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【コラム】新仕様の実現にまつわる話(後編)

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ぱちんこ開発者の独り言㊸
2005年11月にサミーから発売された「CRチョロQターボ」であるが、初当たり確率は1/99.1と今でいう甘スペックと呼ばれる数値であるが、最も有利な状態(ハネモノチャンス)への突入率が約9%と極端に低くしているおかげで、一度ハネモノチャンスへ突入すれば、約7,000個が期待できるというスペックであった。

通常時の3、7図柄大当りでハネモノチャンスへ突入。ハネモノチャンス時は、時短100回の内に役物内のVに入賞させることができれば大当り+ハネモノチャンス継続という斬新なスペックであった。2004年7月に規則改正があり、当時の1種2種3種という区分が撤廃された後にリリースされた今でいう1種+2種スペックであったのだが、当時はまだ全く知られていなかったため、「フィーバー機だけどハネモノを併せ持つ」という意味合いだったのであろう。

この「CRチョロQターボ」は、その出玉性能にも関わらず、甘スペックで導入台数も少なかったため、あまり話題にならなかったが、サミーがこの経験を活かし、2007年3月に「CRアラジンディスティニー」を発売した。確率は1/193.9で、アラジンチャンス突入率は1/3とALL15R(1755個の払い出し)、継続率は役物次第ではあるものの約75%ともいわれていた。

当時、サミーの力の入れようは凄く、全国7店舗(記憶が曖昧ではあるが)に1BOXでテスト導入を行い、サミーから派遣された遊び方ガイドと称される方がBOX内のユーザーに対し、打ち方指南を行うなど、新しいスペックの普及に努めていた。しかしながら、「CRアラジンディスティニー」も、1種で大当りした後は時短が終了するまでに、役物内のVに玉を入賞させれば大当り+アラジンチャンス継続といった「ハネモノ要素」が強かったこと等あり、大きくシェアが広がることは無かった。

しかし、2008年11月にサンセイアールアンドディから販売された「CR牙狼XX」で市場は一変する。「CR牙狼」は、それまでに発売されたチョロQターボやアラジンディスティニーのように「時短が終了するまでにV入賞させる」遊技性とは違い、「時短突入(魔戒チャンス)=(ほぼ)大当りが約束されている」という遊技性に変更した点である。

チョロQターボ、アラジンディスティニー … 時短突入率100% V入賞率:約75%~90%
牙狼 … 時短突入率82% V入賞率:約100%

コロンブスの卵的な発想で、(当時)1種2種で実現できた出玉性能を保持したまま、遊技性の簡略化に成功したわけである。

「CR牙狼」は、通常時からの初当たりの50%で魔戒チャンス(時短)へ突入し、82%で魔戒チャンス(時短)が継続するという「継続率と突入率」を変えて出玉性能を高めるという手法を取ったわけであるが、1種2種で出玉性能を高めるのは内規で大幅に規制されたため、これを別の方法で実現しようと考え出されたのが、豊丸の「CRウイッチブレイド」である。

他方で、1種2種のウイークポイントは、「入賞すれば大当りになる特定領域」(通称、V大当り)を保持している場合、その役物確率は1/10以下でならないと規則で定められている。これがあるが故、今までの1種2種スペックは、時短中に何度も何度もハネを解放させ、役物内に遊技球を数多く入賞させていたのであるが、大一の「CR T.M.Revolution」は、アタッカーの上に遊技球が乗っている状態で、1回の小当りを複数回ショート開放させることにより、1回の小当りで10個の遊技球を確実に入賞させることに成功させた。

この概念は、1種2種の更なる遊技性を簡略化することに成功したため、メーカー各社が同様の仕様を用いて、1種2種の開発を推し進めた結果、今があるといえる。

新しいゲーム性やスペックは、煩雑な遊技性になることが多いため、特に年配のユーザーなどに敬遠される傾向がある。その煩雑な遊技性を如何に簡略化するか、ということが開発者に求められることであるのだが、規則的にがんじがらめで思うようにいかないことも多い。そのため、他社が上手く適合させた機能を活用し、昇華させることも遊技機開発の重要な一つの要素なのである。

■プロフィール
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。

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