【コラム】パチンコ業界2020年危機!?<中編>

ぱちんこ開発者の独り言㊼
まず、2020年に皆様が想定されているレベルのメーカー特需は発生しない。単純な話であるが、2007年当時と2020年には大きな違いがあるのは皆様がご承知の通りである。

大きな違いの1点目は、遊技機平均販売価格が当時と比べて10万円以上高騰しており、中には20万円に迫るものも少なくない。2点目は、マクロデータで見る全国総設置台数がそれほど変わらないが、1台あたりの利益額が相当減少していることである。

これは遊技人口の減少だけではなく、低玉貸しが全国的に導入されたことによる利益額の減少等があげられる。低玉貸しに導入されている遊技機を見ても、認定機の割合が多く、とても全ての遊技機を新基準機に入れ替えを行うのは現実的に不可能と言わざるを得ない。

機械代が高騰しており、原資となる利益額が減っている。これで前回同様に遊技機を全て入れ替えることが可能なのだろうか。2007年当時に新台入替「ベニヤ板」などと揶揄されるホールがあったが、今では笑える状況でないのは確かである。

次に問題になるのは、「消費税増税」である。現在、消費税は2019年10月より10%へ増税されることは決定しており、速やかに履行される想定である。

ホール関係者はご承知の通りであるが、ぱちんこ・パチスロの貸玉及び、貸コインには消費税がかけられており、現在、貸し玉料金が4円では約30銭、貸しコイン20円では約1円48銭の消費税を支払わなければならない。これが消費税10%になると、4円ぱちんこは6銭、20円パチスロは34銭の増税となる。当然のことながら、これらは全てホール負担となる。ざっくり計算すると、1年間あたり数百万円から数千万円ほどの負担が増えることになる。

最後のポイントは、新基準機が未だに本格的にリリースされていないことである。2004年の規則改正後は、ぱちんこは改正後3か月で1発目の新基準機がリリースされたのである(SANKYO、CR大ヤマト2)

メーカー側も現在、積極的に販売を行っている殆どは旧基準機であり、これらは基本的には経過措置期間後に設置することはできない。しかしながら、規則改正(2018年2月)から既に半年が経っており、経過措置期間は残り2年半であるが、新基準機の導入は前回の規則改正時より遅れている。進捗率で言えば17%ほど新基準機に入れ替わっているのが理想であるが、当然、そのようなホールは全国に1店舗も存在しない。

以上の通り、前回規則改正時の2004年当時よりも、2018年の今現在の方が圧倒的に状況が悪いのである。このような状況下においては、「メーカー特需」という呑気な言葉で片づけられるほど単純ではなく、むしろ、メーカー側からこの難局を乗り切るために積極的で良心的な提案が望まれるのである。それを行わなければ、最終的にメーカーが困るのは自明なのである。

■プロフィール
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。

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