【コラム】続・設定付きぱちんこ導入前夜 ユーザー目線編

ぱちんこ開発者の独り言㊵
当コラムは、ぱちんこ開発者の目線から主に業界に従事する人にあてた目線でコラムを寄稿させて頂いている。前回のコラムでは設定付きぱちんこについて、開発者から見たホールの導入後における運用を見据えたお話であったのだが、今回は趣向を変えてユーザーから見た設定付きぱちんこについて言及したいと思う。

前回のコラムで書いた通り、設定付きぱちんこは今夏にもリリースされる予定であるが、SANKYOの「Pフィーバー革命機ヴァルヴレイヴ」、ニューギンの「PAミルキーバー」、この両者とも、第一弾としては非常に優秀なスペックであることは前回のコラムで言及した通りだ。

細かい条件にもよるが、両遊技機ともに、設定6の推定出玉率は120%後半の数字であり、ユーザー目線でも非常に楽しみになるスペックであるともいえる。ただし期待する声が多い一方で、冷静な声や中には、否定的な声が無いこともなく、その中には少し間違った認識のものが含まれていたため、当コラムにて一言申しておく次第である。

まず1つ目に、設定が良くてもホール側の釘調整(不正改造)により、推定出玉率はおろか、ホール側が利益を取ることがいくらでもできるという意見である。これはやってやれないことは無いが、非常に難しいであろうことは記しておく。

新基準機は当コラムでも何度か言及している通り、性能表示モニタが搭載されている。そのため、保通協の型式試験において適合を受けた遊技機の状態と著しく乖離する場合、それは不正改造として摘発を受ける対象となる。仮に、ホールサイドが釘調整にて著しくヘソ等を狭くしスタートが回らなくした場合、性能表示モニタを見れば即座に不正改造であることが判明する。また、規則改正後の遊技機は、くぎ確認シートの運用が厳格化され、遊技盤面全ての釘がくぎ確認シートの対象となり、シートサイズのA4サイズ固定、セット枚数記載など、不一致があった場合に、不正改造の決定的な証拠になる。

一部に、ホール搬入時に、くぎ確認シートから逸脱する遊技機が存在するとの噂があるが、今までの取り決めや規則改正が全て無効化になる内容であるため、納品時における確認の強化や、立ち合いの取り決め事項の徹底等、更なる厳格化が求められるであろうし、対応されるべき内容である。

メーカー側は製造過程において、品質統一化の徹底、検品の体制強化を進め、メーカー及び代行者立ち合いのもと行われる新台納品時におけるくぎ確認シートを逸脱する遊技機の場合、即時交換対応できるスキームの構築や、万が一、新台入替ができなかった場合は、金銭面における営業保証等も検討事項に入れるべきであろう。

話は逸れたが、上記事項をメーカー、ホール双方が運用を行っていくにつれて、間違いなく、不正改造事案は徐々に減っていくことは容易に想像できるため、ホール側が釘調整を行い高設定でも利益を貪るという状況は生まれなくなる。ちなみに、当該2機種において、設定6であれば、1000円スタートは10回程度で出玉率100%であることは申し伝えておく。

次に多いのは、1日に回せる通常状態の回転数がパチスロの半分程度のため、ぱちんこでは設定通りの出玉率が期待できるのか、という問題であるが、これも大きな認識違いである。パチスロの場合、天井ゲーム数やゾーンの種類、レア役など、その出玉率を形成する確率は数多く存在し、発生確率が1万分の1以下というものもざらに存在する。

一方、ぱちんこの場合、通常、高確、潜伏(小当りRUSH含む)、時短の4つの状態しか存在しない上、全て大当りを経由して状態が移行するため、どのような機械であったとしても、1000分の1程度での発生確率となるため(確率1/319の1/3でも、約1/1000)確率が収束しやすいという特性は、むしろぱちんこの方が上である。

以上のように、まだ未導入であるため、様々な憶測が広がりやすいが、それだけ設定付きぱちんこが期待されている証拠でもあるため、業界関係者はむしろ前向きに捉えたいところである。

プロフィール
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社
チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。

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