全日遊連は1月18日、都内港区の第一ホテル東京で全国理事会を開催。その席上、警察庁生活安全局保安課の山田好孝課長が行政講話を行った。
山田課長は業界の健全化を推進する上で特に必要なこととして「ぱちんこへの依存防止対策」「検定機と性能が異なる遊技機の問題」「遊技機の不正改造の絶無」「遊技機の流通における業務の健全化」「ぱちんこ営業の賞品に関する問題」「広告・宣伝等の健全化」を挙げ、それぞれについて見解を述べた。以下に、その全文を掲載する。
--講話内容--
ただいま御紹介にあずかりました警察庁保安課長の山田でございます。
皆様方には、平素から警察行政の各般にわたりまして、深い御理解と御協力を賜っているところであり、この場をお借りして御礼申し上げます。
ぱちんこ業界の皆様におかれましては、東日本大震災や熊本地震の発生以来、継続して取り組まれている復興支援活動をはじめ、昨年は、西日本での豪雨災害における被災地支援活動に取り組まれたほか、北海道胆振東部地震に伴う電力不足による節電要請につきましても、迅速かつ真摯に対応していただいたと承知しています。加えて、低炭素社会実行計画に基づく節電・省エネルギー対策等の社会貢献活動にも積極的に取り組まれていることに対しましても、改めて敬意を表する次第であります。
さて、ぱちんこは我が国の代表的な娯楽産業として親しまれておりますが依然として、ぱちんこへの依存問題のほか、遊技機の不正改造事犯、賞品買取事犯、違法な広告宣伝等が後を絶たず、健全化を阻害する要因がいまだ多く存在することも事実であります。特にぱちんこへの依存問題については、国会や報道等においても大きく取り上げられるなど、国民の高い関心を集めております。
貴連合会を始め、業界の皆様におかれましては、業界が置かれている厳しい現状について危機意識を共有していただき、適切かつ着実に取組を進めていただきたいと思います。
さて、本日はお時間をいただきましたので、業界の健全化を推進する上で特に必要であると考えていることを何点かお話をさせていただきます。
最初に、ぱちんこへの依存防止対策についてお話しします。
ぱちんこを含むギャンブル等への依存問題については、平成29年8月にギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議において、「ギャンブル等依存症対策の強化について」が決定されたこと等を経て、昨年10月には、ギャンブル等依存症対策基本法が施行され、ギャンブル等依存症対策に係る国、地方公共団体、そしてぱちんこ営業者の皆様を含む関係事業者等の責務が明らかにされたところであります。
関係閣僚会議での決定において、「出玉規制の基準等の見直し」、「営業所の管理者の業務として依存症対策を義務付け」等がぱちんこへの依存防止対策の課題として掲げられたこと等を踏まえ、昨年2月、出玉規制の強化や管理者の業務への依存防止対策の追加等を内容とする風営適正化法施行規則及び遊技機規則の改正が行われました。
管理者の業務への依存防止対策の追加については、現在、営業所で行われている各種の自主的な取組が 管理者の業務として法令上義務付けられております。
営業所の管理者の皆様にあっては、
・ リカバリーサポート・ネットワークの営業所内外における周知
・ 自己申告・家族申告プログラムの導入
・ 過度な遊技を行わないよう客に対する注意喚起の実施
・ 18歳未満の者の営業所立入禁止の徹底
等のぱちんこへの依存防止対策を各営業所において確実に実施していただくようお願いします。例えば、自己申告・家族申告プログラムについては、現在約2,200店舗が導入していると承知しておりますが、同プログラムを導入していない店舗にあっては、依存防止対策への取組姿勢が問われることになるということを認識していただきたいと思います。また、18歳未満の者の営業所への立入禁止についても、先程の「ギャンブル等依存症対策の強化について」でも「18歳未満の者と思われる者を把握した場合は年齢確認を行う」こととなっています。こうした取組が行われなかったために、18歳未満の者の立入りが認知された場合には適切な取締りを行う必要があるものと考えています。改めて、取組に遺漏のないようにお願いします。
また、関係閣僚会議の決定では、風営適正化法施行規則等の改正以外にも、業界において取り組むべき各種課題が掲げられているところであり、既に業界において積極的に取組を進めていただいていると承知しています。
たとえば、「リカバリーサポート・ネットワークの相談体制の強化及び機能拡充については、引き続き、業界を挙げての支援をお願いしたいと思います。
また、「ぱちんこ営業所における更なる依存症対策」については、ぱちんこへの依存防止対策の専門員として、営業所に「安心パチンコ・パチスロアドバイザー」を配置する取組を貴連合会が中心となって開始し、これまでに30,000人以上の方が同アドバイザーの講習を受講されたと承知しています。今後、同アドバイザーがその役割をしっかりと果たすことができるよう適切な運用を図っていただきたいと思います。
また、「本人・家族申告によるアクセス制限の仕組みの拡充・普及」については、本人の同意がある場合には家族からの申告に基づいて入店制限をする仕組みを導入するなどの拡充が行われたと承知しています。
さらに、これまで検討が進められてきた「業界の取組について評価・提言を行う第三者機関の設置」についても、先般、業界において設立を決議されたと承知しています。
このように、ぱちんこ業界において、ぱちんこへの依存防止対策に積極的に取り組んでいただいているところであります。
他方、関係閣僚会議での決定に掲げられた課題の中には、「ぱちんこへの依存問題に詳しい専門医等の紹介」等、現在もその実現に向けて検討が進められているものもあります。
こうした検討中の課題についても、業界において、できる限り早期に対策等を実現できるようお願いします。
また、家族申告によるアクセス制限の実施については、平成29年12月に開催された関係閣僚会議幹事会における申合せを踏まえ、本人の同意がない場合についても、家族からの申告を受け付けることをお願いしています。競馬等の公営競技においては、本人の同意がない場合でも家族からの申告により入場制限を行う取組を既に開始していると聞いております。こうした状況をしっかりと踏まえ、ぱちんこ業界においても速やかに実効ある取組を開始することが求められているということを認識し、実現していただくようお願いいたします。
以上、ぱちんこへの依存問題への対策についてお話ししてきましたが、先ほど申し上げたように、ギャンブル等依存症対策基本法には、関係事業者の責務が掲げられ、皆様を含む関係事業者はその事業活動を行うに当たって、ギャンブル等依存症の発症、進行及び再発の防止に配慮するよう努めなければならないとされたところです。基本法においては、政府がギャンブル等依存症対策推進基本計画を策定することとなっており、皆様の取組もこの基本計画に盛り込まれることとなります。このような状況において、皆様にあっては、これまでの取組を強化することはもとより、新たな取組についても積極的に検討していただくなど、従前にも増して依存防止対策により積極的に取り組んでいただきたいと思います。
たとえば、営業所内におけるATMの設置については、従前より、依存問題の観点から懸念が指摘されているところであり、こうした指摘に業界としてどう応えていくのか、よく検討されるべきものと考えています。いずれにせよ、ギャンブル等依存症対策基本法において、皆様を含む営業者にも明確に責務が課せられたことにより、ぱちんこへの依存問題の解決に積極的に取り組むことが社会的に求められ、注目もされていることを強く認識していただき、業界全体で真摯に対応していただきたいと思います。
加えて、基本法においては、毎年5月14日から同月20日までをギャンブル等依存症問題啓発週間と位置付けております。ぱちんこ業界の皆様が、この啓発週間においてどのような取組を行うかについても国民は注目しているところでありますので、ギャンブル等依存症問題に関する関心と理解を深めるという啓発週間の趣旨にふさわしい取組がなされるよう、検討を進めていただくようお願いいたします。
こうした取組の積み重ねが、ぱちんこへの依存問題の解決に寄与し、国民の理解を得るものとなることを期待しております。
次に、検定機と性能が異なる遊技機の問題についてお話しします。