【特別寄稿】パチンコ産業の歴史㊳ 封入式構想からECOパチ、管理遊技機からスマパチへの歴史(中篇)(WEB版)/鈴木政博


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2012年、現在のスマパチ・スマスロの原点である封入式構想が動き出した。日工組が5月30日に開催した第52回通常総会において「遊技機の不正防止やイン・アウトの管理、環境問題及び機歴の管理を実現するための“ECO遊技機”の開発」について業界団体への協力依頼を行い、実現に向け第一歩を踏み出した。翌2013年には日工組がホール系団体に対しECO遊技機の試作機を公開。しかし事は順調には進まなかった。今回は(中編)としてその後の歴史を紐解きたい。

1.「ECO遊技機」から「スマート遊技機」へ
2013年1月、日工組が「2013年中に遊技機本体、ユニット及びシステム全体を形にして、2014年中には市場投入できるものを形にしたい」というスケジュールを示し、次いで4月には全日遊連、PSCAを訪れ概要説明を行った。6~7月にかけては日工組がホール系団体に対しECO遊技機の試作機を公開。動きが活発化したその背景にあるのは、「ECO遊技機」の実現には規則改正が必須だという点だ。行政側の意向としては、業界団体の要望があれば検討するという立場であり、業界団体全体としての同意が必要だと考えられた。

しかし事はそう順調には進まなかった。実際に導入コストを負担する全日遊連側としては、そう簡単には賛成できないというスタンスを保っていた。そして同年9月19日には全日遊連の阿部恭久理事長が「日工組が提案するECO遊技機が実現するには、全日遊連を始めとするホール業界団体の同意が必要だ」との認識を示したうえで、全国理事会での内容を報告。「遊技機及びシステムのコストダウンの可否、現行遊技機を含めた遊技性の向上、現行CRユニットの低価格での活用の可否、ユニットを含めた通信方法の効率化の方法論や道筋など、全日遊連が条件面で重視していた点が未だ明らかになっていない」として、日工組のECO遊技機の提案に同意しない姿勢を継続するとした。

同年10月28日には日工組がホール関係者向けのECO遊技機説明会を開催。ECO遊技機本体(※盤面を除く)を10万円以下、ユニットはPSAとの調整が必要だが、それを含めても25万円以下を目標とすると説明した。しかし当時の構想は「全メーカー統一枠」であり、2回目以降の入替は盤面のみとするものだったこともあってこのような目標が示されたが、それでも全日遊連側は簡単には慎重な姿勢を崩さなかった。

ここからは様々な面で紆余曲折があり、事態は停滞期を迎える。一つは「全メーカー統一枠」についてだ。現在のスマパチ・スマスロとはその姿も大きく異なるものであったが、低価格化を目指すことができるという利点の一方で、メーカーからは自社製品の差別化という点で難色を示すところも多かった。まさに2014年はサンセイアールアンドディから「CR牙狼金色になれ」で「牙狼剣」搭載枠が、ビスティからも「EVA専用枠」など「専用枠」が続々と発売されはじめた時期。このような時代背景もあり、この「全メーカー統一枠」構想は結果としてその姿を消しゆくこととなる。

もう一つは「ステンレス遊技球」だ。当初の構想では「磁石ゴト」への対策として、遊技球には磁石にくっつかない「ステンレス遊技球」を使用することが検討されていた。しかしこちらも「耐久テスト」などの結果からその強度に問題があるとして、そう単純には移行できないことも分かってきた。

そもそもこの「ECO遊技機」の実現には規則改正が必須だという点は説明したが、実際にこれら紆余曲折を経て規則改正が動き出したのは2017年。6月19日には行政側より業界団体へ向けた改正案の概要説明が行われ、パブリックコメント実施が同7月11日に開始し、翌2018年2月1日に改正「遊技機の認定及び型式の検定に関する規則」が施行されることとなる。

ここで初めて、規則上に記載が加わり開発が可能となる。一方で「封入式」→「ECO遊技機」と変遷してきたその名称は、この時期から「管理遊技機」という名称が使われ始める。ただし、この名称も後に「管理という言葉の印象が良くない」などの理由から「スマートパチンコ(スマパチ)」「スマートパチスロ(スマスロ)」という名称が決定し、それが定着するのは2021年頃のことだ。

2.2018年「規則改正」に盛り込まれた内容
それでは、2018年に改正された「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」について、まずはその当該部分を「ぱちんこ遊技機」「パチスロ遊技機」に分けて掲載し、解説を加えてみたい。まずは、ぱちんこ遊技機から。

■ぱちんこ遊技機
「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」より抜粋

別表第2 技術上の規格における用語の意味(第6条関係)
(2) ぱちんこ遊技機に係る用語の意味
タ 「遊技球数表示装置」とは、遊技者が遊技球に触れることができない構造を有する遊技機に備えられる装置であつて、遊技者が発射させることができる遊技球の総数を電磁的方法により記録し、表示することができるものをいう。

【解説】管理遊技機(遊技者が遊技球に触れることができない構造のもの)には「遊技球数表示装置」が搭載される。これは遊技者が発射できる総数をデジタル表示するもの。

別表第4 ぱちんこ遊技機に係る技術上の規格(第6条関係)
(1) 性能に関する規格
チ 遊技球数表示装置の性能に関する規格は、次のとおりとする。
(イ) 遊技者が記録された遊技球の数を示す信号を自由に送信することができる性能を有するものであること。
(ロ) 遊技者が直接操作する場合のほか、記録された遊技球の数を減ずることができないものであること。
(ハ) 記録された遊技球の数を示す信号を遊技球等貸出装置接続端子板を介さずに送信することができないものであること。

【解説】管理遊技機に搭載される「遊技球数表示装置」の性能について書かれている。条文からは「(イ)遊技者がボタンを押せば、出玉表示を会員カード等に送信し貯玉できる仕組み」と推察され、また「(ロ)遊技者が玉を発射したり貯玉したりする以外に、表示された玉数を減らすことができない仕組み」であり、「(ハ)出玉表示を会員カード等に送信し貯玉するには遊技球等貸出装置接続端子板から専用ユニット等を介して、ユニットに差し込んだ会員カードなどに記憶する仕組み」と解釈できる。

まず「ぱちんこ遊技機」に関しては「遊技者が玉に触れない構造」となっており、貸玉や出玉の総数がデジタル表示され、一つ発射する度に表示が1減り、また賞球を獲得する度に表示が増える、といった仕組みとなる。またこの表示は、ヤメたい時にはボタンを押せば、隣接した専用ユニットにあるカードに貯玉できる仕組みだ。

上皿がなくなり若干遊技性は変化するものの、これまでの「各台計数機」から「CRユニット」を通じて貯玉する現状と操作性でいえば大差ないものとして制定された。

次にパチスロを見てみたい。

■パチスロ遊技機
「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」より抜粋

別表第2 技術上の規格における用語の意味(第6条関係)
(1) 複数の種類の遊技機に共通する事項に係る用語の意味
ヨ 「遊技メダル数表示装置」とは、遊技メダルの貸出若しくは入賞による獲得又は遊技メダルを遊技の用に供することを電磁的方法のみにより行う遊技機に備えられる装置であつて、遊技者が遊技の用に供することができる遊技メダルの総数を電磁的方法により記録し、表示することができるものをいう。

【解説】ぱちんこの管理遊技機との違いは、パチスロには「遊技者が遊技メダルに触れることができない構造」という記載がない。つまりパチスロの管理遊技機には、メダル自体が存在しなくても良い、と解釈できる。搭載される「遊技メダル数表示装置」については、現在の「貯留」に50枚の上限がなくなり、貸玉分も貯留に入る、と考えれば理解しやすい。

別表第5 回胴式遊技機に係る技術上の規格(第6条関係)
(1) 性能に関する規格
リ 遊技メダル数表示装置の性能に関する規格は、次のとおりとする。
(イ) 遊技者が記録された遊技メダルの数を示す信号を自由に送信することができる性能を有するものであること。
(ロ) 遊技者が直接操作する場合のほか、記録された遊技メダルの数を減ずることができないものであること。
(ハ) 記録された遊技メダルの数を示す信号を遊技球等貸出装置接続端子板を介さずに送信することができないものであること。

【解説】基本的には、ぱちんこの管理遊技機と違いはない。遊技者がボタンを押せば、表示されているメダルが専用ユニットを通じてカードに貯玉される仕組みとなっている。

このように「管理遊技機」実現に関する文面が遊技機規則の改正で盛り込まれたことにより、ここからいよいよその構想は具体化していく。そして2022年11月にはついに「スマスロ」が、2023年4月には「スマパチ」がホールへ登場することとなる。

(以下、次号)


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