コラム:ぱちんこ開発者の独り言㉚
●今さら聞けないデータ管理 <客滞率その2>
過去2回のコラムでお分かりいただいたように、客滞率という数値は、稼働分析等の指標として(単一数値としてみたとき)は不完全である。しかしながら、ユーザーの持ち玉比率という性質を持つため、特にホール責任者においての肯定的なイメージが強く、「支持率が高い機械=客滞率が高い=良台」というように認識してしまいがちであるのは、前回までもお伝えした通りであるが、そうでは無い場合があることを具体的な数値をもとに言及していく。
【ある遊技機の1日の動き(4円ぱちんこ)】
機械性能:スタート回数5.5 ベース35
・1回目大当り スタート回数950 売上金額45,000円
⇒時短抜けまでで5,000個獲得
(持ち玉遊技)
・2回目大当り スタート回数120 売上金額0円
⇒時短抜けまでで13,000個獲得 → ユーザー即止め
(人が入れ替わり立ち代わり)
・3回目大当り スタート回数300 売上金額14,500円
⇒時短抜けまで2,000個獲得 → 持ち玉で50回転したところで交換
そのまま閉店
この遊技機データは下記の通りとなる。
・(通常時)総スタート回数1,420回 ・売上金額59,500円
当該遊技機の客滞率=1,420/5.5×65/(59,500/4)×100=約112.8%となる
しかし、1回目大当りと2回目大当りは持ち玉遊技をしているということは、同一人物が通常時を1,070回転させて初当たりを2回引いている。これが、1回目に120回転で大当りをし、2回目に950回転で大当りした場合の客滞率を求めてみると、下記の通りになる。
・1回目大当り スタート回数120 売上金額6,000円 獲得玉数13,000
・2回目大当り スタート回転950 大当りまでに必要な玉数(Bサ)を求める。
2回目のBサ=(100-35)×950/5.5=11,227…
すなわち、持ち玉で完結するため売上0円
・3回目大当り スタート回数300 売上金額14,500円
⇒時短抜けまで2,000個獲得 → 持ち玉で50回転したところで交換
この場合の遊技機データは下記の通りとなる
・(通常時)総スタート回数1,420回 ・売上金額20,500円
当該遊技機の客滞率=1,420/5.5×65/(20500/4)×100=約327.5%となる
同一機械性能、同一ユーザーが同じだけ支持したとしても、客滞率は初当たりの仕方によってここまで変化する。初当たり確率がブレやすい機械(確率が深い機械)は、客滞率のブレも大きくなりやすいといったことがわかる。逆に、確率が甘い機械は持ち玉遊技になりやすいため、客滞率が高く出やすい性質を持つ。単純な話、甘デジよりも羽モノの方が持ち玉遊技になりやすく、羽モノよりも普通機の方が持ち玉遊技になりやすいと考えてもらえれば、その理由はお分かりいただけるかと思う。
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、開発だけではなくホール向け勉強会や講演会など多数開催。