2026年11月以降に導入される「ぱちんこ遊技機」について、その性能が大きく変わると話題になっている。またこの件に関連し、SNSやネット動画をはじめ業界内においても「通常時フラグ」という言葉が各所で聞かれるようになったが、それがどういったものか不確かな状況下において「パチスロのツラヌキがパチンコでも?」といった真偽の定かではない、また今回の改革の本筋から外れた話題が聞かれることも増えた。そこで今回は、この「11月納品以降のぱちんこ遊技機」について、まずはその概要についてのみ解説したい。
1.2026年11月以降に導入される「ぱちんこ遊技機」について
6月3日、都内千代田区のグランドアーク半蔵門で開催された日工組の第66回通常総会懇親会において、榎本善紀理事長は「パチンコは色々とゲーム性の緩和を行ってきたが、根本的にパチンコの仕組み自体が複雑になりすぎている面もあった」と話したうえで、「これまでの仕組みの組み合わせに加え“スタート安定装置”などの発明、今回の“設定”や“フラグ機”など新たに生まれるものを組み合わせ、これからは優しく楽しいパチンコにも取り組み新たにお届けすることで、ユーザーからなくしてしまった信頼を取り戻したい」と話した。
また、6月24日に都内千代田区のホテルニューオータニにて開催された、パチンコ・パチスロ産業に関わる11団体共催による合同祝賀会においても榎本理事長は「パチンコについては非常に厳しい状態が続いているが、年明けからこれまで、議連の先生方のお力添えもありいくつか緩和策をいただいた。一種タイプについては新たなゲーム性が一通りできるようになったと考えている。パチンコは、ルールだけ改善すれば現状が改善するという状況ではない。メーカーとして様々な発明や、今回いただいた新たなゲーム性を含めてパチンコユーザーの信用を取り戻し、パチスロにも負けないものにしていきたい」と話したうえで「パチンコは複雑で分かりにくくなっているので、新たに4カテゴリーに分けて、11月から心機一転出直すという意気込みで改革を進めている。二種タイプなどの役物系をはじめ優しく楽しい、多種多様なパチンコを新たに整備して発売し、元気なパチンコ業界と明るい未来に繋げたい」と話した。
これらについてまとめると、一つめは「分かりやすい4カテゴリー」へのジャンル分けだ。これは、今まで初当たり確率で「ちょいパチ」「甘デジ」「ライトミドル」「ミドル」というジャンル分けがメインだったが、LT機の登場で「初当たり確率」と「図柄揃い確率」が存在することで一見「1/349より辛く見える遊技機」も登場、また逆に「1/99~1/149程度の初当たりでありながら高射幸LT機」といった機種も多数登場したことで、ファンからは遊びやすい機種なのかチャレンジ系なのかが分かりにくくなっていたものについて、新たに分かりやすく4つのジャンルに分類するというものだ。
二つめは「多種多様なパチンコ」であり、これは一種タイプだけでなく二種タイプである「ハネモノ」や、役物系なども含め多様性のある遊技機を発売していくというもの。
三つめは「新たな遊技性の発明」だ。近年の「デカヘソ」から発展した「スタート安定装置」など、ファンの「回らない」というストレスを緩和するためのものをはじめ、新たなゲーム性を生み出していく。
最後に四つめは「パチスロに負けないぱちんこ」だ。ご承知の通り、パチスロにはパチンコにない様々なゲーム性が実現されている。これまでも、例えばパチスロの天井に関しては「遊タイム」が認められ、またパチンコにも認められていた「設定」についても「ラウンド振り分け」や「ST回数」などを設定ごとに変更できる緩和がなされた。さらには「CZ(チャンスゾーン)」についても「微時短(電チューが拾わない時短中)」などの内容が緩和されたことにより、CZを搭載した新たな遊技性のパチンコが登場してきた。
この11月から大きく変わる点として注目されるのは、この「微時短」という時短中を利用したゲーム性の広がりに加え、さらに「通常時」にもバラエティ性を持たせることでゲーム性を飛躍的に広げる点が主な目的といえる。
2.ぱちんこ遊技機の「通常時フラグ」とは?
前述したように、今までも「微時短」という、時短中ではあるものの電チューの開放時間が短すぎて全く玉を拾わないため「左打ち」するしかない状態を利用することにより、「CZ(チャンスゾーン)」を搭載したぱちんこ遊技機は多数発売されてきた。古くは2022年に西陣(エース電研製)の「P刀使の巫女(とじのみこ)」が発売されて以降、藤商事「Pアレジンンプレミアム」などのCZ搭載機が発売。さらにLT3.0プラスの「プラス」部分の緩和により複数個の微時短状態を搭載できるようになってからは、豊丸産業「P【超甘LT】豊丸のとあるパチンコにしみけん参戦 感度UP1/39」などが発売された。
では今回、話題となっている「通常時フラグ」とは何か。簡単に言えば、これまでは「通常時」は唯一、たった1つのみで、それと違う状態を作るには「微時短①」「微時短②」「微時短③」などの状態へ移行する必要があった。ここが今回、新たに「通常時」を複数設けることが可能となる、というものだ。
例えばラムクリ時の状態を「通常時0」とすると、それ以外に「通常時1」~「通常時9」まで、最大10個の通常時状態を設けることができる。
では、それぞれの通常時状態で、どんな違いを設けることができるのか。一つは、その通常時状態で大当たりを引いた時に「大当たり後の時短回数の性能」を変更することができる。例えば「通常時1」では「222」で大当たりした後は時短0回だが、「通常時3」では「222」で大当たりした後には100回時短となる、といった具合だ。
もう一つは通常状態別に「c時短を引いた時に有効か無効か」を設定することができる。こちらも例えば「c時短図柄1(1/20)」と「c時短図柄2(1/20)」の2種類ある場合、「通常時0」ではどちらのc時短も作動しない、「通常時1」では「c時短図柄1」のみ作動、「通常時2」では「c 時短図柄1と2」どちらも作動、といった仕様にすることで、結果として通常状態別に実質大当り確率を変えることができる。
次に、この通常時の「移行条件」はどうなっているのか。今までの「微時短」の場合では、「微時短が終了する」または「新たな微時短(c時短)を引く」しか移行できなかった。今回は「定められた特図の変動回数」での移行に加え「特定のハズレ図柄が何回表示されたか」でも移行ができるようになる。例えば「魚群が3回ハズレたら」といった条件で、有利な通常時へ移行するというようなことも可能だ。この移行条件については最大6つまで設定できるが、それぞれの通常時の状態ごとでは3つまでと制限されている。
なお、RUSH終了時やLT終了時にも当然いずれかの「通常時」になることから、この点で「LT終了後に引き戻しやすい状態となるパチスロのツラヌキのようなものが可能では?」といったウワサ話がでてきたと推測されるが、その点に関しても今回きちんと制限を加えている。詳細の解説は避けるが「1変動あたりの初回込み総量」や「フラグ倍率」「最大TS」など詳細の規定からタイプ別に制限を加えているため、単純に「LT終了後にまた簡単にLTに突入する」といったツラヌキのようなことは一定程度の制限がなされている。
今回の「新しいぱちんこ遊技機」は、あくまで通常時のゲーム性を大きく広げることでパチンコの「楽しさ」を向上させることが主眼の改革だ。コテスタや設定に合わせて「通常時フラグ」を搭載することで、まさに「パチスロに負けない」多様な通常時のゲーム性を実現できると考えられる。今回の改革で、ぱちんこ遊技機が射幸性に頼るだけでなく、こうした新しいゲーム性に加え、ハネモノなど役物系も含めて多種多様なジャンルが登場し、パチンコ人気が真に復活することを切に願う。
(以上)
■プロフィール
鈴木 政博
≪遊技産業研究所代表取締役・遊技日本発行人≫
立命館大学産業社会学部卒業後、ホール経営企業管理部、遊技コンサル会社を経て2002年に㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の開発アドバイザー、新機種情報収集及び分析を中心に活動し、TV出演・雑誌掲載など多数。2021年7月より業界誌「遊技日本」発行人を兼務。

