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【コラム】新型コロナ流行下におけるマカオの旅客数とカジノ売上の相関関係は?(WEB版)/勝部悠人

投稿日:2021年3月31日 更新日:

新型コロナウイルス感染症の世界的流行が長期化の様相を呈している。マカオでは流行初期にあたる昨年1月から防疫態勢が維持されており、政府が状況の変化に応じて矢継ぎ早に厳格な措置を講じたことで早い段階で封じ込めに成功。同じく状況が落ち着いた中国本土との間で昨年7月中旬から往来制限緩和も進み、中国本土旅客は直近7日以内のPCR検査陰性証明を取得するなどの条件をクリアすれば隔離検疫なしでマカオ訪問が可能となっている。往来制限緩和後もマカオでは市中感染例の確認はなく、各種防疫措置が機能しているといえる。

昨年通期のカジノ売上は前年から79.3%減の604.41億マカオパタカ(約8181億円)にとどまった。ただし、中国本土との往来制限緩和以降、マカオのカジノ売上は復調傾向にあり、対前年のマイナス幅は2021年2月まで7ヶ月連続で縮小している。

中国本土旅客に対する門戸は開かれたわけだが、旅客数の回復スピードは緩やかなものとなっている。マカオ観光当局では、その要因として観光ビザに相当する訪マカオ許可の申請手続きが以前と比較して煩雑化していることやPCR検査受検を要するといった手間暇がかかることに加え、情報の周知が進んでいないことを挙げている。また、今年1月から2月中旬にかけては中国各地で散発的にリバウンドが発生したことから、エリアを跨ぐ移動を控えるような呼びかけもなされたことで、昨年12月にかけて右肩上がりが続いた旅客数は再び下落に転じた。

実は、興味深いデータがある。今年2月の1営業日あたりの平均売上は2.61億パタカ(約35.3億円)となり、コロナの影響が生じて以降の最多を記録した。ここまでの推移を振り返ると、昨年2月(2月5~19日の休業期間を除く14日間)2.22億パタカ(約30.0億円)、3月1.70億パタカ(約23.0億円)、4月0.25億パタカ(約3.4億円)、5月0.56億パタカ(約7.6億円)、6月0.23億パタカ(約3.1億円)、7月0.43億パタカ(約5.8億円)、8月0.43億パタカ(約5.8億円)、9月0.74億パタカ(約10.0億円)、10月2.35億パタカ(約31.8億円)、11月2.25億パタカ(約30.5億円)、12月2.52億パタカ(約34.1億円)、今年1月2.59億パタカ(約35.1億円)。中国本土との往来制限緩和を機に上向きに転じて以降、一貫して右肩上がりをキープしている。旅客数は今年1、2月に下落に転じたが、カジノ売上に影響を及ぼすものではなかったといえる。

2月には、マカオのカジノにとって年間最大の書き入れ時となる春節ゴールデンウィークがあった。しかしながら、上述の中国本土における移動を控える呼びかけもあり、すでにコロナの影響で旅客数が大幅減となった前年同時期をさらに下回る結果となり、2年連続で不発に終わっている。マカオのカジノIR(統合型リゾート)運営大手であるサンズチャイナは春節ゴールデンウィーク直前の2月8日に新IR「ザ・ロンドナー・マカオ」の第1フェーズをオープンさせた。2012年にオープンしたIR「サンズコタイセントラル」の大規模リノベーション及び一部拡張によるテーマ型IRへのリブランドプロジェクトだ。書き入れ時を狙ったオープン時期とみられるが、開幕日の時点で、春節ゴールデンウィークの旅客数は期待薄であるとの見込みが広がっていた。サンズチャイナの王英偉社長は開幕式会場で囲み取材に応じた際、「量ではなく質だ」とコメントし、自信を見せた。インバウンド旅客総数に波はあっても、カジノ目当ての旅客は戻りつつあるという意味合いで、実際に1日平均売上データを見ても、その通りだった。

なお、2月下旬には中国本土におけるリバウンドも落ち着き、移動を控える呼びかけもなくなっている。さらに、3月3日からは、カジノ入場時に直近7日以内のPCR検査陰性証明の提示を必須とする措置が撤廃された。マカオ入境時に提示が必要となるものだが、従来はマカオ滞在中に有効期限を迎えた場合、再検査を受けなくてはならなかった。また、マカオ市民がカジノ入場する際にも、わざわざ検査を受ける必要が生じるため、一定のハードルとなっていたことは確かだ。マカオのカジノ売上に占める割合は中国本土旅客が圧倒的に多いが、マカオ市民も2~3%とされる。

新型コロナの流行終息時期が見通せない中ではあるが、マカオと中国本土における状況が現状と大きく変わらなければ、マカオのカジノ売上は緩やかな回復傾向を維持するものとみられる。

春節シーズンのマカオ・セナド広場

華やかなデコレーションに彩られた春節シーズンのマカオ・セナド広場。書き入れ時にも関わらず旅客の姿は少ない(資料)=2021年2月筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/

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