前回、パチスロ6.0号機の適合率に若干の改善の傾向が見られてきたと書いたが、今月になり発表された8月分を見てみると、パチスロは結果書交付71型式のうち適合が16型式で適合率は22.5%と、再び落ち込んだ。適合率改善が遅々として進まない現状を踏まえ、今回は前回に引き続き現状と今後のパチスロ遊技機の性能について、出玉率や純増枚数から考察してみたい。
1.出玉率上限の現状
現在の適合率と試験対策を考察するにあたり、まずは上限値の現状について見てみたい。ご承知の通り、長時間出玉率は旧基準の上限120%から115%にダウンした。しかし、現状のAT機全盛の状況から見て重要なのは、ATの純増枚数に直結する400Gと、リミット1,500Gと密接に関係する1,600G試験の上限だろう。
まずは(別表1)をご覧いただきたい。これは、保通協での型式試験において上限値をクリアするギリギリのラインを数値化したものだ。リプレイはメダルを投入せず遊技できるのでIN枚数には含まれないため、まずはリプレイ確率を7.3分の1としてIN枚数を計算している。
同一出玉率の上限がある「シミュレーション試験」については、前号で述べた通り成立した小役は全て最大枚数で取る反面「頻繁に成立している増えないボーナスも成立ゲームで必ず入賞したと仮定して」試験されるため、AT機に関しては上限値を超えることはほとんどない。問題は「実射試験」で、こちらは下限を見るための「ナビは一切無視して順押し等で打ち続ける」打ち方と、もう一つ、上限を見るためにナビが発生したらナビに従う「最も出玉率の高くなる打ち方」が行われていると推測される。
さて、AT機の純増枚数に直結する「400G試験」を見てみると、400Gで純増上限が1,242枚となり、1Gあたりの純増枚数にすると「3.11枚」が上限値だ。もちろん一時的な純増枚数は8枚でも10枚でも可能だが、前後の400Gでは純増3枚程度まで落とさないと適合しない、ということになる。しかも型式試験は「5台を持ち込み、設定ごとに17,500Gを試験」するため、設定6段階なら総計最大で525,000Gも試験する可能性がある。そしてその膨大な525,000Gの「どこの400Gを切り取っても」純増1,242枚・出玉率220%を超えている部分が、例え一か所でもあれば不適合となるのだ。つまり純増3枚程度の機械であっても「ちょっとベルのヒキが偏った場面」があるだけでもすぐに不適合になる。そう考えると、そう易々とは適合できない現状がご理解いただけるだろう。
さらにリミットの1,500Gに密接な関係のある1,600Gだが、こちらは上限増加数が2,072枚となっている。自主規制では「2,400枚」だが、こちらも実際には「どこの1,600Gを切り取っても」純増2,072枚・出玉率150%を超えている部分が一か所でもあれば不適合となる。したがって、AT区間が1,500Gフルに継続するような機械であれば、その純増枚数の上限は1.3枚程度にしかできない。したがって現状では純増枚数を増やして、前後やAT中に「減る区間」を入れることでこの1,600G上限をクリアしようとする機種が多い。AT中が1000G以上続くような機械があまり見当たらないのは、この1,600Gの上限が影響しているといえるだろう。