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【コラム】マカオのカジノに絡む犯罪事情(WEB版)/勝部悠人

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世界最大のカジノ売上を誇る都市として知られるマカオ。面積は東京の山手線の内側のほぼ半分にあたる約32㎢に過ぎないが、マカオ半島の新口岸地区とコタイ地区を中心に、およそ40軒ものカジノ施設が建ち並ぶ。マカオの人口は約68万人であるのに対し、年間インバウンド旅客数は3940万人超。カジノ売上の98%はインバウンド旅客によるものとされる。

世間一般では『カジノ都市は治安が悪そうと』思われがちだが、マカオを訪れた経験がおありの方なら、実際はそうではない、むしろ日本と比較しても安全と感じたのではないだろうか。今回、マカオのカジノに絡む犯罪事情について、数字と実例を交えてご紹介していきたい。

カジノ関連犯罪の多くはギャンブラーへの高利貸し

マカオ司法警察局発表資料によれば、昨年(2019年)通期のマカオにおける犯罪認知件数は前年から1.3%減の1万4178件、ゲーミング(カジノ)関連犯罪に限ると14.5%増の2157件だった。それでも、カジノ関連犯罪が全体に占める割合は15.2%に過ぎない。

カジノ関連犯罪のうち、実に43.8%がギャンブラーへの(種銭の)高利貸し(8.7%増の946件)、返済不能に陥った客に対する強引な取り立ての一環としての違法監禁(11.7%増の344件)となっている。件数増の理由として、警察がカジノにおける高利貸し犯罪をターゲットとした専門部隊を新たに3チーム編成し、取り締まりを強化したことが挙げられる。警察では、高利貸し、監禁事案において地元マカオの市民が加害者や被害者になったケースは極めて少なく(ほとんどのケースが中国本土から来た人同士)、発生場所についても大部分はカジノ施設周辺にとどまっており、目下のところカジノ関連犯罪がカジノ以外の場所に広がっている形跡はなく、社会治安上の脅威になっているとはいえないと総括している。

カジノ関連犯罪としてイメージしやすいのは、不正行為だろう。具体的な件数は公表されていないが、定例記者会見で報告される発生事案も少なく、カジノ関連犯罪に占める割合は小さいとみられる。とはいえ、全くないわけではない。昨年の発生例では、仲間の客と組んだディーラーが両替を装ってチップを盛る、あるいは客の勝敗にかかわらずチップを払い出す手口、ディーラーが勤務中にチップを衣服の隙間に挟むなどして隠して持ち出すといった事案があった。カジノディーラーであれば、監視部門がその一挙一動をくまなくチェックしていること、発覚した場合の重いペナルティについても十分に承知のはず。こういった場合の犯行動機としては、ギャンブル(マカオのカジノ)で抱えた借金返済のため止むを得ず、ということがほとんどだ。

マカオ政府のギャンブル規制当局(DICJ)にギャンブル依存者として登録している人(本人または親族等による申請)の職業のうち、無職に続いてディーラーとカジノサービススタッフが多いという。仕事場が非日常的な空間であり、目の前で大金が動くことに慣れてしまい、特にディーラーはゲームのルールを熟知している自分なら勝てるだろうと錯覚してしまうのだとか。マカオでは、カジノ業従事者を保護するための「カジノ従業員の業務外(余暇)時間におけるゲーミングフロア入場禁止」を規定する法律(通称「カジノ禁足令」)が昨年12月27日から施行となったばかりだ。これによって、上述のような不正行為に手を染めるケースが減少することが期待される。

昨年、内部による犯行のケースで珍しいものがあった。ゲーミングフロアで複数のゲーミングテーブルを管理するピットボス職の社員が仲間名義のカジノ会員カードのポイント記録を職務上の権限を悪用して不正に改ざん、仲間が積算ポイントを使ってホテル宿泊券と交換した上、第三者に転売することで現金化し、利益を得るというカジノ独特のコンプ制度を狙った事案だ。

このほか、昨年は数が少なかった印象だが、カジノ施設で偽造チップや偽造紙幣が使われることもまだある。偽造であることをわかった上で両替を通じて「本物」への交換を図るもの、ギャンブラーが非公式な両替を通じて偽物を掴まされてしまうものなど。チップを入手する際には、ゲーミングテーブルやキャッシャーといった公式のところを利用するに限る。カジノ施設内外で、有利なレートで両替するなどと声掛けされても、相手にしてはいけない。

なお、マカオにおいて最も多くを占める犯罪は窃盗だ。特に観光名所周辺、バスの車内、ゲーミングフロアにおけるスリや置き引きが多く報告されている。マカオを訪れる際には、くれぐれも貴重品の管理に注意をしていただきたい。

マカオのカジノ施設では万全の不正防止対策が講じられている。写真はゲーミングテーブル監視システムのイメージ(筆者撮影)

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/

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