【コラム】携帯連動サービスの是非/ぱちんこ開発者の独り言

コラム:ぱちんこ開発者の独り言

●携帯連動サービスの是非
遊技機のQRコード等を介して行われる携帯電話との連動サービスがひっそりと正念場を迎えている。元々は遊技機のみで完結していたゲーム性をより広げるため、2010年頃から一部のメーカーが遊技機と携帯との連動サービスの運用を始めるようになった。

上記した通り、遊技機は遊技機のみで完結するゲーム性である。遊技規則においても、情報入力はNGとなっており(パスワードは情報入力ではなく、遊技機内で完結しているから問題ない)情報出力に関しても規則でがんじがらめとなっている。

それを打破したのが、携帯連動サービスである。遊技機にてスタート回転数や大当り回数、その他リーチ出現回数等のデータログをQRコードで生成し、遊技終了後、液晶にQRコードを表示させることにより、ユーザーデータを遊技機内で完結することに成功。

メーカー専用のアプリ等を介してQRコードを読み取れば、遊技機データがアプリに記録されるという仕組みである。それに、サイトでパスワードを発行し遊技機にパスワードを入れることで(昔のファミコンのしくみ)パスワード内に含まれるデータから、遊技機に影響を与えることができる、といったように、QRコードとパスワードを介することで、疑似的にではあるが遊技機から情報入出力することが可能となったわけである。

これは非常に画期的で、遊技規則では実現不可能と思われた情報共有をすることが可能となったわけである。また、アプリやメーカー専用サイトなどは、ホールの営業時間が過ぎた後も当然のことながら遊ぶことが可能であるため、稼働促進効果を期待して多くのメーカーが携帯連動サービス機能を実装するに至ったわけである。

しかしながら、ここへきて急ブレーキがかかっている。2015年6月にニューギンのモバラッチョ、2016年10月に三洋物産のパチリンク、2017年3月に大都技研のダイトモと、相次いでサービス終了となった。メーカーとしては携帯連動サービスのコストパフォーマンスが悪いという認識をしているのである。

1つ目の問題点として、開発デバッグ等に手間がかかる、という点である。上記にある通り、遊技機内でデータが完結しなければならないため、QRコード生成やパスワード入力対応、それにアプリ等との連動などで多くのデバッグが必要となる、これが想像以上に重たい。

2つ目の問題点として、やれることが少ない、という点である。携帯連動サービス成熟期である2011年12月5日に、警察庁生活安全局保安課の方から、遊技機メーカー宛に遊技機と携帯電話を連動させたモバイルサービスの見直しを求める指導が入ったからである。その内容をかいつまんでいうと、下記の通りである。

財物等(役務及びデジタルコンテンツ含む)の提供及び、提供を受けられる抽選に参加することができる権利は、著しく射幸心をそそるおそれがある。無料かつ平等にコンテンツが提供されるのであれば問題ないが、当該遊技機をプレーした度合いによって財物等の提供を行うサービスはNGである。

すなわち、遊技の結果に応じて不平等が起こりえるものは射幸心をそそる。というように指摘されたわけである。法的な側面からみれば至極真っ当な見解であるが、それが逆に携帯連動サービスの幅を狭める結果となってしまったが故、遊技データログ以上の優位性を見出すことができず、各メーカー惰性で連動サイトを続けていった結果、今日の状況を生み出したわけである。

何度も言う通り、規則でできないことを可能としたシステムであるが、それ以上のことは殆どのメーカーで次のステップに繋げることができなかったのである。数少ない稼働促進が期待できるサービスなだけに、次なる画期的なアイディアが出てくることに期待したいところではあるが、素晴らしいアイディアも実用されてこそ生きるわけであるため、実際に運用されるであろうホール現場サイドにおかれても、今一度、携帯連動サービスに価値を見出していただきたいものである。

■プロフィール
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。

-コラム
-