コロナ禍によってマカオのカジノ業界がかつてない逆境に立たされる中、現地では7社目の入札があったことに驚きの声も聞かれた。当のゲンティングループは、今回の入札に至った理由について、事業拡大、地理的基盤の多様化、マカオのカジノ業界の回復見通しを挙げている。前回マカオのカジノライセンスの入札が行われた20年前と比較して、同グループの事業は大きく拡大しており、業界でも一目置かれる存在となっている。インパクトの大きいものとしてシンガポール・セントーサ島の大型IR開発が挙げられるが、日本(横浜)のIRに参入意向を示していたことも記憶に新しい。実は、20年前からこれまでの間、さまざまなかたちでマカオへの参入機会を模索してきた経緯がある。グループ会社が手がける複合施設「トレジャーアイランドリゾートワールドホテル&ショッピングセンターマカオ」が年内にもオープン予定とされ、いよいよマカオにも「リゾートワールド」の旗が立てられる。ただし、現時点の発表内容を参照すると、この施設内にカジノは入らない模様。
マカオにおける実績では、当然ながら現行ライセンス事業者である6社に優位性があるとみられるが、これまでマカオ政府は審査において現行と新規参入社は全く横並びであることを重ねて強調してきた。実は、次期コンセッション事業者の審査基準のひとつとして、中国本土以外からの集客を図ることが含まれている。この点については、マカオ以外の東アジアにカジノ事業の拠点を持つゲンティングループにも十分なアドバンテージがあるといえよう。
なお、マカオの次期カジノライセンスは10年間となっており、今回の入札参加やリゾートワールドの名を冠した複合施設のオープンは、10年後の入札でのライセンス獲得に向けた布石とする見方もある。今回の選定結果の如何に関わらず、今後ゲンティングループの世界、そしてマカオにおける動向を注視していく必要がありそうだ。
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/