日本で最初のIR(カジノを含む統合型リゾート)が大阪にオープンするまで、カウントダウンというにはまだ早いが、そう遠い未来というわけでもない。客として訪問するのを楽しみにしている人、新たな取引先候補としてビジネスチャンスを模索している人、就職・転職先として志望している方など、これまで筆者もさまざまな日本版IRへ関心を寄せる方々と出会ってきた。
今回、マカオ最大手のIR企業であるサンズチャイナ社を例として取り上げ、その職場環境にスポットを当ててご紹介していきたい。
サンズチャイナ社は、米ラスベガスサンズグループの傘下で、マカオでは「外資系」ということになる。サンズチャイナ社にとってマカオで最初となるIRは、2004年にマカオ半島の新口岸地区に開業した「サンズマカオ」だ。マカオ初の本格ラスベガス型IRとして大きな注目を集め、現在に至るまで人気を維持している。その後、同社IRの開発の中心は新興埋立地のコタイ地区に移る。2007年には当時世界で二番目に大きな建築物で、マカオにおける巨大IRの先駆けとなったヴェネチアンマカオがオープン。以降、コタイ地区で2008年にプラザマカオ、2012年にサンズコタイセントラル、2016年にパリジャンマカオとオープンが相次ぎ、2025年にはサンズコタイセントラルのロンドナーマカオへのリブランドプロジェクトが完成。同社がコタイ地区で展開するIR群はエリアの中央を東西に貫くコタイストリップ沿いに建ち、それぞれが館内通路で直結している。
同社の今年(2026年)6月時点の従業員数は約2万8000人。マカオの今年第2四半期の総労働力はマカオ居住の労働人口(約38万3600人)と越境通勤者(推計約11万1500人)の計49万5100人であることから、同社の従業員数は単純計算でその約5.7%を占めていることになる。
同社は今年5月にかけて、節目を迎えた約4000人(勤続20年の約1300人、15年の約1700人、10年の約1100人)に対する永年勤続表彰を行ったとのこと。今年に入り、勤続10年超の従業員が1万5000人近くに達し、全体の半数以上達したことも明らかにしている。マカオを含む海外では、日本と比較して転職が一般化しており、より良いポジションや待遇を求めて転職を繰り返す「ジョブホッパー」と呼ばれる人も少なくないが、創業20余年で半数以上が勤続10年というデータから、定着率は高く、従業員にとって魅力的な職場環境となっているようにもみえる。
同社によれば、マカオ最大の民間雇用主として、時代に沿った革新的な人事政策を継続的に導入し、「人材の誘致・育成・定着」という三本柱で業界の人材を多角的に育成しているとのこと。外資系企業だが、管理職に占めるマカオローカルの割合は、2004年の20%から現在では約91%へと大幅に上昇したという。
同社は今年8月、職場の働きがい評価に関する世界的な権威として知られる米「Great Place To Work」が実施する調査に初参加し、大中華圏(グレーターチャイナエリア)の同業で初めてとなる「働きがいのある会社」認定を獲得したと発表。従業員に対する匿名調査「Trust Index」を通じて、信用、尊重、公平性、プライド、連帯感の5つのカテゴリーを評価するとともに、企業の職場管理体制や人材施策を総合的に審査し、働きがいのある企業を認定するもので、今回のサンズチャイナの従業員を対象に行われた調査では、回答者の96%が「働きがいのある素晴らしい職場である」と評価し、評価5項目の平均スコアは92%に達したという。他にも、同社は2025年から2年連続で職場環境づくりの世界的評価機関であるTop Employers Instituteから「トップエンプロイヤー」に認定されている。
同社では、これらの認定を獲得した要因として、社内教育機関による専門的な人材育成、育児休暇の充実や健康管理支援、ファミリーフレンドリーな職場環境づくりを進めた結果との見方を示している。
マカオのIR運営会社は6陣営あるが、顧客獲得競争のみならず、人材獲得においてもライバル関係にあり、切磋琢磨により待遇面の向上も著しいとされる。マカオでは、給与水準の高さ、福利厚生の充実度、さらには多くの研修・昇進機会といった理由から、IR運営会社は新卒学生の就職先としてはもとより、中高年の転職先としても人気となっており、多くの人材を引き寄せている。
日本にIRがオープンするにあたり、同業こそ存在しないものの、人材難の時代にあって、どのようなオファーで優秀な人材を確保し、定着させるのか、たいへん気になるところだ。

サンズチャイナの旗艦IR「ヴェネチアンマカオ」=マカオ・コタイ地区にて筆者撮影
■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/
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