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『遊技日本』

【特別寄稿】パチンコ産業の歴史㉒ 爆裂機全盛期、そして検定取り消しへ…(WEB版)/鈴木政博

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創刊60周年記念にあたり、業界の歴史を振り返る意味において「パチンコ産業の歴史シリーズ」を再掲載しています。※この原稿は2012年4月号に掲載していた「パチンコ産業の歴史㉒」を一部加筆・修正したものです。

1. AT機・ストック機全盛、そして検定取り消しへ…
2003年10月1日、それは突然の知らせとして業界に激震が走った。鳥取県公安委員会でサミー製「アラジンA」、ロデオ製「サラリーマン金太郎」、ミズホ製「ミリオンゴッド」の3機種を検定取り消し処分にしたことを公示したのだ。

当時は前号でも記載した通り「AT機全盛時代」であるとともに、一方では「ストック機」も隆盛を極めていた。AT機の進化と並行し登場した「ストック機」登場の発端は2000年にさかのぼる。

2000年10月にネット製「ブラックジャック777」が発表され、リプレイタイム中に引いたボーナスは全てストックされる、というゲーム性が当時非常に話題となった。これがストック機の原点となり、さらにこの機能を革新的に進化させたものとして翌2001年9月に山佐製「スーパーリノ」が発表。こちらは表面上ではリプレイが揃いやすくなるものではないため、通常プレイと変わりなく進行していく遊技の中でボーナスがストックされていくことから「合法的な貯金方式」として広まっていく。この機能は山佐製「キングパルサー」の空前の大ヒットで開花し、サミー製「北斗の拳」、大都技研製「吉宗」や「押忍!番長」なども圧倒的な人気を博した。

全国のホールが「AT機」と「ストック機」の両巨頭でスロットバブルに大いに沸いた、そんな中での突然の出来事だった。

鳥取県公安委員会を皮切りに、この検定取り消し処分は全国的に波及。突如として、爆裂機に終止符が打たれることとなる。

これら3機種は、全て「押し順ナビAT機」であり、順押しでは「ベースが極めて低くなる」点で共通している。もちろん差玉の大きさから見る「射幸性の高さ」でも極めて荒い機械ではあったが、検定取り消し事由などを考察するに至り「押し順ナビAT機」であった点が大きく影響したのは確かだろう。

アラジンA、サラリーマン金太郎、ミリオンゴッド

2. 爆裂機問題「検定取消」に至るまでの自粛の動き
この「検定取り消し事案」により業界は大きく揺れた。ただし業界も、この2003年10月1日まで無策で手をこまねいていたわけではなかった。実はこの取り消し取消事案からさかのぼること約2年前、業界内でもこの「パチスロの行き過ぎた射幸性」については問題視されはじめ、約1年半前には様々な自主規制がスタートしている。この迅速な動きの裏には、ちょうどこのタイミングで「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」改正の動きが進んでいたことがもちろん無関係ではない。業界としても先だって一定の自浄作用を見せることで、極端に遊技機規則が厳しく改正されることを回避したい思惑があったことも事実だろう。

それでは当時、どのような自主規制策が取られていたのか。まずは下記年表をご覧いただきたい。

パチスロ爆裂機の主な自粛の動き①

2002年
5月31日
サミーが「アラジンA」のメーカー保証書の発行を停止

6月7日
日電協技術委員会で、射幸性の高い機械の販売等について自粛の方向を検討

6月11日
ロデオ「灼熱牙王」が、新台発表会開催中に急遽、発売中止を決定。千代大海が登場するTVCMのキャッチフレーズ「怒涛の30連勝!」が問題化したもの

6月13日
日電協が拡大技術委員会を開催。「日電協内規」を制定し、今後その内規にそったAT機を保通協・公安委員会へ持ち込む方針へ

6月17日
日電協が拡大技術委員会を開催。日電協内規の原案がまとまる。内容は以下の3つ

  1. 保通協の型式試験の試射試験における、メーカー申告停止順序とホールで実際に行われるリール停止順序が同じとなるよう設計する
  2. ホールでの1日1台あたりの差玉が10,000枚を超える頻度については、ほほ0%にするよう設計する
  3. 今後販売予定だった機械など今後の取扱いについては20日の日電協理会で詳細を協議する

6月18日
日電協が「日電協内規案」を警察庁へ報告

6月28日
日電協が拡大技術委員会を開催。「日電協内規」をまとめる

7月2日
日電協が組合会議を開催。「日電協自粛案」および「自主規制仕様の実施要綱」を発表

2002年2月24日。サミー「アラジンA」の導入が開始するとホールでは瞬く間に大人気機種となった。押し順AT機で、1Gあたりの純増枚数は実質11.9枚。しかしこの機種には「16,384分の1」という極めて低い確率ではありながらも「AT最大5,000G継続」というフラグが存在した。

実際にホールで「50,000枚出た!」という声が全国に広まり始めると、業界内においても「パチスロの行き過ぎた射幸性」を問題視。サミーは5月31日に「メーカー保証書の発行を停止」する。日電協でも、その1週間後の6月7日には「射幸性の高い機械の販売等について自粛の方向」を検討しはじめた。

しかし、これでは収まらなかった。さらに翌週6月11日、ロデオ「灼熱牙王」の新台発表会開催中に、急遽「発売中止が決定」したとして、途中で発表会が中止となった。

行政側のその強い意向を感じ取り、日電協では「日電協内規」を迅速に策定し、その内容に沿ったものしか型式試験に持ち込まない自主規制案を制定した。内容は以下の通りだ。

【日電協自粛案】

  1. 型式試験の試射試験について最大出玉率停止順序の採択
    「当該遊技機を遊技場で一般の遊技客が遊技する打ち順と、型式試験において試射試験時の打ち順が同じ停止順序となるように設計する。」
  2. 最大差枚数を考慮した出玉率設計の採択
    「遊技場での1営業日当たりの最大差枚数(トータル出玉と考えるといい)が、1万枚を超える頻度がほぼないように出玉性能を設計する。」

【自主規制仕様の実施要綱】

  1. 自主規制仕様による遊技機の保通協への型式試験申請は、平成14年8月1日持込み予約分からとする。
  2. 平成14年8月1日以前に保通協へ型式試験を申請した遊技機であって、組合員の判断基準により、適度の射幸性を超えるおそれがあると認められる遊技機については、平成14年12月31日まで営業所に納品設置できるものとする(これは差枚数2万枚)。ただし、組合員の判断基準により、著しく射幸性が高いと認められる遊技機については、平成14年7月12日以降納品・設置を中止するものとする(これは差枚数3万枚以上の機械)。
  3. 平成14年8月1日以前に保通協へ型式試験を申請した遊技機であって、組合員の判断基準により、今回の自主規制と同等の仕様と認められる遊技機については、特別な規制を設けないものとする。
  4. 上記2項「ただし書き」に該当し、かつ、現に営業所に設置されている遊技機で、平成14年7月12日以降納品・設置を中止したものと同等の遊技機は、自主規制が速やかに適用できるよう、各組合員にあっては、市場からの回収を図るなど最大限の努力をするものとする。

平成14年は2002年なので、実際に「アラジンA」導入から6ヶ月後の8月1日からは「ホールでの打ち順と型式試験での打ち順を一致させ」「1万枚を超えることがないよう出玉設計」した機種しか型式申請しない方針を打ち出し、さらに、すでに適合を受けている遊技機についても3万枚を超える機械は7月12日以降、2万枚を超える遊技機は年内で納品を中止する自主規制を引いた。そしてさらに自粛に関する動きは続く。

パチスロ爆裂機の主な自粛の動き②

2002年
8月7日
日電協が自主規制区分リストを発表。区分を4.0号機(10,000枚)、4.1号機 (20,000枚)、4.5号機(自主規制後)、著しく射幸性が高いと認められる遊技機(30,000枚)とした

8月21日
ミズホが「ミリオンゴッド」のメーカー保証書発行を停止

9月中旬頃
「アラジンA」「サラリーマン金太郎」「ミリオンゴッド」が「検定取り消し対象となる可能性がある」として、この後、上記機種は自主撤去の方向性へ

10月3日
東京・浅草ビューホテルにて、ベルコが初の展示会を開催。「スーパービンゴ」を発表したが、時期が時期だけに、その射幸性が話題に

12月上旬頃
サミーが「アラジンA」の代替機「アラジンS」を販売開始。営業活動に入るが「アラジンA」の撤去は進まず

2003年
2月17日
ベルコ「スーパービンゴ」のメーカー保証書の発行を停止

2月25日
日遊協を通じ、サミー・ロデオ・ミズホ製品についての回収案が発表される。内容は以下の通り

  • サミー・ロデオ:自社製のパチスロと買い換える場合「アラジンA」を15万円、「サラリーマン金太郎」を10万円、「釣りキチ三平」を3万円で下取り
  • ミズホ:「ミリオンゴッド」を取り外すことを条件に3月末までにエレコ「花火百景」の契約を行った場合、最優先で納品

3月18日
ミズホがプレス発表を行い、「ミリオンゴッド」の代替機を準備、「ミリオンゴッド」を撤去する条件で、代替機を半額程度で提供するとの発表

5月15日
全日遊連が機械対策委員会を開催、「当該遊技機製造業者の自主回収への協力に際しては、全経営者が一致して出来得る限り早期に実施することを決議する」決議文を発表

2003年
6月13日
警察庁生活安全局が「回胴式遊技機に係る試験申請について(通知)」という文書を通達。「客に回転停止装置の押しかたを、音、光、映像その他の方法を用いて指示する機能」「客に入賞、役物等の図柄の組合せに係る図柄を、音、光、映像その他の方法を用いて指示する機能」について、平成15年8月1日型式試験申請受理分以降の型式試験にて、機能に関する資料の提出を求めることとした、との内容で、事実上AT機が禁止へ

7月2日
日電協4.5号機特別委員会は、ベルコ製「スーパービンゴ」が日電協自主規制事項に抵触し、著しく射幸性が高いと認められる遊技機に準ずる遊技機であると認めざるを得ない、と日電協役員会に答申

7月16日
「ミリオンゴッド」の代替AT機「ゴールドX」に攻略法が発覚、大問題に

8月1日
「回胴式遊技機に係る試験申請について(通知)」の内容が保通協型式試験にて実施

10月1日
鳥取県公安委員会で(株)ミズホ「ミリオンゴット」、(株)ロデオ「サラリーマン金太郎」、サミー(株)「アラジンA」の3機種が検定取り消し公示。全国に波及

10月10日
警察庁より規則改正案を業界団体・マスコミへ発表

こうした数々の自浄努力もむなしく、2003年10月1日には鳥取県公安委員会にて当該3機種が検定取り消し処分となった。そしてその10日後、警察庁より提示された「規則改正案」は当然のごとく、極めて厳しい内容となっていた。

(以下、次号)

■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。

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