●ぱちんこ開発者の独り言㊷
前回コラムの繰り返しとなるが、ここ数年における遊技機スペックの幅が大きく広がったのは、豊丸産業から発売された「CRウイッチブレイド」のおかげであるのは間違いない。そもそも、遊技機スペックに関して昔から、各メーカー開発者において共通の悩みであった「突入率と継続率に違いを出す」を最もスマートな方法で実現したからである。
なぜ突入率と継続率に違いを出すのかというと、出玉に偏りを持たせるためである。初当たりから時短終了までに獲得した総出玉をTYと呼ぶが、大当り1回のみで通常に戻った場合も、大当りが10回継続した後、通常に戻った場合も全て均等にし、TYとして算出される。初当たりの確率とTYは相関関係にあり、大当り確率が決まれば、おのずとTYの数値は限定される。具体的な事例で見ると、このようになる。
<大当り確率 1/300の場合>
・S=5.5 B=30 TY=約3,800
基本的には、この辺りの数字になるはずである。これを前提条件として、突入率と継続率を極端に変えてみる。
<突入率50%、継続率50%の場合>
・最も有利な状態への突入率50% → 継続率50% → 連荘率(TK):2回
初当たり含め、大当り3回
・非突入率50% … 初当たり1回
すなわち、1回のT1YをXと仮定すると、3X(エックス)×50%+X(エックス)×50%=3,800
よって、T1Y(=エックス)は1,900個となるため、最も有利な状態へ突入した時のTYは5,700個となる。
<突入率80%、継続率80%の場合>
・最も有利な状態への突入率80% → 継続率80% → 連荘率(TK):5回
初当たり含め、大当り6回
・非突入率20% … 初当たり1回
すなわち、1回のT1YをYと仮定すると、6Y×80%+Y×20%=3,800
よって、T1Yは760個となるため、最も有利な状態へ突入した時のTYは4,560個となる。
<突入率50%、継続率80%の場合>
・最も有利な状態への突入率50% → 継続率80% → 連荘率(TK):5回
初当たり含め、大当り6回
・非突入率50% … 初当たり1回
すなわち、1回のT1YをZと仮定すると、6Z×50%+Z×50%=3,800
よって、T1Yは約1,086個となるため、最も有利な状態へ突入した時のTYは約6,516個となる。
突入率50%、継続率50%の場合 … 最も有利な状態へ突入した時のTYは5,700個
突入率80%、継続率80%の場合 … 最も有利な状態へ突入した時のTYは4,560個
突入率50%、継続率80%の場合 … 最も有利な状態へ突入した時のTYは約6,516個
見てわかるとおり、突入率を絞り継続率を高めてやると、偏った出玉を出しやすくなるが、3つ共にTYで見れば3,800である。
このように、同一のTYにおいても、ユーザーにおける体感出玉は大きく変わるため、各メーカーは突入率と継続率に差を設けるスペックをいつの時代も目指すわけであるが、この突入率と継続率を変化させる先駆けとなった機種は、サミーの「CRチョロQターボ」であろう。
次回コラムでは、このチョロQターボから現在に繋がる話ができればと思う。
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。