【特別寄稿】パチンコ産業の歴史⑩ 国家公安委員会規則の改正と「新要件機」の登場(WEB版)/鈴木政博

また第3種に関しても、上記と同じく「16ラウンド・10カウント・賞球15個」となり、最大の3回権利物 (3回セット)であれば、6,000個以上の出玉獲得が可能となる内容だった。ここで当時の権利物の仕様を簡単に説明すると、「権利発生Vゾーンに入賞すると権利が発生」し、「権利発生中に、特定チャッカーに入賞するとアタッカーが開放する」という仕組みだった。そして3回権利物であれば「2回目、3回目は権利獲得が容易になる」というものだ。ただしこの改正で「権利発生中に特定チャッカーに16個目が入賞したら、その時点で終了すること」となった。改正前までは、例えば最高8ラウンドの権利物の場合、アタッカーが5回目を開放しているときに特定チャッカーに6個目、7個目、8個目が連続入賞したとすれば、この場合は8回目のアタッカー開放まで行ってから権利終了という仕様だった。ただしこの規則改正により、例えば最高16ラウンドの権利物の場合で、アタッカーが10回目の開放を行っているときであっても、特定チャッカーに16個目まで玉が連続入賞してしまうと、そのアタッカー開放を最後として権利消滅してしまうこととなった。「権利発生中は、なるべくスムーズに特定チャッカーに入賞させて、連続でアタッカーを開放させたい」一方、「連続で特定チャッカーに入賞しすぎると、16回開放までいかずに途中で権利消滅してしまう」というジレンマのあるゲーム性になってしまったのだ。

この第3種のジレンマについては、 改正後に発表された数機種はその様なゲーム性がストレスを感じるもので、やはりファンには不評だった。しかしこの難点は、ある画期的な発明により解消されることとなる。三洋物産製「ニューヨーク」の登場だ。この機種は特定チャッカーに「回転体」を用いて、アタッカーが閉じる瞬間まで連続入賞しないよう工夫。以降、他社も同じ構造を追従し、権利物には「回転体チャッカー」が搭載されるのが常識となる。

ニューヨーク

権利モノのジレンマを解消する画期的な発明「回転体」を搭載し大ヒットした「ニューヨーク」(三洋物産製)

さて、パチンコは以上のような改正が行われた。「実質デジパチ16ラウンド・ハネモノ15ラウンド」というのは2017年まで27年以上に渡り続いた。そして後に2018年2月1日の規則改正で再度最大10ラウンドと新たに規制強化されたのはご承知の通りだ。当時、この規則改正は世間へのインパクトも非常に強く、かなり画期的なものであった。ただし当時、さらなる問題点があった。「パチンコの連チャン機」と「パチスロ機」である。1990年の規則改正以降、この2つの問題が大きく表面化していくこととなる。

(以下、次号)

■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。

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