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『遊技日本』

依存問題対策が最優先課題/警察庁保安課・小柳課長講話(全文)

投稿日:2017年6月23日 更新日:

最初に、ぱちんこへの依存問題対策についてお話しします。

ぱちんこへの依存問題については、昨年末に成立したIR推進法の審議において重大な問題として指摘されたほか、同法の附帯決議においてぱちんこ等を含めたギャンブル等依存症への対策強化について言及されました。また、本年3月末にギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議において決定された論点整理において、ぱちんこへの依存問題についての課題が記載されています。

論点整理において記載された課題としては、

・リカバリーサポート・ネットワークの相談体制の強化及び機能拡充

・18歳未満の者の営業所への立入禁止の徹底

・本人・家族申告によるアクセス制限の仕組みの拡充・普及

・出玉規制の基準等の見直し

・出玉情報等を容易に監視できる遊技機の開発・導入

・営業所の管理者の業務として依存症対策を義務付け

・業界の取組について評価・提言を行う第三者機関の設置

・ぱちんこ営業所における更なる依存症対策

があり、警察としても、これらの課題に的確に対応するため必要な対策を進める必要があると考えているところ、業界においても、これらの課題への対応を確実かつスピード感を持って実施していただく必要があります。

ここで、いくつかの課題について御説明します。

リカバリーサポート・ネットワークについては、平成18年4月に設立され、現在までに2万件を超える電話相談に対応しており、ぱちんこへの依存問題の解決に向けた糸口となるべく、必要に応じて、適切に医療機関、精神保健福祉センター、相互援助グループ等を紹介するなど、重要な役割を果たしていると認識しています。ぱちんこ営業所では、広報ポスターを掲示するなど広報啓発活動を実施しているほか、全国遊技機商業協同組合連合会ではリカバリーサポート・ネットワーク支援室を立ち上げ、相談業務の負担軽減に寄与するなど、業界を挙げた取組を進めていると承知していますが、リカバリーサポート・ネットワークの相談者に対して、今後よりきめ細かな対応を行うため、相談体制を更に充実させる必要があります。加えて、ぱちんこへの依存問題を抱える人の家族に対して、リカバリーサポート・ネットワークにおいて相談を受け付けていることについての情報発信を強化し、家族からの相談をより多く受けられるようにするなど、その機能を拡充させる必要があります。

続いて、貴協会が中心となって進めている自己申告プログラムは、遊技客が1日の使用上限金額を自ら申告し、設定金額に達した場合、翌来店日にぱちんこ営業所の従業員が当該遊技客に警告する仕組みであり、ぱちんこへの依存防止対策に有効な取組であると考えております。しかし、同プログラムは、家族からの申告を受け付けていないことに加え、導入している店舗は少なく、普及しているとは言い難い状況であることから、家族からの申告を受け付けるなど、自己申告プログラムを拡充した上で、普及を図る必要があります。

また、「ぱちんこ営業所における更なる依存症対策」については、ぱちんこ営業所における依存防止対策の専門員として「安心パチンコ・パチスロアドバイザー」制度を立ち上げ、既に講習会を開催するなど積極的に取り組んでいただいていますが、今後、更に取組を進めていく必要があると考えています。また、こうした業界の取組について評価・提言を行う第三者機関の設置も求められています。

加えて、今回の論点整理には記載されていませんが、児童の車内放置事案防止対策についても、引き続き取組を進めていただく必要があります。業界では、毎年5月から10月にかけての期間及び年末年始を「子ども事故防止強化期間」として広報啓発を行い、「子どもの車内放置防止対策マニュアル」等に基づいて対策が進められているものと承知しております。

積極的な取組の甲斐もあり、近年は児童の車内放置による死亡事件は認められなかったところでありますが、本年5月、山口県で生後2ヶ月の乳児が死亡する誠に痛ましい事件が発生しました。また、本件の発生に加え、車内放置事案防止対策により、例年数十件もの児童の発見事案が続いていることからも、いまだ予断を許さない状況が続いているものと考えられます。

皆様におかれては、今一度、対策が形骸化していないか改めて確認していただき、この対策の趣旨を徹底の上、積極的な防止活動を改めてお願いしたいと思います。また、必要に応じて、新たな対策を検討するなど、今後も更なる実効性のある取組をお願いします。

以上、ぱちんこへの依存問題への対策についてお話ししてきました。ぱちんこへの依存問題は、ぱちんこ遊技の負の側面と言われることもありますが、この負の側面から目を背けることなく、問題解決に積極的に取り組むことが業界の社会的責任であることを強く認識していただき、業界全体で真摯に対応していただきたいと思います。

こうした取組の積み重ねが、ぱちんこへの依存問題の解決に寄与し、国民の理解を得るものとなることを期待しております。

次に、射幸性の抑制に向けた取組についてです。

ぱちんこ産業の現状について申し上げますと、公益財団法人日本生産性本部の「レジャー白書2016」によれば、平成27年中の市場規模は23兆2,000億円、遊技への参加人口は1,070万人であると承知しています。前年と比較すると、市場規模では1兆3,000億円で5.2%の減少、参加人口に関しては80万人で7.0%の減少となっています。一方、年間の平均遊技回数は32.4回で前年から9.6回の増加、年間の平均費用は9万9,800円で1万4,600円の増加となっています。参加人口の縮小幅と比較して市場規模の縮小幅が小さいこと、年間の平均遊技回数や平均費用が増加していること等から、いわゆるヘビーユーザーへの依存度が増加しているものと推察され、ぱちんこへの依存問題への影響が強く懸念されるところです。

業界の皆様におかれましては、このようなヘビーユーザーに偏った、いわば高い射幸性に頼った営業が、果たして、ぱちんこへの依存問題を抱える方を家族に持つ方々を始めとして、ぱちんこへの依存問題に厳しい視線を向ける国民の理解が得られるものかどうか、改めて考えていただきたいと思います。ぱちんこ営業が「射幸心をそそるおそれのある営業」である限り、射幸性の抑制は、健全な営業であるための不可欠な条件であるにもかかわらず、今の営業実態と、ぱちんこに対する国民感覚とは大きく乖離しているのではないかと危惧しています。

射幸性の抑制に向けた業界の取組として、製造業者団体が新たな遊技機基準を設け、平成27年6月、全日遊連は、新基準に該当しない遊技機の設置比率に目標値を定め、こうした遊技機の撤去に努めているところであると承知しています。

昨年12月1日を期限に定められていた削減目標値については、営業所全体としては、その目標を達成したとのことですが、営業所別に見た場合、目標を達成できていない営業所が多数あったほか、回胴式遊技機に関しては、「メーカー団体が特に高い射幸性を有すると区分した遊技機については、ホールはこれを優先的に撤去する」とした6団体合意のとおりには、必ずしもなっていないという話も聞いており、こうした点について非常に残念に感じています。

ぱちんこへの依存防止対策が喫緊の課題となっている現状において、業界が自主的に実施を決めた新基準に該当しない遊技機の設置比率の目標値を達成できていない営業所がいまだ存在していること、また、「特に高い射幸性を有すると区分した遊技機」の撤去が進んでいないことは大きな問題であると考えています。

ぱちんこへの依存問題等により、ぱちんこ業界に対し、国民から厳しい視線が向けられる中、業界が自主的に実施すると決めたことが実施できないという状況では、ぱちんこが国民の大衆娯楽として受け入れられることは難しいと思います。業界における真摯な取組を期待しています。

製造業者団体では、6団体合意にとどまらず、大当たり継続率や傾斜値に関する新たな基準を設けるなど、更なる射幸性の抑制策を引き続き推進しているところであり、市場に出回る遊技機の射幸性が段階的に引き下げられていくことが期待されているところでありますが、遊技客に最も近い存在であるぱちんこ営業者が、ぱちんこ遊技が抱える問題に対処するといった観点からの要望・意見を、製造業者側に積極的に提案していただくことも効果的ではないかと考えております。

業界では、射幸性を抑え、遊技客が気軽に遊べる遊技機として「ちょいパチ」を導入し、普及に努めていると伺っています。

貴協会を始め業界が一丸となって、このような射幸性を抑制するための様々な取組を、引き続き早急かつ着実に進めていただきたいと思います。

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