8月29日、本誌Webでパチスロ規制強化の第一報を掲載したが、本日、本誌連載陣の一人である㈱遊技産業研究所の鈴木政博氏より緊急寄稿があった。本来であれば本誌10月号にて掲載予定のものではあるが、速報性が必要との判断から先に本誌Webにて全文掲載する。
業界に激震! パチスロ、規制強化の詳細
パチスロの規制強化が行われる見通しとなった。主に現在「AT機」として市場に投入されている機械のベース部分についてだ。今回は、事の経緯とその詳細内容、さらには今後の遊技機開発に及ぼす影響について考察してみたい。
1.規制強化の経緯
私の携帯電話に複数のルートから情報がもたらされたのが、一夜明けた8月29日。そこで29日30日の二日間、各所に取材を試みた結果、おおむね判明したのが以下のようなものだ。ただし今回は情報源の特定を防ぐため、企業名などの固有名詞は伏せて書いたことをご了承いただきたい。
2014年8月28日午後、日工組・日電協より行政側への説明が行われていた。参加したのは両組合の担当者および6メーカーだ。この6メーカーはグループ会社でいえば4系列会社、ともいえる。内容は「周辺基板に係る不正対策への取り組みの経緯について」だ。組合側からの説明は滞りなく終了したが、その直後、行政側より別に、話が出た。そしてその内容は、業界に激震が走るような厳しい内容だった。
2.規制強化となる部分
パチスロ規制強化の概要は、先に遊技日本がWebで報じている通り「出玉率55%以上についての試験内容の変更」だ。現在のパチスロはご承知の通り6通りの試射試験がある。「全ての成立フラグが入賞し最大数を獲得したと仮定するシミュレーション試験」と「実射試験」、そしてそれぞれの短時間、中時間、長時間試験だ。今回の内容は、この中で「長時間の実射試験」の部分についてのみ該当するものだ。規則上の下記の部分だ。
遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則(抜粋)
別表第5 回胴式遊技機に係る技術上の規格(第6条関係)
ロ(リ) 設定ごと及び規定数ごとに、(ホ)に規定する試験を17,500回行った場合において、獲得する遊技メダル等の総数が、投入をした遊技メダル等の総数の20分の11を超え、かつ、1.2倍に満たないものであること。
ここに「20分の11を超え」とあるのが、いわゆる出玉率の下限55%といわれる部分だ。この点の解釈は、実はいわゆる「ベース」ではない。例えば純Aタイプと呼ばれる機種であれば、「ビッグボーナス+レギュラーボーナス+小役」の合計で55%を超えればいい。したがって通常の機種であれば、下限が55%を下回ることはまずない。
今回、問題となったのは現市場でいわゆる「AT機」と呼ばれるものだ。このタイプは、実はATに突入しても「ボーナス中」ではないのはもちろん、リプレイ確率が変わる「RT中」ですらない。つまりメイン基板では、ただの通常時だ。それをサブ基板で押し順ナビを出しているだけの状態だ。
この「AT」について行政側は問題視していた、というのが今回の真相だろう。実際、「年明けからはATではなくART機に移行して、ナビもメイン基板から出力する」という流れが予測される発言も、現場では言われていたようだ。
3.規制強化の内容
9月16日の型式試験から開始される運びとなった試験内容の変更点は、主に以下のようなものだ。今までの試験では「AT中」に関してもボーナス扱いとして、試射試験でもナビ通り押して小役を獲得していたと思われる。今回AT中に関しては「メイン基板では通常時だから、ナビに従うことはしない」という事になる。
一部で「順押しのみで試験を行って55%」という話も出ているが、これは一般的な今の遊技機を想定して言っているだけで、実際には順押しだけではない。現実的には「6通りある押し順のうち、いずれか一つのみを続けた場合でも55%以上」になる必要がある。つまり、最もベースが低くなる押し順で55%以上、ということは、結果として全ての押し順で55%を上回る必要が出てくる。もちろん順押しだけの試験ではないから「通常時にファンに逆押しさせて、逆押しベースを抑える」なんてアイデアも当然に不可だ。
今回のこの規制により、現市場でメインスペックであるAT機については問題が多く発生することとなる。
以下、後編に続く。
寄稿者プロフィール
●鈴木 政博 ≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫
立命館大学産業社会学部卒業後、ホール経営企業の管理部・営業本部を経て㈱リム入社。業界向けセミナーの開催や新機種FAX情報編集を統括、新機種の導入アドバイザー、経営コンサルタントとして活動。2002年、㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。
Mail:msuzuki_u3ken@ybb.ne.jp