのか。

まずは(別表2)をご覧いただきたい。これは純増枚数ごとに「AT区間」と「減る区間」がどの程度の比率であれば出玉率上限をクリアできるのかをまとめたものだ。条件として「リプレイ確率1/7.3で50枚ベース50G」として計算している。

これを見ると、まず400Gに限っていえば純増3枚なら減る区間をつくる必要はないが、しかし1,600Gでみてみると純増3枚であっても900G程度しかAT区間に滞在できないことがわかる。「1,500G・2,400枚リミット内規」から考えると、「純増3枚×800G=2,400枚」という区間をつくることは可能だが、その前後1,600GにAT区間が一切ないようにしなければならない。つまり「たまたまATが連チャンしてしまう」と、不適合になるということだ。

では純増8枚の場合はどうか。こちらは400Gの時点で、すでに182Gが上限となる。まずはこの182Gだが、これはあくまで「型式試験適合」の基準値であって、実現不可能、という意味ではない。実際に純増8枚で200G以上続く機械も設置されている。これはあくまで保通協で「5台を持ち込み、設定ごとに17,500G」を「最も出玉率の高くなる打ち方」で試験した時に、一か所でも上限を超えれば不適合、ということであり、裏をかえせば「試験でたまたま出なかった」なら適合することもある、ということだ。

次に1,600Gで見てみると「407G」しかATに滞在できないことになる。したがって、確実に連チャンさせないで適合しやすくするなら「前後600Gは必ずハマる」仕様にするなどの方法が考えられる。つまり「AT終了後は必ず600Gハマる」のであればAT前に600G、AT後に600Gハマるので、合計1,600Gでみると上限を超えづらくなる。純増枚数や仕様にもよるが、なんらかの「連チャンしづらい仕組み」が取り入れられている機種が多いのも、この1,600G対策だといえるだろう。

次回は、さらに踏み込んで「高純増を適合させるための取り組み」について考えてみたい。

(以下、次回に続く)

■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。
Mail:msuzuki_u3ken@ybb.ne.jp

※本稿は過去に本誌に掲載した記事を、一部、WEBサイト用に編集した上で掲載しております。

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