コラム:ぱちんこ開発者の独り言㉝
●ベース30問題
以前のコラムでも言及したが、よく理解していない方が多そうなので、再度注意喚起を込めて当コラムにて言及したいと思う。
2016年7月に日工組は内規を改訂し、同年8月5日の型式試験申請分より、ヘソ賞球4個以上、通常ベース30%以上を内規として改訂している。すなわち、一部型式を除き、現行ホールに設置されているぱちんこ機の殆どは「ベース30%以上」でなければならない。
しかしながら、某ホールコンの全国平均データを確認する限り、新旧の遊技機でベース30を下回る数値がこのところ頻発している。中には、全国平均でベース27というぱちんこ台も存在しており、これらは大問題となる可能性をはらんでいるため、この問題は業界における喫緊の課題ともいえる。
第一にホール側の問題である。そもそも遊技産業健全化推進機構における遊技機性能調査であるが、ご存知の通り、遊技機性能調査はその目的を「一般入賞口への入賞状況が正規遊技機の遊技性能とかけ離れていた場合」を通報対象とするわけである。
すなわち、一般入賞口に入賞するかどうかの確認は行うが、ベースが30以上あるかどうかの確認を行っていないといえる。それに胡坐をかき、一般入賞口に玉を入賞させておけば問題にならない、と認識し、違法と断定できるレベルの釘調整を未だに慣習化しているのであれば、それは由々しき問題である。
第二にメーカー側の問題である。新台において全国平均データの初日からベースが30を下回る遊技機が頻発するのは、ホール側だけではなく、メーカー側にも大きな問題があると考えて相違が無い。
そもそも、メーカーは保通協にベース30ギリギリで持ち込んでいるのであろうか。ご承知の通り、保通協へ持ち込んだ遊技機、メーカー出荷時の遊技機は同一性能を保持しなければならない。しかしながら、新台初日からベースが30を下回る遊技機が全国に多数報告されるのは、メーカー側の出荷時に何らかの問題がある、と思われても仕方がない話である。
新しい規則、内規や制度ができて終わりの話ではない。正しく運用されて初めて問題ないと言えるのだ。そこをメーカー、ホール、両者とも勘違いしているのではなかろうか。よく知られた話であるが、警察庁は全国的なホールコンの数値はいつでも手に入れることは可能であり、その数字は常に気にしているとも言われている。
また、先日話題になったように、新規則対応のぱちんこ機が既に数機種適合を受け、近日中にリリースされることが決定している。その際には、前のコラムでも言及した通り、ベースが30を下回っていれば、性能表示モニタにて「何かしらの不正改造がなされている」決定的な証拠となる。
そこで問題になって、再度「メーカーが悪い」「いや、ホールが悪い」といった罪の擦り付け合いをするのであろうか。再び社会的な大きな問題になる前に、今一度、ホール、メーカーそれぞれが、そうならないような対応策を講じる必要があると私はそう考える。
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。