【特別寄稿】遊タイム搭載ぱちんこ機性能の考察/鈴木政博

時短機能の緩和として、警察庁生活安全局保安課長名義で「警察庁丁保発第177号」として「技術上の規格解釈基準について(通知)」が発出されたのが昨年の12月20日。その後に制定された「日工組内規」の内容に沿った、いわゆる「遊タイム」搭載機の発表、導入が相次いでいる。これらの性能や特徴はどのようなものか、考察してみたい。

1.緩和された内容のおさらい
まずは解釈基準改正及び日工組により可能となった性能をまとめてみたい。

新たに認められた時短性能

時短の回数
・今までの「100回まで」が撤廃。低確率分母の3.8倍までの回数が可能に

時短の発動条件
a.大当たり終了後に開始
b.通常時に、大当たりが規定回数まで発生しなかった場合(規定回数は低確率の2.5倍~3倍)に開始
c.通常時に、特定のハズレ図柄停止で開始

時短の重複
・「後から引いた時短は無視して重複させないタイプ」か「後から引いた時短と今の時短の残り回数の多い方をとり重複させるタイプ」のどちらかにあらかじめ決めておくこと。
・ただし時短の性能に差がある場合は「重複させるタイプ」の場合でも今の時短の性能を継続させる。

今まで100回までとされていた時短回数上限が撤廃され、日工組内規で低確率分母の3.8倍までと定められた。発動条件については、今までの大当たり終了後に開始するもの(a.時短)に加え、パチスロの天井に近い「遊タイム」(b.時短)や、特定ハズレで突入するもの(c.時短)が新たに搭載可能となった。また、時短中に「突然時短」を引くなど、時短が重複した場合の処置も決められている。

 

2.導入される「遊タイム」搭載ぱちんこ遊技機
新たな時短性能の遊技機は、既に4月20日のSANKYO製「Pフィーバー真花月2 夜桜バージョン」を皮切りに導入が進んでいるが、不運にも新型コロナウイルス感染拡大による「緊急事態宣言」発令直後のタイミングであったこともあり、ファンに浸透したとはいいづらい状況だった。しかし7月以降に各社から相次いで「遊タイム搭載機」が発売され、その性能に注目が集まりだしている。

以下は導入された、または今後導入される予定の「遊タイム搭載機」をまとめたものだ。

遊タイムの性能についてまとめると、現時点では大きく分けて3つのジャンルに分かれている。

1. 遊タイム突入で大当たり・RUSH突入とも、ほぼ確実な性能
2. 遊タイム突入で大当たりはほぼ確実だが、RUSH突入は振り分けアリ
3..遊タイム突入では、大当たり期待度は高くないもの

まずは導入済の西陣(ソフィア)製「PモモキュンソードMC」に代表されるような「一種+二種混合タイプ」、中でも小当たり確率が高く、小当たりでほぼV入賞が確実となるタイプ。このような機種は、遊タイム時の時短回数さえ増やせば「遊タイム発動=大当たり・RUSHともに確定」となる、最も手厚い性能となる。近く導入される高尾製「P学園黙示録ハイスクール・オブ・ザ・デッド 弾丸319Ver.」も同等のものだ。

また、JFJ製「Pリング 呪いの7日間2」など右打ち時は100%確変になるSTタイプも、RUSH確定となり手厚さは近いものと言えるが、違いは大当たりする割合だ。「一種+二種混合タイプ」は事実上100%大当たりする時短回数を設定できるが、一種だと3.8倍までなので、2%超の「スルーしてしまう事例」が発生してしまう。したがって「遊タイム発動=ほぼ大当たり・RUSHともに確定」という性能となる。

次にこちらも導入済みのJFJ製「P遠山の金さん2 遠山桜と華の密偵」に代表される「確変ループタイプ」だ。こちらは遊タイム時の時短回数さえ増やせば「遊タイム=ほぼ大当たり」となるが、右打ち時にも「通常大当たり」があるため、遊タイム時に引く大当たりが「確変大当たり」とは限らない。

最後に導入済みのサミー製「P交響詩篇エウレカセブン HI-EVOLUTION ZERO」に代表されるものだ。こちらは「遊タイム」に突入しても100回しか時短回数がない。同じく年内に導入が見込まれる三洋物産製「Pスーパー海物語IN沖縄5」も、時短回数は100回の模様だ。

一見ファンにとっては「遊タイム発動=大当たり・RUSHともに確定」という手厚い仕様が有利にも思えるが、一概にそうとは言えない。まずは表の「実質大当たり確率」をご覧いただきたい。これはラムクリ状態からの初当たりについて、「遊タイム中は玉が減らないためカウントしない」とした場合、実際にヘソを平均何回転回せば大当たりするのか、を算出したものだ。これを見ても分かる通り、遊タイムが手厚い仕様はその分「甘くなる」ため、RUSH期待出玉設計を少し減らすなど、調整が必要となる。また遊タイム性能が手厚いほど、いわゆる「ハイエナ打ち」に狙われるという部分もある。

逆に「遊タイム=時短100回」という仕様は、「実質大当たり確率」は大きくは変わらず、RUSH時の期待出玉はさほど減らさなくても実現しやすい。こちらのタイプのデメリットは「遊タイムスルー後」だ。遊タイムをスルーしてしまった場合でも、遊タイムまでの到達回数はリセットされない。つまり、一度自力で大当たりするまでは二度と遊タイムが出現しない、というファンにとっては最悪の状態になってしまう。

今後どんな性能のものがファンに受けるのか、注目されるところだろう。

 

3.突然時短の搭載機
同じく認められた「突然時短(c.時短)」だが、導入されている高尾製「P貞子3D2~呪われた12時間~」にも「おまけ時短」が搭載されており、今後導入されるサンセイR&D製「P真・牙狼」にも搭載されているようだ。

こちらは性能が変わっていて「特図2」に搭載されている。右打ちST中にこの「突然時短」を引いても、「後から引いた時短は無視して重複させないタイプ」と推測されるので「無効」だが、いざSTをスルーした直後の残り保留で引いた場合、残り保留消化時は既に時短中ではないので「時短が発動」する仕組みだ。残保留4個で突然時短を引く確率は4.42%と低めだが、時短に当選すると時短回数は900回、900回でさらに遊タイムに突入するため実質900回+1,200回で2,100回時短となり、次回大当たりする割合は99.86%と事実上次回確定で、しかもRUSHも確定の仕様だ。

旧基準機の経過措置が延長されたものの、計画的な旧基準機撤去は待ったなしだ。新たなぱちんこの登場で、コロナ禍を跳ね除け、ぱちんこ市場が今後さらに活性化することを強く願う。
(以上)

■ プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。

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