●ぱちんこ開発者の独り言㉞
5月21日に経済産業省のHPにおけるミニ経済分析において、非常に興味深い内容が掲載された。そのテーマとは「し好的個人向けサービスの低迷の背景にある「趣味・娯楽」行動の変化について」という内容であり、その中心的な位置づけとしてパチンコが取り上げられていた。
詳細に関してはリンク先の内容を熟読していただくとして、重要なポイントは下記の通りである。
・年代別人口に占める、パチンコ(パチスロ)をする人の割合が最も高いのは20代で、年齢と共に低下する傾向がある。この傾向は過去25年間不変である。
・パチンコ(パチスロ)の主要な顧客である20代、30代で、パチンコ(パチスロ)をする人が減少していることが、サービス指数の「パチンコ」指数が低下している原因である。
・2016年調査時点の20代、30代の人口に占めるパチンコ(パチスロ)をする人の割合を、10年前のそれと比べると、20代で-40.7%、30代で-37.6%と大幅に下落している。
・20代、30代の比較的若い世代の人達がパチンコ(パチスロ)をしなくなった理由には、お金を使った趣味、娯楽の人気が低下しているというだけでなく、いわゆる出玉規制といった外部環境の変化の影響があるかもしれない。
(参照:経済産業省 し好的個人向けサービスの低迷の背景にある「趣味・娯楽」行動の変化について)
経済産業省調査統計グループ経済解析室によると、パチンコ(パチスロ)をする割合が最も高いのは20代と断言している。また、調査資料を読むと、高年齢層(60代以上)においてはむしろ、昔よりパチンコ(パチスロ)をやる人が増えているという調査結果まで記載されている。
一方で、若年層(20代、30代)のパチンコ(パチスロ)離れの原因の理由としては、お金を使った趣味・娯楽の人気が低下しつつも、出玉規制といった外部環境の変化の影響があるかもしれない、という曖昧な結論となっている。お金をつかった趣味・娯楽の人気が低下しているのであれば、スマホアプリ内課金は当然のこと、競馬やボートレースなどの公営ギャンブルが復調傾向にあるため、理由にはならないと思われる。
参考:JRA売得金額・入場人数
公営ギャンブルの売上好調の原因は、インターネット投票が要因であるという意見が大勢ではあるが、それに付随するサービスの拡充や、ライトユーザー・休眠ユーザー向けの施策が成功していると私は考えている。
若者にお金がないという意見もあるが、総務省統計局による家計調査報告を見ても、パチンコ業界と同じ推移で可処分所得(個人が自由に使える所得)が減少しているわけではない。また、30歳未満の単身勤労者における可処分所得は、パチンコがピークの1995年よりも現在の方が多いため、単純にパチンコ自体が若者の興味対象から外れつつあるという見方が最もスマートであろう。
参考:若年層の消費実態(BLOGOS)
思えば、昨今の稼働データとして、若者向け版権における遊技機の非凡な成績が目立つことも、若年層が最もパチンコ(パチスロ)をする割合が多いというのも頷ける結果なのではないだろうか。当然のことながら、マクロ指標であるため、ホール単位のミクロ的な視点ではないのだが、業界人の思い込みともいえる「パチンコ=年配層が多い」という考えから脱却し、業界全体として若年層向けの施策について真剣に考える必要があるのではないだろうか。
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。