コラム:ぱちんこ開発者の独り言①
●今、メーカーが最も気にする問題とは…
平成30年2月1日に規則改正がある。目下、新機種の開発に勤しんでいると思いきや、各メーカーが今一番気を揉んでいる問題が保通協の予約状況だ。
メーカーがどれほど心血を注ぎ、最高のスペックに最適な演出バランスを搭載した台を開発できたとしても、保通協の型式試験に適合しなければ話にならない。
保安通信協会、通称“保通協”は、都道府県警公安委員会の委託を受けて遊技機の「型式試験」を請け負っており、保通協で適合を受けた遊技機であっても各都道府県警の公安委員会より許可をもらわないとホールに設置することは不可能ではある。しかし、基本的には保通協で適合を受けた遊技機を、適正に申請さえすれば、ほぼ許可が下りる(4号機時代に山梨県で秘宝伝の許可が下りなかったことなど、極僅かではあるが過去例はある)。
現行規則で作られた遊技機は、平成30年1月31日までしか保通協に持ち込むことができず、それ以降は、新規則に適応した遊技機を持ち込まなければならない。
一般的に、規則改正といえば出玉の制限ばかりが取り上げられているが、規則改正があった際には、「技術上の規格」の解釈基準等も変更になるのが一般的である。当然のことながら、新しい解釈基準に対応していなければ保通協に持ち込むことすら不可能だ。そのため、現行規則のものを修正し、新規則に対応して持ち込むということがおいそれとはできないのである。
ぱちんこ、スロットともに、多くのメーカーが現行規則での完成品を複数機種ストックしている状況だと聞いている。試験期間は最低でも1ヵ月ほどかかるため、同一機種で似たようなスペックを予約していくのが一般的だ。
特にメーカーの主力機種ともなれば、スペック的にも試験のギリギリを攻めたいところではあるので、数多くの機種を保通協に持ち込むことになる。そのような状況が今年の夏手前ぐらいからずっと続いている。
保通協の型式試験等実施状況の発表時に、「結果書交付」というワードがある。これは、適合・不適合にかかわらず、結果を告知した場合に発行されるものが結果書である。そのため、メーカーが10機種持ち込んで、1機種目にまさかの適合が来た場合、残り9機種の試験を取り下げた場合には、その結果書が交付されないことになるので、実際に申請された機種数は多くなる。
某機種は、ずっと2,400発搭載だと噂で流れていたが、蓋を開けてみれば最大出玉は2,000発だった。型式試験にかなり苦戦しているとの話が流れていたので、現行規則で販売できない最悪のリスクを避けるために試験に適合しやすいスペックに修正したのではないか、と邪推してしまうほど、現在、全メーカーは保通協の予約状況、試験結果に対して神経質になっている。つまり今はまだ、新規則機の開発に本腰を入れることができない状況なのである。
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイトを設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、開発だけではなくホール向け勉強会や講演会など多数開催。