全日遊連全国理事会で警察庁の小堀課長が講話


全日遊連は1月17日、第一ホテル東京(東京都港区)において全国理事会を開催。その席上、警察庁生活安全局保安課の小堀龍一郎課長が行政講話を行った。

小堀課長は、業界の健全化を推進する上で特に留意すべき点として「ぱちんこへの依存防止対策」「射幸性の抑制に向けた取組」「遊技機の不正改造事犯等の絶無」「遊技機の流通における業務の健全化」「ぱちんこ営業の賞品に関する問題」「広告・宣伝等の健全化の徹底」を挙げ、それぞれについて見解を述べた。

以下に、その全文を掲載する。

--講話内容--

ただいま御紹介にあずかりました警察庁保安課長の小堀でございます。

本日、着任いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

皆様方には、平素から警察行政の各般にわたりまして、深い御理解と御協力を賜っているところであり、この場をお借りして御礼申し上げます。

ぱちんこ業界の皆様方におかれましては、東日本大震災や熊本地震の発生以来、継続して取り組まれている復興支援活動をはじめ、昨年は台風15号や19号等の被災地支援活動に取り組まれたと承知しています。加えて、低炭素社会実行計画に基づく節電・省エネルギー対策等の社会貢献活動にも積極的に取り組まれていることに対しましても、改めて敬意を表する次第であり、継続した取組をお願いします。

さて、ぱちんこは、我が国の代表的な娯楽として親しまれておりますが、依然として、ぱちんこへの依存問題のほか、遊技機の不正改造事犯、賞品買取事犯、違法な広告宣伝等が後を絶たず、健全化を阻害する要因がいまだ多く存在することも事実であり、また、各事業者による法令遵守の徹底が強く求められているといえます。

貴連合会を始め、業界の皆様におかれましては、業界が置かれている厳しい現状について危機意識を共有していただき、適切かつ着実に取組を進めていただきたいと思います。

さて、本日はこのような場をいただきましたので、業界の健全化を推進する上で特に必要であると考えていることについて、何点かお話をさせていただきます。

最初に、ぱちんこへの依存防止対策についてお話しします。

まず、昨年4月に閣議決定された基本計画においては、ぱちんこ業界が、ぱちんこへの依存防止対策に係る実施規程として「要綱」を制定・公表するとされているところ、昨年12月に「パチンコ依存問題対策基本要綱」及び「パチンコ・パチスロ産業依存問題対策要綱」が制定・公表されたものと承知しております。貴連合会はこれらの要綱の取りまとめに尽力されたものとも承知しておりますが、引き続き、これらの要綱を実施するために必要な実施規程の整備に取り組んでいただきたいと思います。

この点、広告・宣伝については、基本計画において、ぱちんこ業界が、ぱちんこへの依存問題の発生の抑止に資するものとなるよう、本年度中に全国的な指針を策定し公表することとされています。加えて、同指針には、注意喚起標語の一定の大きさや時間の確保等を盛り込むことを検討することとされているところ、広告・宣伝は、国民の目に広く触れる性質のものであるからこそ、その広告・宣伝に係る依存防止対策が適切にとられているかという点については、とりわけ注目されやすいものであると思います。したがいまして、その点を十分認識していただき、取組に遺漏のないようにお願いします。

また、18歳未満の者の営業所への立ち入らせについても、基本計画に基づき、本年度中に、18歳未満の可能性があると認められる者に対し身分証明書による年齢確認を原則として実施する方法について実施規程として策定・公表することとされているところです。昨年、貴連合会が組合員に対して実施された「依存対策実施状況調査」においては、18歳未満の可能性がある者に対する身分証明書による年齢確認について既に99%以上の店舗で実施しているという結果であったと承知しているところ、改めて、取組に遺漏のないようにお願いします。

次に、自己申告・家族申告プログラムについては、昨年12月末現在で約3,600店舗が導入していると承知しております。しかしながら、同プログラムの実効性を担保するためには、導入店舗数をより一層拡大することが重要です。既に一部のホール経営企業においては、全店舗へ同プログラムを導入するなど、導入店舗数拡大の動きは進んできているものと承知しておりますが、同プログラムの導入の有無が各営業所における依存防止対策への取組姿勢を判断するメルクマールの一つとなり得ることを認識し、貴連合会におかれましては、同プログラムの更なる普及を図っていただきたいと思います。加えて、本年度中に開始することとされている、本人の同意のない家族申告による入店制限の導入及び自己申告・家族申告プログラムの導入店舗のウェブサイトへの掲載についても、確実な実施をお願いいたします。なお、本プログラムの運用に当たり、申告対象者の把握を容易にする取組として、顔認証システムの活用に係るモデル事業を行っていただいている大手ホール経営企業もあるものと承知しており、高く評価したいと思います。こうした先進的な取組についても他の事業者に広がることを期待しています。

次に、営業所のATM等の撤去等についてです。ATM及びデビットカードシステムについては、基本計画において、ぱちんこ業界が、本年度中に、その撤去等に向けた検討に着手し、その結果に基づき順次、撤去等を推進することとなっています。基本法により設置されたギャンブル等依存症対策推進関係者会議では、複数の委員からATMに対して厳しい意見が出されているところ、こうした議論を踏まえ、同会議等において賛同が得られるかという視点にも考慮した上で、業界として基本計画に基づく取組を推進するようお願いします。この点、先日、日本遊技関連事業協会の会員である複数のホール経営企業が、現在営業所に設置しているATMについて順次撤去していくこととしたと承知しておりますが、他の事業者や事業者団体に先んじて取組を進められることを高く評価したいと思います。貴連合会におかれましても、業界内でのこうした動きを十分に踏まえ、着実に取組を推進されることを期待しております。

次に、出玉規制を強化した遊技機の普及については、令和3年春までに、全ての遊技機を新規則に適合するものに入れ替える必要があるところ、本年の後半には新規則機に対する需要が相当な量となり、供給が追いつかないことも懸念されることから、引き続き、計画的に旧規則機の撤去等を進めていただきますよう、よろしくお願いします。

さて、今申し上げたようなギャンブル等依存症対策の実効性を最大限に確保するためには、徹底したPDCAサイクルにより計画的な取組を推進することが重要であるとされております。そこで、今般新たに行われる一般社団法人遊技産業健全化推進機構による依存防止対策の実施状況調査等を通じて、各ぱちんこ営業所における取組の実施状況について、PDCAサイクルの中で的確に把握し、適宜改善を促進してもらいたいと思います。

また、基本計画には、警察が行うべき取組も記載されており、各都道府県警察においては、ぱちんこ営業所に対する立入り等を通じて、依存防止対策に係る措置が適切にとられているかの確認を随時行うこととしておりますので、御承知おきください。

さらに、基本法においては、毎年5月14日から同月20日までをギャンブル等依存症問題啓発週間と位置づけているところ、昨年は初日の5月14日に「パチンコ・パチスロ依存問題フォーラム」が開催され、多くの方が参加されたと承知しています。本年以降も引き続き、ギャンブル等依存症問題に関する関心と理解を深めるという啓発週間の趣旨にふさわしい取組がなされることを期待しています。また、個別のホール企業の取組として、依存による問題の予防と拡大防止に向けたセミナーを地域の自治体の保健福祉部局等とともに継続開催しているといった事例を把握しているところ、今後の普及啓発に係る取組として参考にしていただきたいと思います。

そのほか、自助グループをはじめとする民間団体等に対する経済的支援については、昨年11月、貴連合会を中心に新たに「パチンコ・パチスロ社会貢献機構」を設立されたものと承知しておりますところ、引き続き、ぱちんこへの依存問題の予防と解決に取り組む団体等に対する積極的な支援をお願いいたします。

以上、ぱちんこへの依存問題への対策についてお話ししてきましたが、この依存問題については、国会や報道等においても大きく取り上げられており、皆様の業界としての取組が注目されています。昨年9月19日付けで、貴連合会を始めとする各ホール関係団体に対し、基本計画に掲げられた各施策に係る先進的な取組について、随時報告していただくことをお願いしたところです。昨日も、先ほど申し上げた各種依存防止対策に関する取組について報告を受けたところでありますが、警察庁としてもこうした取組については引き続き積極的に紹介していきたいと考えておりますので、各営業所や各事業者団体における創意工夫ある率先した取組に期待しています。

次に、射幸性の抑制に向けた取組についてお話しします。

射幸性の抑制に向けた取組として、業界を挙げて、新基準に該当しない遊技機の撤去に努めていると承知しております。そのうち、「特に高い射幸性を有すると区分した回胴式遊技機」については、昨年から延期されていた各営業所における設置比率を15%以下とする削減目標について、その期限を本年1月31日までとし、また、元々本年1月31日までに各営業所における設置比率を5%以下とするとしていた目標については延期する決議をされたと承知しております。一方で、業界の一部では、当初の目標達成に向けて会員企業に対し積極的に周知を徹底する取組もなされていたと承知しております。ぱちんこへの依存問題等により、ぱちんこ業界に対し、国民から厳しい視線が向けられていることをよく認識した上で、依存防止対策と同様に、各営業所、そして各事業者団体が率先して積極的な取組を進められることを期待しています。

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