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【コラム】過渡期を迎える甘デジ/ぱちんこ開発者の独り言

投稿日:2017年11月6日 更新日:

コラム:ぱちんこ開発者の独り言⑥

●過渡期を迎える甘デジ
ここ最近のホールデータを見ると、大当り確率1/100以上をレンジとしたスペック帯である、通称「甘デジ」の稼働データがあまり芳しくない。ホールデータの推移から推測するに、ヘソ賞球数が3個から4個になった段階から徐々にデータが悪くなってきた傾向があるため、ホール関係者からは「ベースが上がったために、甘デジでは満足できなくなったのではないか」という意見が散見されるようになった。

今回はそれをスペック設計値から考察してみたい。同一条件(確率1/99、スタート5.5)にて検証を行う。

【3個賞球の場合】
この時代の一般的な数値としてBY=2と仮定し、前提条件スタート5.5とした場合における大当りまでに必要な玉数は下記のように計算できる。

ベース(100個打ち込んだ際に戻ってくる玉数)= 3×5.5+2 = 18.5

スタート5.5回に対して、100-18.5=81.5個必要となる。よって99/5.5×81.5=1467個、大当りまでに平均的に必要となる。

【4個賞球の場合】
この時代における一般的な数値としてベース30と仮定し、前提条件スタート5.5とした場合における大当りまでに必要な玉数は下記のように計算できる。

ベース=30

スタート5.5回に対して、100-30=70個必要となる。よって99/5.5×70=1260個、大当りまでに平均的に必要となる。

3個賞球の甘デジ:1467個必要

4個賞球の甘デジ:1260個必要

この際に、大当りまでに平均的に必要な玉数をそのままユーザーにお返しすると、10割営業になる。(Bサ=TY)すなわち、ユーザーが投資した金額から、幾分かホール側は利益を頂戴しなければならないため、ユーザーに獲得できる1回の大当りにおける平均的な出玉は上記よりも少なくなるわけだ。

3個賞球の平均的な甘デジの場合は、多少玉数が少なくなっても1250個(すなわち5000円)を割り込まないのに対し、4個賞球の方はユーザーとホール側がトントンで1250個ギリギリという数値なのである。

更に、甘デジタイプでよくある集中突入型(最も有利な状態に突入する確率は低いが、いざ突入したら大きな出玉が期待できるタイプ)でも検証してみる。最も有利な状態に突入する確率が50%で、単発終了(出玉を400個と仮定)が50%という台で計算する。

【3個賞球の場合】
単発:400個 有利状態突入時:2534個 (平均的な出玉=1467個)

【4個賞球の場合】
単発:400個 有利状態突入時:2120個 (平均的な出玉=1260個)

上記の数字はあくまでも一例ではあるが、出玉性能でいえば、おおよそ16%以上のダウンになる。しかしながら、1000円スタート値で比較した場合は、

3個賞球:約16.9回

4個賞球:約19.6回

となる。一概に断定はできないのだが、スタート回転数と出玉性能がトレードオフできていない結果、甘デジユーザーが離反しているというのは否定できない。また、スペック設計者としても、同じ確率であるにも関わらず、出玉性能を下げなければならないというのは、魅力あるスペック構築が難しくなることが多く、それであればいっそ、確率自体を見直すというのは往々にしてある。

また、現行の市場データが比較的好調で、ホール側も売り上げが甘デジより立ちやすいライトミドルタイプの需要が日に日に上がっているということを、営業部を通じて開発部に届くため、開発側も甘デジではなくライトミドルに注力していくといったこともあり、甘デジは過渡期を迎えているといっても過言ではない。

ここで重要なのは、上記、数値的な考察が正しいか正しくないかは別にして、市場のデータとして甘デジが徐々に減少していっているという事実がある以上、あえてその流れにホール・メーカーが乗るのか、それとも、あえて逆張りを行い新しい提案をホール・メーカーが選択するのかが重要なわけで、最も愚策なのは、上記内容を一切考察せずに、大局的なデータに流されることである。

■プロフィール
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、開発だけではなくホール向け勉強会や講演会など多数開催。

 

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