●ぱちんこ開発者の独り言㊻
警察庁生活安全局保安課が毎年春、「風俗環境の現状と風俗関係事犯の取り締まり状況等について」という統計資料を発表する。その資料には、前年末時点における風俗営業(遊技場営業等)の許可数(営業所数)や、1店舗あたりの遊技機設置台数が記載されている。そのデータ推移を確認することで大まかな市況の流れを掴むことができる。
この統計資料によると、パチンコホールが、かつて30兆円産業と呼ばれた1995年(1996年1月当時の総務庁発表による)には、全国の遊技場店舗数は18,244店舗であったが、昨年(2017年)は10,596店舗と大幅に減少している。しかしながら、遊技機の設置台数は、1995年は4,522,475台、2017年は4,436,616台と、市場にある設置台数はほぼ変わらない数値なのである。
当然のことながら、遊技場の大型化による1店舗あたりの設置台数増が原因である。昔は商店街の一角や、住宅地に紛れて100台に満たない遊技機の設置台数にて家族経営を行っていたパチンコホールが多数あったが、今やそのような経営をしているホールはごく稀であろう。
閑話休題、この統計資料はマクロデータであり、パチンコ産業の大局的な流れを掴むのに非常に効果的なデータであるのは間違いない。そこで気になってくるところは、前回の規則改正時の大局的な流れである。ここで、前回の規則改正があった2004年から、経過措置期間の3年を経て完全に新規則機時代になった2008年までのデータを確認してみる。
<図1>
※台粗利は筆者調べ
ここでポイントとなるところは、以下の3つである。
・規則改正時(2004年)ではなく、経過措置期間後(2007年)に、遊技場の廃業率は過去最大を記録
・遊技場の収益構造変化、パチスロからぱちんこへ
・新業態(低玉貸し、各台計数機等の本格導入)への転換
再認識する話であるが、規則改正後は規則改正時のタイミングではなく、経過措置期間後に最も困難が待ち受けているといって相違ない。規則改正後も営業を継続して続けていこうという意思があるのであれば、3年間の経過措置期間内に現状の設置遊技機を全て新基準機に変更しなければならないからである(そもそもの設置台数を減らすという方法もあるが)。
この流れから、私は単純に経過措置期間が終わるまでにメーカー特需が発生し、ホール側の負担が更に大きくなることにより、ユーザー負担が過去に無いほどになる。という当たり前の話に終始するだけではなく、2020年において、パチンコ業界最大級の危機が訪れるかもしれない。という可能性について、次回コラムで具体的に言及していきたい。
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。