【コラム】マカオのカジノIR事業者がタイに熱視線!(WEB版)/勝部悠人

補足すると、近年マカオのカジノ市場を取り巻く環境は目まぐるしく変化しており、内外におけるさまざまな規制強化や大手ジャンケット事業者が絡む事件などを経て、VIPからマスへのシフトが急速に進んだ。近年、中国が海外ギャンブルへの誘客等をめぐって規制を強化したのは周知の通り。マカオの場合、人口はわずか68万人に過ぎず、カジノ売上はインバウンド旅客頼りだ。そのインバウンド旅客の約7割を中国本土からの旅客が占め、香港と台湾を合わせたグレーターチャイナエリア合計では9割にも達する。このところマカオ政府は国際旅客の誘致にカジノ運営会社を巻き込むかたちで取り組んでいるものの、目立った成果は出ていない。マカオ当局は新たな観光スポットやノンゲーミングアクティビティを増やす策に打って出たが、かつてマカオのカジノ売上の大半を占めた中国本土のハイローラーを中心とするVIPによるの売上分の減を埋めるだけのマス客、海外客を呼び込めるまでには時間と労力が必要とみられる。参考までに、マカオの年間カジノ売上のピークは2013年で、以降はアップダウンを繰り返し、コロナ禍を迎えて壊滅的な打撃を受けた。今年1~5月累計のカジノ売上はコロナ前2019年同期の51.7%となっている。これがどのくらいのスピードで、どこまで回復するのかが注目されるが、マスに頼らざるを得ない中、ブルームバーグの報道が指摘する通り、楽観視できないだろう。

依然としてマカオが世界最大のカジノ都市であり、IRの数や規模の面でも群を抜いていることは間違いなく、一朝一夕のうちにその地位が脅かされることはないだろうが、経営側の本音としては、以前ほどおいしい商売ができなくなったのかもしれない。潜在力のあるフロンティアを目指すのは上場企業としても当然だ。特に、タイについては、マカオに拠点を置く事業者にとって補完的な市場といえる。

なお、ブルームバーグの報道を受けて、同日午後に香港証券取引所に上場するGEGとMGMチャイナの株が大きく買われ、終値で前日から4.2%、4.4%上昇。マーケットは好意的な反応を示した。今後、マカオの他の事業者の動きも気がかりだ。

「タイ」のイメージ(資料)=筆者撮影

「タイ」のイメージ(資料)=筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/

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