●ぱちんこ開発者の独り言76
平成31年3月20日、ぱちんこ遊技機における内規の内容が変更となった。その内容とは、日工組内規の仕様におけるベースと賞球の部分が2019年5月1日申請分より廃止となる。
◆日工組内規 仕様内容詳細
<ベース>
通常時のベース 30以上
<賞球>
主に始動口 4個以上
主に電チュー 1個以上
主に他入賞口 3個以上
上記内容が5月1日より撤廃となる。すなわち、制限がなくなるという意味である。
この内規が制定されたそもそもの趣旨とは、「のめり込み」対策として著しく射幸心をそそるおそれのあるぱちんこ遊技機の開発・製造・販売を行うことがないよう、仕様内容を規定し、本内規で定めた数値の主旨を十分に理解した上で、多種多様な遊技機の開発にあたること。と、規定されている。
本内規に関しては、規則改正前に制定されたものである。すなわち、平成30年2月1日の規則改正前に日工組が自主的に取り組んだ内容であり、規則改正によって大当り1回における獲得出玉を少なくし、出玉率の上限と下限をより厳しく設定したことにより「のめり込み」を抑えようとする試みをしたため、内規の必要性が無くなったと理解すべきである。
<ぱちんこ旧基準>※平成30年2月1日より以前
1時間 出玉率下限なし 出玉率上限300%
10時間 出玉率下限50% 出玉率上限200%
<ぱちんこ新基準>※平成30年2月1日より施行
1時間 出玉率下限33% 出玉率上限220%
4時間 出玉率下限40% 出玉率上限150%
10時間 出玉率下限50% 出玉率上限133%
今一度、規則における1時間(短時間)あたりの出玉率下限について確認をすると、旧基準は出玉率の下限が無いのに対し、新基準に関しては出玉率の下限が33%と設定されている。旧基準下において、規則での制限が無かったため内規として制定し、新基準機においては保通協における型式試験において短時間出玉の下限33%以上という数値が守られてなければ適合を受けることは無い。
一部の業界人の間で、ベースや賞球数の制限がなくなることで、「ベース値が下がる」「売り上げがアップする」「今までより出玉に偏りを持たすことができる」などと誤った認識が散見されるが、短時間で出玉率33%以上を必ず確保するために、ちょいパチなどの甘い確率機は別として、ベース値を下げる行為はハイミドル等のスペックでは万が一にもあり得ない。
ただし、制限がなくなるため、多種多様な遊技機の開発は可能となる。以前、電チューの賞球数が1個以上となった際に、大一商会より加速装置がリリースされたのは記憶に新しいところである。加速装置は結果として短時間出玉率を高める装置であるため今回の主旨とは違うが、このように制限がなくなるというのは、今まで不可能であった仕様が実現可能になるということに他ならない。
本コラムをお読みいただいている皆様におかれましては、今回の内規改訂における内容と主旨に関して誤った認識を持たないようにしていただきたい。その上で、今後のぱちんこ機開発において期待していただきたいと思う。
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。