【コラム】スペック性能についての注意点とは~後編~

ぱちんこ開発者の独り言83
前回のコラムでお話した通り、今回はスペック性能について掘り下げてのお話となる。

新規則機になり短時間出玉率対策を行わなければならない事は前回でも言及したが、そのため最近のスペックにおける関心事の1つとして「SA」がよく話題に上がる。

SAとは、確変中時短中のスタート回転数の平均値であり、スタート回転数を表す数字である事からしばしば確変中の出玉スピードの指標として語られることが多いが、この考え方自体、考え直さなければならない。

【真のSAとは】
より踏み込んだ解説を行うと、SAとは電チューサポート中に発射した100発の玉にて、何回転スタートが回ったかを計測した値のことである。そのため、SAは性能値というよりもユーザーが実際に打った「結果」なのである。

そもそも、メーカー発表値と実際の値は似て非なるものであり、SAの計測方法、切り取り方によっては様々な値になることが想定される。例えば、技術レベルが高ければ高確中は無駄玉を減らすために止め打ちをすることが多くなりSAは上がり、技術レベルが低ければSPリーチ中に止め打ちをすることは少なくなる結果SAは下がるであろう。

スペック設計側としても、ある程度SAを想定はするものの図柄における変動秒数やリーチ秒数、高確と時短の比率やゲージ構成だけではなく、演出によってもユーザーの手の止め方に差異が出るため、最終的には試験島等での実測値から算出されるものである。

その際、SPリーチは止め打ちを100%行うのか、保留玉数によって止め打ちを行うのか、等によってもSAの数値は大きく変わってくるのである。また図柄が揃ってからも再抽選や派手な演出を多用し、多幸感を演出しながら大当り間を少しも長くしようと演出が構成されているが、その間がどんなに長くとも「玉が発射されていなければSAの数値が変化することはない

高確中、時短中の変動が早いイメージがある海物語のSAが、シリーズにもよるが、平均すると12~14の間で推移しているのはホール関係者ならご承知の通りであろう。

【SAと出玉スピード及び、その考え方のヒント】

1.変動とSPリーチを別に考える
SPリーチでは手を止めるユーザーが多いため、SP前変動とSP以降は切り離すことをおススメする。変動は通常変動だけではなく、リーチ煽りガセ等の各変動パターンにおける変動秒数と発生頻度を掛け合わせて1変動あたりの平均変動秒数を算出する。

これが一般的にメーカー発表のSA値であることが多い。ただし、BA値によっては、保留滞在比率が変化することにより、平均変動秒数ひいてはSA値が変化することがあるため注意が必要である。

2.SPリーチからアタッカーが開くまでの平均変動時間
各SPリーチの変動秒数、発生頻度割合を掛け合わせて図柄が確定するまでの平均SPリーチ変動秒数を算出する。そこから、アタッカーが開くまでのオープニング秒数を足すことによって、大当りが開始するまでの平均時間を算出が可能となる。

3.大当りまでの平均電サポ回数
確変ループタイプの場合は基本的には高確率の回数分となり、STタイプや時短、転落抽選タイプなどの場合は、それぞれに平均電サポ回数を算出する。例えば、平均電サポ回数80回、SA13の場合、約6.15分すなわち、6分10秒で大当りに到達と計算ができる。

また、BA90の場合、平均61.5発の玉減りとなり、大当り間での上皿における玉は消滅しないが、ST200回を駆け抜けた場合、平均153.8発の玉減りが想定されるため、ユーザーの心象が悪くなる可能性があるため注意が必要。といった想定を事前にすることが可能である。

【適正数値、スペック性能分析とは?】
SAが30であれば早く、29であれば遅いのであろうか。それとも25までは早い印象で24から遅い印象なのであろうか。それはあくまでも数値による印象論である。そのため、その数値単体ではあまり意味を持たない。

これはSAだけの話ではなく、何を知りたいのか?ということからその意図に近しい数値でなくロジカルに全ての要素を抽出し分析する。出玉スピードであれば、大当り終了後から次回大当りまでの平均時間を上記のように算出する必要があるわけでSAだけで語られるべきものではない。

数字を全ての機械を横並びで比較することにより、中央値から上下15%~20%の幅であればある程度の差こそあれ普通なイメージであり、そこから大幅に乖離するようであれば、ユーザーの心象を動かすレベルの差があると理解すべきであろう。

■プロフィール
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。

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