●ぱちんこ開発者の独り言60
前回までのコラムで書いた通り、多種多様なゲーム演出は多種多様なスペック設計があってこそ可能となるが、逆もしかりで、スペック設計からゲーム演出を考えることも間々ある。
【コラム】継続率65%規制撤廃(前編)/ぱちんこ開発者の独り言
【コラム】継続率65%規制撤廃(中編)/ぱちんこ開発者の独り言
【コラム】継続率65%規制撤廃(後編)/ぱちんこ開発者の独り言
例えば、継続率65%規制が撤廃されたことにより、確変継続率を自由に設定できるようになった(MNRS等、その他の要因はある)が、1回あたりの大当り出玉(T1Y)は最大1,500個までと従来の2,400個に比べておおよそ2/3になったため、「小T1Y×高継続率」のスペックを思いついた場合、4号機の北斗の拳のようなゲーム演出にしよう(したい)と考える開発者も存在するであろう。
一方で、新たに規則が設けられた場合や緩和された場合、開発者としては、その規則(ルール)の中で、実現が不可能なスペックを現代風に再現しようと考えるスペック設計者は少なくない。
今回の規則改正でいえば、T1Yが2,400個から1,500個というように、1回の大当りで獲得できる最大出玉が900個も差が出てしまっているため、この溝を埋めるべく、別のアプローチから1回の大当りを契機とし、出玉を旧基準機のように2,400個まで獲得できるような動きを目指すことも多い。不可能なことを別の方法で可能にする方法である。
例えば、初回10R大当り後に必ず小当りRUSHに突入するタイプの場合、1,500個獲得+αの出玉が期待でき、小当りRUSHの平均獲得出玉を900個にすれば、単純計算、1回の大当りを契機とし、出玉が2,400個獲得することが可能となる。この場合、ループタイプであれば大当り終了後1回転で次回大当りをしてしまう可能性があるが、ST機タイプで小当りRUSHの場合、次回大当りをせずとも、ST終了までに900個を超える出玉が払い出される場合、必ず1回の大当りを契機として、2,400個の出玉を保証するようなスペック構築も可能であろう。
ST100回 1回小当り=出玉10個の場合、ST100回終了時点で、出玉1,000個獲得可能
⇒10R(出玉1,500個)+ST100回(出玉1,000個) = 2,500個
小当りRUSHは、機械内部的には「高確率時短なし」状態のため、大当り図柄によって、高確率時短あり(通常の確変)と高確率時短なし(小当りRUSH)とに分けることが可能であるため、これらを応用してやれば、下記のような性能を持つ遊技機も可能である。
・3、7図柄大当り … 10R(1,500個)+小当りRUSH100回(出玉1,000個)
・1、5、9図柄大当り … 10R(1,500個)+(通常の)ST100回
・2、4、6、8図柄大当り … 5R(750個)+(通常の)ST100回
このようなスペックの場合、「3」「7」図柄で大当りした後、仮に1回転目で「2」図柄で大当りしたとしても、1,500個+750個の2,250個の出玉が保証されるわけである。作り方によっては、一度、「3」「7」図柄で大当りした後は、次回以降必ず小当りRUSH確定というスペックを作ろうと思えば作ることも可能である(その場合は、2,250個+小当りRUSH確定となる)。
1回の大当りを契機とした出玉1,500個の壁を越えてくる方法は、小当りRUSH以外にも、セットタイプでも可能である。今できる規則や新しい概念の組み合わせで、旧基準スペックを再現することも可能であるため、こんなスペックが打ちたい、あのスペックを再現してほしいなどの要望は開発者にとってはスペック設計、ひいてはゲーム演出のヒントになるのは間違いないので、要望があればホール関係者及びユーザーは、積極的に発信していただきたい。それが開発者の活力にもなるのだ。
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。