●ぱちんこ開発者の独り言85
前回のコラムにて予告した通り、今回は利益率とスペックにおけるユーザーの印象について言及していきたい。
当たり前の話と思われるかもしれないが、利益率が低ければ稼働は伸びやすい傾向にある。しかしながら、ユーザーには必ずしも利益率の低さがダイレクトに伝わるわけではない。
4円ぱちんこ | ||||
日付 | 市場シェア | アウト | 粗利 | 利益率 |
5/20 | 28.9% | 8360 | 2430 | 18.5% |
5/13 | 28.9% | 8230 | 2220 | 17.4% |
5/6 | 28.9% | 9190 | 2680 | 18.7% |
4/29 | 28.9% | 11970 | 3740 | 20.5% |
4/22 | 28.9% | 9760 | 2730 | 18.0% |
20円パチスロ | ||||
日付 | 市場シェア | アウト | 粗利 | 利益率 |
5/20 | 26.0% | 6490 | 2920 | 15.2% |
5/13 | 26.0% | 6170 | 2690 | 14.8% |
5/6 | 25.9% | 6870 | 3080 | 15.3% |
4/29 | 26.0% | 9010 | 4560 | 17.8% |
4/22 | 26.1% | 7160 | 3220 | 15.4% |
上記のデータはTRYSEMの週間データを抽出したものであるが、見てお分かりの通り、ゴールデンウイークである4月29日週はPSともに最も稼働と利益率が高い。このように、何もしなくてもユーザーが多く集まる状況下においては、問題無いとは言わないがユーザーを集客することは可能なのである。
裏を返せば、ユーザーがダイレクトにストレス(利益率の高さや勝率の低さ)を感じる場合、離反する可能性が著しく高くなるともいえるわけである。では、そのラインをどこで線引きをしてあげればよいのであろうか。
4円ミドルスペック | ||||
日付 | 単価シェア | アウト | 粗利 | 利益率 |
5/20 | 53.2% | 8760 | 2540 | 17.1% |
5/13 | 52.9% | 8660 | 2320 | 15.9% |
5/6 | 53.0% | 9770 | 2820 | 17.2% |
4/29 | 52.8% | 12850 | 3940 | 18.7% |
4/22 | 52.6% | 10360 | 2810 | 16.2% |
4円ライトミドルスペック | ||||
日付 | 単価シェア | アウト | 粗利 | 利益率 |
5/20 | 16.0% | 8110 | 2770 | 21.4% |
5/13 | 15.9% | 7900 | 2490 | 19.7% |
5/6 | 15.9% | 8830 | 2970 | 21.2% |
4/29 | 16.0% | 11800 | 4310 | 23.5% |
4/22 | 16.1% | 9610 | 3130 | 20.6% |
4円ライトスペック | ||||
5/20 | 30.8% | 7800 | 2060 | 20.3% |
5/13 | 31.2% | 7660 | 1920 | 19.4% |
5/6 | 31.0% | 8380 | 2270 | 20.9% |
4/29 | 31.2% | 10550 | 3110 | 23.2% |
4/22 | 31.2% | 8810 | 2380 | 20.9% |
上記のデータは、4円ぱちんこにおけるスペック毎の数値であるが、ミドルスペックは粗利額がしっかりと確保できているにも関わらず、利益率が最も低く、稼働が最も高い。一方で投資金額が大きくなるというデメリットは存在するのであるが、投資金額の少ないユーザーには低玉貸しという受け皿もあることから、近年ではこのようにミドルスペック一強の流れが強い。
メーカー側としては、最も稼働が伸びる可能性が高く、台数シェアも大きいミドルスペック帯を狙っていくのは当然ともいえるわけである。また、逆張りでライトミドルスペックにて勝負をかける場合、ミドルスペックと同じ作り方では全く意味が無いのである。それは、単なる投資金額が低くなるためユーザーの財布に優しい。という概念だけで、ホール経営やユーザー満足度が完結するわけでは無いからである。
メーカーにはメーカー、ホールにはホール、ユーザーにはユーザー、それぞれ3つの視点が存在する。それをくみ取り、三方良しの精神で進めなければ成功することはあり得ない。
また、機種単位に落とし込んだ場合、ぱちんこであればスタート設定値におけるユーザー満足度が大きく違ってくる。
【花の慶次漆黒】
2019年4月TRYSEMデータ平均値
アウト:13810 粗利:3,120 S:5.1 利益率:12.7%
<スタート毎データ>
スタート | アウト | 粗利 | 利益率 | 千円S |
55 | 13960 | 2070 | 8.3% | 19.2 |
54.5 | 13240 | 2710 | 11.5% | 18.9 |
54 | 14970 | 1620 | 6.1% | 18.9 |
53.5 | 14390 | 1650 | 6.4% | 18.6 |
53 | 15400 | 1470 | 5.4% | 18.4 |
52.5 | 15580 | 3400 | 12.3% | 18.2 |
52 | 13820 | 2700 | 11.0% | 18.1 |
51.5 | 16780 | 2060 | 6.9% | 17.7 |
51 | 18120 | 4940 | 15.3% | 17.6 |
50.5 | 16070 | 2030 | 7.1% | 17.4 |
50 | 16260 | 5340 | 18.5% | 17.2 |
49.5 | 16300 | 3280 | 11.3% | 17.1 |
49 | 13510 | 4590 | 19.1% | 16.7 |
このデータは非常に面白い。(TRYSEM独自データ)
スタートが4.9(千円スタート16.7回)の場合、稼働が著しく下がり平均データを割り込む。ここからアウトは大きく下がっていく。すなわち、慶次漆黒に関してのユーザースタートは1000円で17回転以上は確保しなければ稼働を落としてもやむなしと考えられる。
またスタート毎のデータでみると、平均である5.1が大きくアウトを伸ばしている。これは、強豪店がユーザー満足度や競合ホールの状況を鑑み、平均値である5.1であれば期待値を失うことなく大きな利益を確保できるギリギリのところを狙っていったと推測できるわけである。それに、スタート52.5のデータでは千円スタートは18.2回でありながらも、アウトが伸びているため粗利額は3,400円と平均を超えたにも関わらず、利益率は平均よりも低い12.3%である。
スランプの有無、保留球数毎の変動秒数やリーチ出現率により、ユーザー満足度の高いスタート値というのは様々であり、スタートが高すぎた場合、逆に演出が発生せずにユーザーの離反が起こるという場合も存在するため、機種毎における特性の把握は必要である。一方、メーカー開発サイドも、ホールの利益確保やユーザー満足度などを分析し、最適な設計値にてリリースする必要があるのである。
※参考データ:設備投資不要の情報提供サービス TRYSEM
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。